MERY、盗用など規約違反で記事9割削除も「運営体制としては問題ない」

    9割削除したのに、「今まで通り」?

    DeNAの健康情報サイト「WELQ」が、他メディアの盗用や誤情報を発信し、サイトを非表示にした問題で、同社が唯一運営を続けると発表した女性向け情報サイト「MERY」でも9割を超える記事を削除したことがわかった。混乱する関係者らに取材した。

    12月2日現在、BuzzFeed NewsがWebArchiveで調べたところ、MERYの全記事の91.3%が削除されている。

    守安代表取締役社長兼CEOは11月27日にこの問題について謝罪し、関連するキュレーションサイト9つを非表示とする対応を取った。その中でただ1つ、非公開にしなかったのが「MERY」だ。

    守安社長は、TechCrunchのインタビューに答え、その理由についてこう語っている。

    「MERYに関しては組織が違うこともあり、運営ポリシー、記事の作り方も我々とは異なります。代表の中川(ペロリ代表取締役の中川綾太郎氏)にも問題がないことを確認しており、基本的には非公開措置はとらず、現状の運営方法でやっていってもらえればと思っています」

    そのMERYから次々と記事が削除されており、業界から驚きと非難の声が上がっている。

    カテゴリー別で最も記事投稿が多かった「ファッション」に関しては、11月27日時点で4万4248件あった記事が12月2日現在、8483件と80.8%が削除された。健康にも関わる「美容」に至っては、8769件から483件と94.4%が非表示になっている。

    「問題がないことを確認」「現場の運営方法で」という守安社長の発言とは食い違う、記事の9割が削除されているという事実。

    MERYへ広告を出稿している関係者にも、混乱は広がっている。

    「記事を9割消して、『今まで通り』は無理がありますよ」

    大手広告代理店デジタル担当のAさんによると、28日にDeNAからWELQへの出稿についてキャンセル、返金の手続きに関する連絡が届いた。

    「掲載済みの広告については前日までの日割りで請求」「今後掲載予定の案件はキャンセル対応する」「今後の広告販売再開のめどは立っていない」といった内容だ。

    「WELQと同じように、非公開になった(iemoなど)9つのサイトも順次協議が進むでしょう」とAさんは話す。

    だが、MERYについての連絡はなかったという。

    BuzzFeed Newsが2日の日中に取材をした段階では、DeNAの発表通り、「問題はなく、これまで通り」という認識であり、9割削除の事実を伝えると驚きをあらわにしていた。

    「今でさえ、クライアントへの事情説明もありますし、マジかよ、という感じです。メディア担当には各営業から問い合わせも来てますし、バタついています。その上、記事を9割消して、『今まで通り』は無理がありますよ」と話す。

    連絡なく、記事削除

    記事を投稿したライターも、突然の削除に驚きを隠せない。BuzzFeed Newsは、MERYに記事を執筆していた人たちにも話を聞いた。

    記事を執筆していたBさんには、事前連絡は一切なかったという。

    ファッションに関心のあったBさんは、半年前にMERYに投稿を始めた。これまで公開した記事は3〜4本。下書きを含めて10本を書いていた。

    キュレーションメディアでは、写真やテキストの無断転載がたびたび問題になる。それを知っていたBさんは、一人一人、Twitterで許可を取った上で記事に使っていた。

    「私の記事は許可を得ていたのに消されて、他の方の許可を得ていない記事は残っていました。ショックです」とBuzzFeed Newsの取材にその心境を明かす。

    クラウドソーシングで大量発注し、記事の書き方も細かくDeNAが指定していたWELQのケースとは異なり、Bさんには金銭の支払いや編集部からのテーマ指定はなかった。

    「パクリメディアの印象は払拭できない」

    カメラマンのつるたまさん(@tsuru1981)は2015年10月に自身のサイトに、女性モデルを撮影した画像を掲載。それから1〜2週間後、画像がMERYのページに無断で使用されているのに気付いた。

    「不快だけでなくショックでした。モデルさんと衣装などを考えて撮影した写真が、いともたやすくパクられていた。確認していただければOKを出すのに、そのひと手間もなしで勝手に使うのはよくない」

    訴えても勝てないと思い、削除依頼は出さなかった。

    今回のDeNAのサイト非公開の方針の中で、MERYだけ除外されていることも理解できないという。

    「MERYは大丈夫という判断であれば、MERY以上のガイドラインに他のサイトはならない。パクリメディアの印象は払拭できないと思います」

    今後については「どのメディアよりも写真の使用確認の連絡など規律を厳しくし、オリジナルコンテンツの作成に力を入れるなど、誰が見ても信頼できるメディアに成長してほしいと思います」と語った。

    「更に発展したMERYを楽しみに」

    DeNAに買収される前のMERYはどうだったのか。立ち上げ初期からMERYの雰囲気を知る、美容師の木村直人さんに話を聞いた。

    当時、木村さんがTwitterでMERYを賞賛したところ、ペロリ創業者の中川綾太郎さんから返信があり、付き合いが始まったという。

    木村さんが「まとめだけだとつまらない、オリジナル記事を書きたい」と伝えると、中川さんは「むしろそういうコンテンツの方が望ましいので是非」と言ったという。

    社風や志に共感した木村さんはその後、スタートアップを支援するつもりで、無償で記事を書いていた。DeNA買収前の雰囲気について、木村さんはBuzzFeed Newsの取材にこう話す。

    「若い子が若い子のために書いてる雰囲気は非常に好感が持てました。中川さんたちにも、並々ならぬ雰囲気は感じました。当時はライターも承認制でかなり統制のとれたメディアだったと認識してます。画像無断使用や転載っていうのが当たり前という雰囲気はなかったので、今もそうかと思っていました」

    DeNAに買収された後、木村さんは寄稿をやめ、記事も削除した。

    「彼ら(ペロリ)のために書いていたので。DeNAのためにコンテンツを残しても意味ないでしょう」

    そう取材に答えた木村さんだが、Twitterではこうエールを贈っている。

    「プロ判断が必要という感じならばMERYの部分においては”美容のプロ”としていつでも協力しますのでご連絡ください。これからまた更に発展したMERYを楽しみにしています」

    ただし、「コンプライアンスに関しては見直すべき」とも強調した。

    今後の対応はどうするのか。DeNAの広報担当は回答した。

    ーー削除された記事はどんな問題が。

    WELQへのご指摘を受け、ペロリ(MERYの運営会社)が独自の判断で体制を強化し、規約にもとづき削除している。これまで記事全体を見れていなかったが、今回は基準をより厳しく、全体をチェックした。盗用記事や公序良俗に反すると思われる記事全般を削除した。

    ーー1日にはMERYについて「他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない点はないため、非公開にしなかった」と回答している。実情とは違ったのではないか。

    MERY側で発注する際に無断盗用を推奨することはなかったが、結果として規約違反の記事が出ていた。入り口では問題はなかったが、どうしても出口で問題が出てきてしまった。

    ーー全体の9割の記事が現在削除されている。これだけの数字が出ているのに、なぜ非公開という対処をとらなかったのか

    運営体制としては問題ないという判断です。管理委員会を立ち上げており、今後非公開の9メディアだけでなく、MERYも見ていく。委員会には現場の人間だけでなく、本社の管理部門の人間も入っている。外部の人間は入っていないが、それも十分検討の余地がある。

    ーー管理委員会でMERYが改めて非公開となる可能性は

    これから話していくため、何ともいえない。

    ーー非公開や削除となった記事の投稿者に連絡は?

    MERYは非公開となった記事の投稿者に連絡する仕様にはなっていないが、説明する方向で検討している。

    ーーMERYのスポンサーには、記事が大量に削除されたことは伝えているのか

    まさに現在連絡しているところ。代理店やクライアントからは昨日から問い合わせがあり、取引先には現在随時お伝えしている。