性的虐待疑惑を隠蔽するカトリック教会:イリノイ州で500件以上

    イリノイ州検事総長によれば、カトリック教会は、被害者からの告発を全く調査しないか、あるいは調査してもすぐに打ち切るかのどちらかであり、世間に公表されることはないという。

    イリノイ州検事総長が発表した最新の報告書によれば、同州では、カトリック教会の司祭500人以上が性的虐待で告発されたが、申し立ては事実上無視され、司祭の名前は公表されていないという。

    イリノイ州では現在、リサ・マディガン検事総長による調査が進められており、12月19日には予備的な調査結果が発表された。

    調査のきっかけとなったのは、ペンシルベニア州大陪審が8月、州内のカトリック教会で起きている性的虐待に関する報告書を公表したことだ。マディガン検事総長は、調査はまだ始まったばかりだと断わった上で、イリノイ州の司祭たちが「忌まわしい虐待行為」に関与していることは明らかであり、教区は被害者を見捨てようとしていると述べている。

    報告書にはこう記されている。

    「(検事総長)事務局は情報を精査した結果、イリノイ州の教区には聖職者の性的虐待事件を自ら解決する意思はないという結論に達した」

    6つの教区のうち4つが12月19日夕方までに反応し、マディガン検事総長の調査に協力する意思があると表明。性的虐待に関する教会の方針や方策が長年の間にどのように変化してきたかを説明した。

    シカゴ教区の大司教であるブレイス・キューピック枢機卿は声明の中で、「聖職者による性的虐待という惨劇に対処しなかったことについて、教会全体の深い遺憾の意を、改めて表明します」と述べている。

    「被害者の勇気のおかげで、教会の歴史の暗い一章に浄化の光を当てることができました」

    キューピック枢機卿は同時に、現職の聖職者や、教会に雇用されている人物が、性的虐待スキャンダルとは無関係であることを強調している。

    「癒やしと保護、説明責任の文化を絶えず強化していく必要があることは間違いありません。ほとんどの虐待は数十年前の出来事ですが、多くの被害者が今も、想像を絶する痛みを抱えながら生きています」

    カトリック教会は以前、「確実な」性的虐待で告発されたイリノイ州の聖職者140人の名前を挙げていた。検事総長事務局が調査を開始した後、教会はこのリストに45人を追加した。

    しかし、検事総長事務局が教会の記録を調べた結果、690人の聖職者が性的虐待で告発されていたことが判明した。当初公表された人数の4倍以上だ。検事総長の報告書によれば、教会は、告発を無視するか、あるいは、根拠がないと一蹴するかのどちらかだったという。

    報告書にはこう記されている。

    「聖職者のファイルを調べているうちに、1つのパターンが見えてきた。被害者が1人しかいない場合には、被害者の申し立てを信じる理由や調査を進める理由があったとしても、教区はしばしば告発を“立証”しようとしなかった」「また、教区はしばしば、被害者の私生活に目を向けることで、被害者の言い分を信用しない理由を探していた」

    「司祭による虐待の被害者ネットワーク(SNAP)」に言わせれば、今回の調査結果はよくある話だ。

    SNAPは声明の中で、「教会への告発はめったに調査されないだけでなく、教会は告発を退ける理由を積極的に探します」と述べている。

    SNAPは各州の当局に対し、性的虐待の申し立てと、カトリック教会のリーダーによる隠蔽について調査するよう働きかけている。

    SNAPは、「この報告書はイリノイ州で起きた性的虐待の隠蔽について、とても恐ろしい詳細を語っていますが、全米の教区で同じような隠蔽工作が行われていると私たちは確信しています」と述べている。

    「私たちが願っているのは、すべての州がペンシルベニア州、イリノイ州の先例にならい、独自のやり方で聖職者の性犯罪を調査することです。私たちはさらに、米司法省がこれらの犯罪を真剣に調査することも願っています」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan