日本でも開催されている音楽フェス「ウルトラ」、ドラッグのテストを州政府に求める

    ウルトラ・ミュージック・フェスティバルはニューサウスウェールズ州に対して、ドラッグの過剰摂取による事故を低減するための対策の実施を求めている。

    世界最大のダンスミュージックの祭典「ウルトラ・ミュージック・フェスティバル」(UMF)はニューサウスウェールズ州政府に対して、2月にシドニーで開催される「Ultra Australia」で「ピル・テスティング」をテスト実施することを求めている。

    この要求は、「ニューサウスウェールズ州ユーザーズ・アンド・エイズ・アソシエーション」(NUAA)および「ピル・テスティング・オーストラリア」と提携してのことだ。

    ピル・テスティングとは、ドラッグの成分を分析するもので、ドラッグに含まれる危険な物質を使用者が避けるために行われるハーム・リダクションサービスのひとつだ。サンプルの検査が完了すると、提出者に検査結果が伝えられ、摂取がもたらすリスクについての説明が行われる。1990年代から、欧米をはじめとする20カ国で実施されている。

    2月24日、「Ultra Australia」の会場となるシドニーのパラマタ・パークには、2万人以上が集まると予想されている。

    この話をNUAAに持ちかけたのは、UMFのほうからだった。NUAAは以前から、「Dancewize」というプログラムを介してハーム・リダクションサービスを行っており、さまざまな音楽フェスの会場で、違法薬物を摂取した(あるいは、しようとしている)人たちのケアを行ってきた。

    NUAAのメアリー・エレン・ハロッドCEOは、「州政府に対する今回の要求を通して、『ピル・テスティングは実施できる』ということ、失うものはほとんどないということを伝えたいのです」と話す。「NUAAは、ハーム・リダクションやクラウドケアなどの取り組みを、現場で実験的に行っています」

    ハロッドCEOによれば、「Ultra Australia」では、2018年にキャンベラで開催された音楽フェス「Groovin' the Moo」で実施されたテストを模したモデルが導入される見込みだという。

    1月15日は、ピル・テスティングのニュースが紙面をにぎわせた一日だった。『ガーディアン』紙が行った世論調査の結果、オーストラリア国民の63%が、ピル・テスティングの実施を支持していることがわかった。

    さらに同日午後には、ニューサウスウェールズ州の検死裁判所が、2018年後半に開催された音楽フェスで起きた死亡事故5件の正式な調査を行うと発表した。

    つい先日も、死亡事故があった。2019年1月12日にニューサウスウェールズ州で開催された「FOMOフェスティバル」では、同州セントラルコースト在住のティーンエイジャー、アレクサンドラ・ロス=キングさんが亡くなり、ドラッグの過剰摂取が彼女に死をもたらした可能性が疑われている。

    その後、アレクサンドラさんの遺族がメディアに登場し、ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン首相に対して、ピル・テスティング実施の検討を訴えた。

    アレクサンドラさんの祖母デニス・ドイグさんは10 Newsで、「あの子の死が無駄になってほしくありません。あの子の死をきっかけに、ピル・テスティングが行われるようになることを望みます」と語った。

    「首相、お願いです。ピル・テスティングを実施できないでしょうか? とても小さなことです。難しいことではありません。やってみようではありませんか」

    BuzzFeed Newsはベレジクリアン首相に、今回のテスト実施の可能性についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。

    だが、同首相は以前から、ピル・テスティングに反対する立場を表明している。誤った安心感を市民に与えるおそれがあるというのがその理由だ。

    AAP

    ベレジクリアン首相は1月14日、「専門家の誰かひとりがピル・テスティングの検討を我々に助言すると、ほかの数人から、『その必要はない』という声があがるというのが現状です。我々は、ネットワーク全体から寄せられる、さまざまなアドバイスに信頼を置いています」と述べた。

    一方、NUAAのハロッドCEOは、ピル・テスティングのしくみに対する誤解が蔓延しているように思えると話す。

    「人々に『ドラッグは安全だ』と伝えることになるとか、ドラッグの使用を許可することになるとかといった声がありますが……しかし実際には、ピル・テスティングのテストの結果、違法薬物の摂取率は下がっているのです」

    ハロッドCEOは、アメリカが1930年代に行ったアルコール禁止の取り組みを引き合いに出しながら、規制はその時代もうまくいかなかったし、現代でもうまくいっていないと述べた。

    「『Just Say No』(1980年代にアメリカで始まったドラッグ撲滅キャンペーン)の本場であるアメリカでは、銃よりも、ドラッグの過剰摂取で命を落とす人々のほうが多かったのです」と、ハロッドCEOは語る。「総合的に見て、政策が機能していません。そしてそれは、社会における最も脆弱な人たちに大きな影響を与えています」

    「わたしは仕事がら、ドラッグやアルコールを専門とする臨床医が集まる会合に頻繁に出席しています。こうした会合には、これら分野の専門家が何人も出席していますが、ハーム・リダクションを軽視する人物にあったことは一度もありません」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

    Brad Esposito is a news reporter for BuzzFeed and is based in Sydney, Australia.

    Contact Brad Esposito at bradley.esposito@buzzfeed.com.

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