カリフォルニア州がスタバやウォールマートなどのコーヒーに「発がんリスク」表示を義務付ける謎

    スターバックスをはじめとする大手コーヒーショップは今後、カリフォルニア州でコーヒーを販売する際、発がん性成分が含まれているという警告を表示しなければならない。そう、何もかもが「毒」なのだ。

    正気の沙汰とは思えない驚きのニュースでいっぱいの1週間もそろそろ終わりと思いきや、衝撃的ニュースがまたひとつ。これからは、スターバックスなどコーヒーが飲める店に行くたびに、「長寿の薬」とされているコーヒーを飲むことで実は寿命が縮まる可能性があることを思い出すことになりそうだ。

    ロザンゼルス郡上級裁判所のエリフ・バール裁判官は2018年3月28日(現地時間)、スターバックスをはじめとするコーヒーショップならびにコーヒー販売業者はすべて、商品に発がんリスクの警告を表示しなければならないとの判断を下した。こうした企業はこれまで、発がん性物質が含まれていることを明確に示してこなかったという。

    警告とはつまり、至る所で目にする、おなじみの「この製品には、カリフォルニア州において、癌や先天異常、またはその他の生殖障害を引き起こす恐れがあるとされる化学物質が含まれています」といった文章のことだ。

    なんで?どうして?その理由を説明しよう。

    カリフォルニア州で毒物に関する研究と教育を行う非営利団体「Council for Education and Research on Toxics」は2010年、スターバックスや、ピーツ・コーヒー&ティー、シアトル・コーヒーなどの企業を相手取って訴訟を起こした。理由はとてもシンプル。コーヒーを焙煎する過程で発生する発がん性物質について客に警告しなければならないと定められた州法に、これらの企業が違反している可能性があるためだ。

    カリフォルニア州では、コーヒーの焙煎過程で生じる化学物質のアクリルアミドが、癌を引き起こす、または「生殖毒性」を生じさせる物質としてリストアップされている。この発がん性物質はまた、フライドポテトやポテトチップス、パンにも含まれている。なんとことだ、全部好きだよ!

    (参考までに、アロエベラ、ココナッツオイル、「中華風の塩漬け魚」もまた、発がん性物質リストに含まれている)

    では、アクリルアミドとは具体的にどんな物質なのだろうか。

    アメリカがん協会の説明によれば、アクリルアミドは、「主に紙や塗料、プラスチックの製造過程、ならびに飲料水や排水の処理過程で使われる化学物質」だという。アクリルアミドはさらに、砂糖と、食品に元来含まれているアミノ酸からも生成される。

    しかし、アクリルアミドと人間のがんとを関連づける証拠は完璧とは言えない。

    アメリカがん協会は、過去の研究をもとに、「アクリルアミドが人間の発がんリスクに影響を与えるかどうかは明らかではない」と結論づけている。また、アメリカ国立衛生研究所が発表した2014年の報告は、「調理された食品から摂取されたアクリルアミドの発がん性は不明」というもので、今後の研究が求められるとしている。

    では、このアクリルアミド騒動はいったいなぜ始まったのだろう?

    スウェーデン国立食品局は2002年に初めて、アクリルアミドが食品に含まれていることを発見した。その後、一定の動物実験を経て、国際がん研究機関(IARC)はアクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類した。

    ただし、研究者の指摘によると、そうした動物実験は、げっ歯類に「人間が食品から摂取する可能性のある1000倍から1万倍の量のアクリルアミド」を与えたところ、発がんリスクが上昇したというものだという。

    米国の保健福祉省が中心となって研究を行なっている「米国国家毒性プログラム」による発がん性物質に関する報告書では、アクリルアミドは調理によって発生するため、「人間にとって発がん性を持つと考えられる根拠が存在する」とされている。

    何だって?

    とはいえ、アクリルアミドはもう数十年も前から、カリフォルニア州では「ヤバい」物質の一つにリストアップされている。そのため、訴えを起こしたNPOは、大手コーヒーショップはその点を商品に記載していないことで、カリフォルニア州が1986年に施行した州法「安全飲料水および有害物質施行法(通称:プロポジション65)」に違反していると主張する。プロポジション65は、従業員10人以上のすべての企業に対し、リストに掲載されている物質が含まれている場合は事前に明確に警告することを義務づけている。

    2010年の訴状は、「被告側は、販売しているコーヒーに、州法で発がん性があると分類されている物質が含まれていることを、カリフォルニア州民ならびに原告に隠していた」と述べたうえで、スターバックスやピーツ・コーヒー&ティーなどのコーヒー販売店は、2002年以降にアクリルアミドに暴露させた可能性のある客全員に多額の罰金(1人につき最大2500ドル)を支払うべきだと主張している。カリフォルニア州の人口が約4000万人であることを考えると、とんでもない金額だ。

    当然ながら、スターバックスやコーヒービーン&ティーリーフ、ターゲット、ウォルマート、トレーダー・ジョーズなど、コーヒーを提供する多くのチェーン店はこの訴えに異議を唱えたため、長い法廷闘争に発展した。

    しかし、庶民派のヤムヤム・ドーナッツやセブンイレブンといった少なくとも13社は和解を選択した。裁判文書によると、セブンイレブンは90万ドルの和解金支払いに合意したほか、ヤムヤム・ドーナッツもやむなく25万ドルの支払いに応じた。

    最終的に裁判所は、大手コーヒーショップや販売業者は、コーヒーが人間に健康被害を引き起こさないことも、逆に、実際に「何らかの健康効果」をもたらすことも、証明できないという結論づけた。

    判決文にはこう記されている。「被告側は、コーヒーに含まれるアクリルアミドのリスクレベルについての異なる結論を、人々の健康に関する確かな分析によって証明するという責任を果たせなかった」

    ということで、カリフォルニア州ではこれから、コーヒーを買うたびに、死の危険が差し迫っているという注意喚起がなされるようになる。

    BuzzFeed Newsがスターバックスにコメントを求めたところ、全米コーヒー協会に問い合わせるよう言われた。同協会は上訴を検討中だという。

    同協会は声明で、「コーヒーに発がん性物質が含まれているという警告を表示することで、誤解を招く恐れがある」と述べている。「アメリカ政府が公開している栄養ガイドラインには、コーヒーは健康的な食生活の一部になり得ると記されている。世界保健機関(WHO)は、コーヒーはがんを引き起こさないと述べている。また一連の研究からは、コーヒーを摂取することで、長寿といった健康効果が得られるとの証拠が明らかになっている。コーヒーを飲む人は長生きするのだ」

    一方、ソーシャルメディア上でのリアクションは「どうでもいい」という声ばかり。

    News: “Starbucks may cause cancer. Judge rules that Starbucks must put cancer warning label on all cups.” Me: “Wow that’s crazy” https://t.co/6dIPR48Tgi

    ニュース:スターバックスを飲むとがんになる可能性あり。すべてのカップに発がん警告のラベルを貼らなくてはならないとの判決がスターバックスに下った。

    私:そんなのクレイジーだわ。

    中には、今回の事態を受け入れた人もいる。

    @Jessicalarsonn Don't drink the coffee. The Starbucks coffee has been linked to cancer.

    そのコーヒーは飲むな。スタバのコーヒーには発がん性があるぞ。

    When you see the breaking news that Starbucks now has to include a cancer warning on coffee sold in California

    カリフォルニア州のスターバックスでは今後、コーヒーに発がんリスクの警告を表示しなければならない。そのニュースを聞いた瞬間の反応。

    一方、「誰だっていつかは死ぬんだからどうでもいい」というタイプの人間は、どうせ何を食べたって毒だぞと呼びかけている。

    people tweeting about starbucks cups have apparently never been to California where there is a cancer warning on literally everything

    スタバのカップのことをツイートしている人たちは、文字通りすべてのものに発がんリスク警告が表示されているカリフォルニアに行ったことがないらしい。

    「何だってがんになるのさ」

    @ABCWorldNews coffee is cancer? No shit everything is cancer.

    @ABCWorldNews コーヒーに発がん性があるって? 何だってがんになるのさ。



    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan