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Posted on 2017年6月23日

フロリダ銃乱射事件 肖像写真が伝える「1年後の物語」

「私たちはただ音楽を楽しんでいただけ」

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フロリダ州オーランドのナイトクラブ「パルス(Pulse)」で起きた銃乱射事件から1年に当たる2017年6月12日、写真シリーズ「ディア・オーランド」が公開された。生存者や遺族、緊急対応者たちはこの写真シリーズで、あの夜に起きたこと、そしてそれが彼らの人生をどのように変えたのかについて語っている。

「彼は言った。もう行かなくちゃいけないんだ」

Daymon Gardner for Dear World

事件で殺されたパートナーが、夢に出てきて、感謝と愛を伝えてくれた。そのあと彼は言った。「もう行かなくちゃいけないんだ」

ディア・オーランドを制作したのは、被写体の体にメッセージを書き入れた力強い肖像写真で、個人の私的な物語を世界に伝えるグループ「ディア・ワールド」。彼らはボストンマラソン爆弾テロ事件の生存者たちを取り上げた作品でもよく知られている。

写真家デイモン・ガードナーによって撮影された白黒写真のそれぞれには、各人が語った逸話からの一文が添えられている。これら逸話の舞台は、事件現場となったパルスや、閉じられたドアの奥にある無数の病室、家族が知らせを待つ家など、さまざまだ。

「彼らが電話に出られればよかったのに、と思いました」

Daymon Gardner for Dear World

オーランド郊外のイートンビル警察署に所属する警官のオマー・デルガードはインタビューで、パルスに到着したときの様子を語った。現場に到着したときには、複数の携帯電話が鳴っていたという。安否を気遣う家族や友人からの電話だ。

「いたるところで電話が鳴り始めました。とりわけ1台のiPhoneは、私の足もとでずっとずっと鳴り続けていました」

「私は、発信者IDや写真を確認しながら、『きっと、電話の主がこの電話を手にとることはもう2度とないのだろう』と思いました」

ディア・ワールドの創設者であるロバート・X・フォガティはBuzzFeed Newsに対して、こう語った。「今回のプロジェクトで被写体になってもらう人たちにカメラの前に立ってもらうまでには、およそ2時間に及ぶ1対1のインタビューが必要でした」

5月に4日間をかけて行われたインタビューについて、フォガティは、「泣くこともあれば、笑うこともありました」と語る。「一人ひとりが、起き上がって足を前に踏み出し、命の尊さを噛みしめているいまの毎日について語ってくれました。決まり文句ではなく、自分の言葉で」

「彼の部屋に言ったけれど、彼はそこにいなかった」

Daymon Gardner for Dear World

上の写真はミナ・ジャスティス。彼女の息子であるエディ・ジャスティスは、フロリダ銃乱射事件で命を奪われた。彼女は事件のことを知り、息子のアパートに向かった。

「到着して部屋のなかに入った私は『あの子はここにいる。靴があるんだもの』と自分に言い聞かせました」とその日のことを振り返った。「それから10分も経たないうちに、FBIから電話から電話がありました」

フォガティは、被写体の体に書かれた言葉を、「彼らにしか伝えられない物語のリード文」と呼ぶ。これらのメッセージは、彼らの私的な物語を深く知るための招待状の役目を果たしていると同氏は説明する。

「わたしたちが一緒に食べた最後の食事は、ターキーネックと米とキャベツ」

Daymon Gardner for Dear World

「このような事件が自分の身にふりかかってこないとき、私たちは皆、畏敬の念を抱く傍観者になります」とフォガティは語る。「これに対して当事者となった人々は、自分ではどうすることもできない、望んでもいない物語の登場人物になってしまうのです」

「こんにちはのキスはしたけど、さよならのキスはしていない」

Daymon Gardner for Dear World

フロリダ銃乱射事件の生存者であるオーランド・トーレスは、トイレに行く途中、友人にキスしたときのことを回想した。「同性愛者のコミュニティでは、あいさつの意味を込めて、お互いが頬にキスし合います。それが私たちラテン系の習慣なんです」

「私が最後に見かけたのはアンソニー・ロレアーノでした。私は彼に挨拶のキスをしました」とトーレスはインタビューで語った。「そして私は病院のベッドのなかで、殺された49人のなかの1人として彼の写真が画面に出てくるのを見ました」

「OK、4分で行く」

Daymon Gardner for Dear World

ジェイミー・ハーンは、夜勤の緊急救命室(ER)看護師としてオーランドヘルス病院で働いている。彼女はエレベーターで手術室(OR)に行くまでの道のりを回想した。彼女には、そこに到着するまでの時間がわかっていたので、「OK、4分で行く」と言ったという。

「30秒ほどエレベーターに乗りました。エレベーターを出ると、そこにあるのは両開きのドアです。到着です。横のボタンを押し、ドアが開くと、そこには医師が、準備万端の状態で立っていました」とハーンはインタビューで語った。

「息子は、バットマンでも、スーパーマンでも、ハルクでもなく、パパが好きと言ってくれた」

Daymon Gardner for Dear World

ロドニー・サムターはその晩、バーテンダーとして事件現場に居合わせた。銃が乱射されるさなか、彼の頭から離れなかったのは子どもたちのことだった。ちょうど1週間後の父の日、入院中の彼のもとに息子が訪れた。

「息子が面会に来てくれ、学校の授業でつくったプレゼントを持ってきてくれました。あの子が書いたポスターを見た私は、泣き崩れてしまいました」とサムターは語った。4発の銃弾を受けた彼は、病院に搬送された最初の被害者だった。

「私の息子はDCコミックスの大ファンで、スーパーヒーローが大好きなんです。その息子が、こんなポスターをつくってくれたんです」

バットマンは頭がいい、

スーパーマンは速い、

超人ハルクは強い、

でも、僕が一番好きなスーパーヒーローはパパだ

「私たちはただ音楽を楽しんでいただけ」

Daymon Gardner for Dear World

事件当夜のDJだったレイ・リヴェラは、家族とともに歩む、回復への長くて険しい道のりについて語った。

「目の下のクマを見ればわかってもらえると思いますが、睡眠障害がひどくて」とリヴェラはインタビューで語った。

「正直、大変な一年でした。カウンセリングにも通っています。何事についても、当然とは考えなくなりました。息子や妻が『あれがしたい』『これがしたい』とせがんでくるとき、疲れていても私は、時間をつくって『わかった。よし、じゃあ出かけようか』と言うようになりました」

フォガティの願いは、これ以上にない最悪の状況での強さや立ち直る力について教えてくれる彼らの物語が、読んだあともいつまでも人々の心に残ってくれることだ。「人間が持っている適応力や成長力、克服力は本当に素晴らしいものです」

これら肖像写真の背景にある物語を知りたい方は、こちらからどうぞ。

この記事は英語から翻訳されました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan