我が子に「イタズラ」し、心の傷を負わせたユーチューバーの両親に判決

    心理学鑑定から、子どもたちは「心の傷」を負っていることがわかった。その原因は、両親が「イタズラ」と称して撮影した動画だった。

    9月11日、YouTubeの「イタズラ」チャンネル「DaddyOFive」を運営するメアリーランド州在住の夫婦が、子どもに対するネグレクトの罪で保護観察5年の判決を言い渡された。

    マイケル・マーティンとヘザー・マーティンが投稿していた「子どもにイタズラ」動画は、多くの視聴者からの激しい怒りと児童虐待疑惑を呼び、夫婦はそれぞれ2件のネグレクトで起訴されていた。

    動画のなかで夫婦は、我が子に対して泣くまで怒鳴りつけたり、ひわいな言葉を浴びせたり、さらには強く押して鼻血を出させたりといった蛮行をくりかえしていた。

    夫婦の弁護士とフレデリック郡の州検事のあいだで交わされた司法取引協定によると、マーティン夫妻は「アルフォード・プリー司法取引」の手続きを行ったという。アルフォード・プリー司法取引とは、自分たちの行為が法的に間違っていることを必ずしも認めているわけではないが、有罪を証明できる十分な証拠を検察側がすでに入手していることは認めるという特殊な有罪答弁だ。

    夫婦が投稿するYouTube動画をめぐっては、一部の市民から、精神的苦痛を示す子どもたちの姿が映っているようだとする告発の声があがっていた。これを受けてフレデリック郡の保安官事務所と児童保護サービスは、マーティン夫妻の調査を開始した。

    フレデリック郡のリンディー・エンジェル州検事補は9月11日にBuzzFeed Newsに対して、マーティン夫妻と5人の子どもたちに対する心理学鑑定が行われた結果、11歳のエマと10歳のコーディーは、両親によるこうした動画のせいで「心の傷」を負っていることがわかったと語った。

    夫婦は5月、エマとコーディーの親権を失った。2人はマイケルの実の子だが、ヘザーとの血のつながりはない。

    保護観察の条件により、現在係争中の親権訴訟を担当する裁判官の決定がない限り、エマとコーディーに接触することをマーティン夫妻は認められない。また、エマとコーディーの動画をソーシャルメディアに投稿することも許されない。

    YouTubeコメンテーターとして人気のフィリップ・デフランコによると、何度もこのイタズラの標的にされたのが末っ子のコーディーで、彼はそうしたイタズラに対する抵抗力がいちばん高いように見えたという。デフランコは、DaddyOFiveの動画は児童虐待に相当する可能性があるといち早く指摘した人物のひとりだ。

    すでに削除されたある動画の中で、コーディーは継母のヘザーから、自分のベッドルームのカーペットにインクをこぼしたという濡れ衣を着せられ、嘘つき呼ばわりされ、ひわいな言葉を浴びせられて泣きじゃくっていた。

    コーディーは別の動画でも、父マイケルから本棚に強く押しつけられて鼻血を流していた。

    ヘザーの実の息子であるほかの子ども3人は、今回の刑事事件の対象にはならなかった。エンジェル州検事補によると、心理学鑑定の結果、彼ら3人には一連の動画に関連した「心の傷」が認められなかったという。

    please go report daddyofive on YouTube, he's physically and mentally abusing his children for money/views

    YouTubeのdaddyofiveを通報しよう。お金と視聴回数を稼ぐために、彼は自分の子どもたちを肉体的にも精神的にも虐待している。

    エンジェル州検事補は、動画について最初は「あまりに恐ろしいと思った」と語る一方で、今回の判決は「子どもたちの利益を最優先に考えて」下されたと思うと話す。

    心理学鑑定により、夫婦には「判断力の著しい欠陥」が見られるが、「子どもたちにケガを負わせる意図はなかった」ことが示されているという。

    「彼らの判断は、無神経で冷酷、不適切なものです。しかし、本気でケガを負わせるつもりはありませんでした」とエンジェル州検事補は語る。

    今回の疑惑が明るみに出てからというもの、マーティン夫妻は当局の指示に従ってカウンセリングを受け、動画の撮影・投稿を控えているという。

    「マーティン夫妻は事態をきわめて深刻に受け止めています」とエンジェル州検事補は語り、検察側は子どもたちが証言台に立つことを望んでいないとつけ加えた。

    保護観察という判決は「全員の利益にかなうもの」だと同氏は話す。

    マーティン夫妻の弁護士であるスティーブン・タリーはBuzzFeed Newsに、この判決は交渉に基づいた合意であり、彼らはこの判決に「十分に納得している」と語った。

    マーティン夫妻が今回の事件から教訓を学んだかという点について、タリー弁護士は、「彼らは、実際にはどういうことが起こり、自分たちが予想していなかったどのような影響を子どもたちが受けたかについて心配しています」と述べた。

    夫婦は、エマとコーディーの動画をソーシャルメディアに投稿しないことに同意している一方で、自分たちとほかの子供3人の動画については今後も継続して投稿する「可能性はある」という。「ただし、以前とは違ったスタイルになるでしょう」とタリー弁護士は述べた。



    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan