7月28日、北極海にあるノルウェー領スヴァールバル諸島にて、ドイツのクルーズ船員がホッキョクグマに襲われ、同行していた他のクルーがクマを射殺。科学者やセレブなど多くの人から批判が殺到している。
28日朝、独ハパックロイド・クルーズのクルー12名が、フィップス島に上陸。クルーズ客のために安全を確認しようとしていた際に、クマに襲われた。
クルーズ船の従業員は、陸上の拠点を設営し、一帯にホッキョクグマがいないことを確認している最中だった。上陸したクルーには、ホッキョクグマ警備員4名が同行していた。法律により定められている訓練を受けて武装した専門家だ。
「見落としていたホッキョクグマに、護衛のひとりが不意に襲われ、自分自身で対処できませんでした」とクルーズ会社は話している。
残りの護衛が、怒鳴ったり、飛び跳ねたり、警告のために銃を撃ったりして、クマを追い払おうとした、とスヴァールバル諸島の警視オーレ・ヤコブ・マルメさんが、声明の中で述べている。護衛ふたりが発砲し、ホッキョクグマを射殺した。
射殺は従業員の命を守るために必要だった、とハパックロイド・クルーズは主張している。
「今回のことに関しましては、とても残念です」と同社は話している。「環境保全特別地区に入る際に当社に課されている義務は重々承知しており、自然と野生動物につきましても、十分に配慮しております」
ホッキョクグマがいるときに、乗客やクルーを故意に上陸させることは決してない、と同社は話す。クマの観察は、安全な距離を置いて船上から行っている、ともつけ加えた。
「動物が接近してきたら直ちに、上陸許可は停止している」とも話している。
負傷した42歳ドイツ人の従業員は、島から空路で病院へと搬送された。容体は安定しており、応答はある、とのことだ。
捜査の一環として、クマの亡骸は検証される予定だ。ノルウェー当局は、報告書が出てくるのは、しばらくかかる可能性がある、と話している。
「とても衰弱しているクマが、必死に食べものを探そうとしていたようです」とアルバータ大学でホッキョクグマを研究しているアンドリュー・デロシェール教授はBuzzFeed Newsに話す。「クマにしてみたら、生死の問題でした」
写真のクマの腰角(ヒップボーン)が出ていることを、同教授は指摘する。本来であれば夏の間、身体は脂肪の蓄えで覆われ、最高の状態である必要がある。
生来、ホッキョクグマの行動は予測不能で、健康状態が悪いとなおさら予測できない、と教授はつけ加える。
「スヴァールバル諸島のクマは、1973年以来、狩りをされていません。ですから、人間を殆ど恐れません」と教授は話す。「だからと言って、クマが人を狩るわけではありません。ですが、健康状態が悪い場合、死にものぐるいのクマは、窮余の策を取るのです」
それに加えて、気候の変化で海氷の水準は、史上最低を記録している、と教授は話す。生息地が溶けるにしたがって、痩せ細るクマが増え、陸で過ごす時間が長くなる、と教授は話している。
これにより、必死のクマが、人と遭遇する範囲に入ってくる可能性が出てくる。
「全体的には、ホッキョクグマの研究者や管理者は、北極圏の至るところで、人とクマが遭遇する回数が増えてきていることを、懸念しています」と教授は話す。「ホッキョクグマが次第に長期にわたり陸へと追いやられるようになると、今回のようなことはさらに増えると考えられます」
スヴァールバル諸島には、2,600名の人口に対して、ホッキョクグマが3,000頭住んでいると推測されている。通常、夏の間、フィップス島で過ごすクマを邪魔をすることを、地元の法律では禁止している。
28日の射殺の後、クマと従業員を接触させたクルーズ会社を、科学者やセレブなど多くの人がSNS上で批判している。
「この度、このようなことが起きてしまい、誠に遺憾です」とハパックロイド・クルーズは話しており、現在、当局の捜査に協力していると加えた。
この記事は英語から翻訳されました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan