心温まる漫画が話題です。
漫画家のおくらさん(@okura_yp)がTwitterに作品を投稿したところ、3万回以上リツイートされ、13万を超える「いいね」が集まりました。
リプライ欄で「感動しました!」「泣けてしまった、素敵なお話」と多くのコメントが寄せられています。
漫画は、ケーキ屋さんでアルバイトをする青年と来店する中年の男性との交流を描いたものです。
読み終わると、思わず心がぐっと温かくなって、無性にケーキが食べたくなる、そんなお話です。
「ケーキ屋バイトの青年とお客の中年おじさんがささやかに交流する漫画」

とあるケーキ屋さんでバイトをしている大学生の稲田くん。
気怠げな稲田くんは「ありあとっしたー」「さーせん」との言葉遣いで話し、注意を受けます。



その後、ケーキ屋さんに1人の中年の男性が訪れると、「フルーツタルト」を購入して立ち去ります。
「そのおっさんは毎週金曜日 閉店間際に 決まってフルーツタルトを一個だけ つまんなそうに買っていく」
稲田くんは、表情を変えずにケーキを購入する男性のことが気になるように。


ある日、稲田くんが「このケーキ好きなんっすね」と声をかけると、男性は一瞬驚いた顔をして「おれは別に」とぶっきらぼうに答えました。


毎週金曜日、つまらない顔をして作業のようにフルーツタルトを購入して帰っていく男性の背中を見ながら、稲田くんは心の中で呟きます。
「なんか カッコわりー」「こんな大人にはなりたくねーな」


再び金曜日がやってきました。
フルーツタルトの残りは1つだけ。稲田くんは、やってきた男性にフルーツタルトが売り切れだと伝えて、「プクク」と笑います。



フルーツタルトを買えなかったその日から、男性はぱったりとお店に来なくなりました。



罪悪感を抱えながら過ごしていた稲田くんはある日、街中で男性を見かけ、声をかけます。
フルーツタルトについて尋ねると
「あれは寝たきりの母に買っていってたんだ」
「その母が亡くなったから もういいんだよ」
と男性は微笑みます。



自分が最後のケーキを購入してしまったことを謝る稲田くん。
すると、男性はお母さんが何も食べられなくなっている状態であったこと、それでもなにかできればとケーキを買っていたことを明かしました。
「おれがケーキを買っていたのは母のためじゃなくて 自分は母のためになにかしていると思いたかったからだ」

肩を落とす男性に稲田くんは「無意味じゃない」と言います。
「いいじゃないっすか 自分のためでも」
「がんばった自分へのゴホービとかそういうの全然フツーにあるっすから」




BuzzFeedは、漫画家のおくらさん(@okura_yp)にお話を聞きました。
元々この作品は、別の雑誌に掲載していた読み切り漫画だったのだといいます。
「せっかく描いたものがもう誰にも読まれる機会がないのは寂しいなと思ったので、雑誌の編集部に許可をいただいて、個人のアカウントで投稿しました」
稲田青年の言葉に込めた想いを聞きました。
「自分のしたことに対して、無意味だと切り捨てるよりもなにか意味があったと思えたなら、改めて向き合えたり救われたりすることがあるんじゃないかと思いました」
「ケーキを売る、ケーキを買う、ただそれだけのことだけど、そこにはちゃんと意味があったんだと、青年にもおじさんにも気付いてもらいたいという思いで描きました」
ツイートに対する反響には驚いているといいます。
「たくさんの方に読んでもらえたのは嬉しい反面、緊張もしています」
「漫画を読んで、どんなことでも、なにか一つでも、思うことがあったり考えたりしてもらえたなら、この漫画を描いた意味があったのかなと思います。
これからも丁寧に作品を作ることを心掛けていきたいです」
ちなみにおくらさんの好きなケーキはなんですか?
「いちごのショートケーキです」