「ブタよりタチが悪い」家族? はじまりはネット上にアップされた1つの動画だった

    当人たちは、ホビットが見たかっただけだとコメントしている

    あるイギリス人家族が、なぜか、ニュージーランド社会最大の敵になっている。一家はニュージーランドの北島を訪れ、ほぼすぐにメディアに取り上げられることとなった。それも、良い話としてではない。

    ニュージーランドでは、ほぼすべての主要ニュースメディアが、この一家が、ビーチにゴミを置き去りにし、裁判所に出廷し、フライトをめちゃくちゃにし、食べ物や飲み物を盗み、地元の人たちに嫌がらせをし、オークランド市長に「ブタども」と呼ばれたようだと報じている。

    オークランド市長のフィル・ゴフは先週、地元のラジオ局bFMに出演し、この一家を「ろくでなし」「クズ」「寄生虫」などと呼んだという。

    市長はその後、ニュージーランド・ヘラルド紙に対して、この一家は「ブタよりタチが悪い」とも語っている。

    市長のこの発言に対し、一家は告訴する構えをみせている。

    この一家に非難が向けられている一連の事件が、本当に彼らによるものなのか、それを検証する方法はほとんどない。わかっているのは、ニュージーランドを旅行していたイギリス人グループが、1月15日のバーガーキングでの事件を受けて、警察から国外退去強制令書を出されたということだ。

    入管当局からの国外退去強制令書執行を受けた場合は、28日以内に異議を申し立てるか、出国しなければならない。

    バーガーキングでの事件が起こったのは、この一家が取ったとされる目をひそめるような行動を、ニュージーランドメディアが何日も報じ続けた末のことだった。

    事の発端は、この家族の一員である男性とその息子だったのではないかとされている

    最近多いパターンだが、そもそもの始まりは、ネット上で広まった動画だった。ビーチにゴミを残していった観光客らを、あるニュージーランド人女性が注意したところ、「Bunnings」というホームセンターの帽子をかぶった男の子が彼女に近づいて、「頭かち割るぞ!」と叫んだのだ。

    問題の男の子と、一家が残していったとされるゴミの動画をアップロードした女性、クリスタ・カーナウは、男性のうち一人が彼女を車ではねようとしたうえ、スマホを奪おうともした、と述べている。

    「この家族が荷物をまとめて、ゴミを全部この公共の公園に置き去りにしていったの。12人くらいの集団で、大人はみんなコロナやバンダバーグ(ジンジャービア)を飲んでいて、赤ちゃんが2人と、小さな男の子が1人。大人はみんな泥酔してるみたいだった」彼女のFacebookへの投稿にはそう書かれている。

    「私たちが近寄って、ゴミを置いて帰らないでもらえますかと頼んだら、こんな反応が返ってきた。気に入らないなら自分で片付けろ、ゴミ処理は地方自治体の仕事だろ、ですって」

    「もう一度、ニュージーランドを訪れている間は、この国を尊重してゴミを片付けてもらえますか、と頼んだら、激しく言い返してきて、おばあさんや子どもにまで『お前の頭をパンチしてやりたい』って言われた」

    動画は80万回以上視聴されており、この旅行中の一家を追っての騒動はそこから1週間続いた

    そこで判明したのが、この一家に遭遇したのはクリスタだけではなかった、ということだ。

    ノースコートにある2軒のレストラン「ミスター・インディア」と「ザ・バックヤード・バー&レストラン」では、スタッフが、この一家を告発した。数百ドル相当の食事を注文したうえ、髪の毛が入っていたと文句をつけて支払いを拒否したというのだ。

    ザ・バックヤード・バー&レストランのマネージャー、ロジャー・ヴァン・ケンペンは、この一家が1月3日に食事を注文し、アリを食べ物に入れて、支払いを拒否したと訴えている。

    また、あるコーヒーショップも、警察に訴えた。あるグループが、注文したチョコレートケーキの支払いを拒否したというのだ。ニュージーランドのメディアは、このケーキ詐欺師が、他の事件にも関与している例の一家のメンバーにちがいないと即座に決めてかかった。

    するとすぐに他のニュージーランドの人たちも、遡って昨年の12月に自分の身に起こったという事件の話をシェアし始めた。そこから騒ぎは少々こじれていく。

    この一家の一員である女性、ティナ・マリア・キャッシュが、ガソリンスタンドでエナジードリンクとロープ、サングラスを盗んだとして、ハミルトンの裁判所に出廷を求められたのだ。裁判所では、12月31日と1月4日にそれぞれ起こった事件、計2件の容疑について審理が行われた。キャッシュは2件の窃盗事件について罪を認め、55ドルの罰金を支払うよう命じられた。

    裁判所の外では、男の子が1人、待ち構えていたメディアに対して中指を立て、叫んだ様子が目撃されている。

    この時の判決では、キャッシュとその家族は12月29日にニュージーランドに入国したとされている。

    そうなると、彼らに疑いがかけられていたもうひとつの事件である、1月11日にオークランド行きのキャセイパシフィック便に搭乗していたあるグループが、他の乗客に嫌がらせをしたり、汚れた衣類を手荷物に入れて機内に持ち込んだりしていたという件は、ほぼ間違いなく彼らの仕業ではないことになる。

    他にも、この一家が12月7日にガソリンスタンドからクリスマスツリーを盗んだのではないかという告発もあった。だがこれは、彼らがニュージーランドに入国したとされる日付の数週間前の話だ。

    この一家の中心人物とされる男性、自称ジョン・ジョンソンは、ニュージーランド・ヘラルド紙の取材に対し、事件について異なる話を語っている。また、自分の祖父はイギリスで10番目に裕福な男性であり、自分たちこそ、この騒動の真の犠牲者だと主張する。

    ジョンソンは、自分はただの「イギリスから休暇にやって来た食いしん坊」であり、予定より早く帰る羽目になったのは「家族がニュージーランドの人たちに酷い扱いを受けたから」だと述べている。

    取材に対して彼は「自分たちはホビットを見に来た」と答えている。「生まれた時からずっとホビットシリーズが好きで、もともとはそういう計画だったのに、それが全部台無しになった。この国では歓迎されていないと感じる。自分が宇宙からの侵略者のように思わされるのは不愉快だ。自分は決してアイルランド人ではない」

    「(息子は)自分を主張しただけだし、自分の意見を主張する権利は誰にでもある。こんなことになるなんて、まったく馬鹿げている……俺たちは、まともな一族なんだ」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:半井明里/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan