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Will Bremridge for BuzzFeed News

生理用品は「できれば用意」? いいえ、必需品です。 ナプキンを寄付する女性の話

「どの国の女性もみんな膣があって、みんな出血するんですよ!」

「初めて会う女性たちが、自分の膣がどうこうという話を私にするんですよ」。自称「社会変革家」のガビー・エドリンは、ロンドンにあるBuzzFeed Newsのオフィスでそう語った。エドリンの軽快なマンチェスター訛りが、たいていは声を潜めて語られるこの言葉に肯定的な響きを与える。

エドリンは、生理用品の寄付を募る慈善団体「ブラッディー・グッド・ピリオド(Bloody Good Period)」の設立者だ。シャワージェルやウェットティッシュなど、ドラッグストアにナプキンを買いに行ったついでに買うようなトイレタリー用品も扱い、ロンドン北部にある2カ所の難民認定申請者用寄付センターで難民女性に配っている。

ユダヤ系なので難民認定申請者には特に親近感を感じる、とエドリンは語る。難民女性たちには特別な手助けをしたいと考えてきた。

「住む場所を追われた記憶が、私たちの体のどこかに残っているのです」とエドリンは説明する。「私の曾祖父母は、20世紀になる前後にポーランド、リトアニア、ロシアからイギリスにやってきました。母方の曾祖母は、ホロコーストできょうだいを亡くしました。難民認定申請者になるという体験は、私たちの多くにとってはほんの2~3世代前のことなのです」

難民認定申請者は、申請手続き中は働くことができない。そのため貧しい生活を送ることになりがちで、それが何年も続くことも多い。「特に女性は、女性であるがゆえに特別な支出があります」

2017年6月、ケンジントン北部のグレンフェル・タワーで悲劇的な火災が起き、何百人もの人々が火災発生時に着ていたパジャマだけで住む家を追われた。救助活動として、ブラッディー・グッド・ピリオドは約1500パックの生理用ナプキンを寄付した。

「難民認定申請者が住んでいるかもしれないと考えたのですが、それが正しかったかはさておき、ナプキンを持って避難した人なんてほとんどいないだろうという予想は正しかったと思います」とエドリンは語る。「100人の女性が被災したら、当然、500パックもしくはそれ以上のナプキンが必要だろうと考えました。特に、シャワーも使えない、下着も替えられない、という人もいたわけですから」

「私たちは、このようなひどい目に遭った女性たちの心配ごとを、確実に1つ減らしてあげたかったのです」

エドリンがブラッディー・グッド・ピリオドを立ち上げたのは、セントラル・セント・マーチンズ大学で社会改革の修士課程を終えたあと、「ニュー・ノース・ロンドン・シナゴーグ」の難民認定申請者向け寄付センターでボランティアとして働き始めてすぐのことだ。

エドリンはあるとき、地元の難民に配る物品リストの中に食べ物や衣類はあるのに、なぜ生理用品が入っていないのか疑問に思い、別のボランティア・スタッフに尋ねた。返ってきた答えは、「リストに載せるのは緊急で必要なものだけ」。

「『何言ってんの、生理は毎回緊急なのに!』と思いましたよ」とエドリンは述べる。「生理用品は、食べ物と同じくらい不可欠なものです。所かまわず出血するわけにはいかないのですから。生理用品は『できれば用意するもの』ではありません。女性には必需品なのです」

We need new donations all the time because periods are EVERY BLOODY MONTH. #always #tampax #ultrex #asylumseekers… https://t.co/tPZu0j0hjJ

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エドリンが、Facebookで友だちに向けて生理用品の寄付を募ったところ、大きな反響があった。「みんな共感してくれたのです」。現在は、ブラッディー・グッド・ピリオドのウェブサイトか、アマゾンの「ほしい物リスト」から特定の製品を選んで購入すれば、誰でも寄付できる。「JustGiving」のページから現金を送ることも可能だ。また、生理用品を購入するサイト「Damebox」に登録すれば、2カ月分のナプキンと、それを入れておく布バッグとポーチがセットになったものを、1回もしくは毎月寄付できる。

最初のうち、生理用品は寄付センターにある衣類のテーブルの下に目立たないように置いておき、求めに応じて配布するよう促された。しかしエドリンは、専用のテーブルを持とうと決心した。隠さず堂々とテーブルに並べ、オープンに品定めして気に入ったものを持って行ってもらえるように。

「生理用ナプキンを必要としている女性に、なぜ居心地の悪い思いをさせなければならないのでしょう」。センターを利用する人は、定期的に彼女のテーブルに直行するという。妻や娘のためにナプキンをもらう男性もいる。

エドリンのこうした姿勢は、女性たちが打ち明け話をして精神的に支え合ったり、生理が辛い、と愚痴を言い合ったりする場を生んだ。「ある女の人は、生理のときに来ると、いつもそれを大々的に公表するんです」とエドリンは笑う。「ここには本当の意味でのコミュニティがあります。素晴らしいことです。お互いを良く知るようになりますよ」

ジョージア(旧称グルジア)からの避難民で22歳のマリナ(仮名)は、月に1度、1歳の娘ニノ(仮名)を連れ、3台のバスを乗り継いでロンドンを移動し、2時間以上かけてセンターにやってくる。

「何かの見本市のよう」とマリナは表現する。たいていは、割り当てられた10分間でセンターを回るために、ほかの女性たちのおしゃべりに巻き込まれないよう必死だという。

「でも結局、いっぱい話をすることになるんです」と彼女は打ち明ける。「精神的にはとてもいいことですけどね」

「エドリンとは、心を開いてたくさん話をするようになったと思います。彼女は、私を特別な目で見ないのです」

マリナは2009年、14歳だったときに、激しい内戦のさなかにあった故郷を離れ、双子の弟とともにウクライナ経由でイギリスに渡った。母と姉はあとからやってきて落ち合う予定だった。

「ジョージアさえ出れば安全だと考えたのでしょう。私たちは2人だけで出発しました」

ジョージアでは恐ろしいことも目にしたが、それを除けば、なぜ国を離れるのかよく分からなかったという。「おとなたちは、子どもの私たちには隠そうとしていたのです。今ではよく理解できます」

ロンドンに着いて何カ月もたってから、母や姉と再会した。一家はカーディフに移り、その後6年間は、難民認定申請者の収容施設を出たり入ったりして暮らした。いつも家族みなが一緒というわけではなかった。いつ強制送還されるかも分からなかった。マリナはあるとき、ヤールズウッド難民移送センターに送られた。そこは「ひどい場所だった」という。貧しい生活環境と女性への虐待が常に疑われていた。

結局マリナは、カーディフで仲良くなった友人たちからお金をかき集めて弁護士を雇い、難民移送センターから出て難民認定申請を行うことができた。申請が処理されるのを待っている2年の間、働くことはできず、政府から週36ポンド(約5200円)の手当てを受けてきた。それに加えて、娘に37ポンド、母に36ポンドの手当てが出る。母は自殺を試みて以来、マリナの扶養家族となり、マリナと暮らしている。ほかに、4人の女性とその赤ん坊も一緒だ。

マリナはたいてい自分の手当ての一部を母に渡している。「母には、必要なものを全部手に入れてほしくて。それでも、コーヒーショップやレストランに行くようなことはできません」とマリナは語る。

マリナの姉はジョージアに送り返された。それ以来、姉には会えていない。家族全員が姉のことをひどく心配している。

「姉が死んでしまったような気がしました」とマリナは言う。「あれほど危険な国に送り返されるなんて、とても心配です。あの国にいるくらいなら、週36ポンドで暮らす方がいい、とイギリスにやってきたのですから」

人づてに聞いていたエドリンの団体をロンドン北部の寄付センターで見つけたときは、感動したという。

「妊娠中だった私は混乱し、落ち込んでもいました。それにホームレスだったのです」。マリナは当時を振り返る。「生理用品が並んだ大きなテーブルを見たときは、衣類を見ようとも思いませんでした」

筆者が会ったマリナは、ソフトなラズベリー色の陰影があるマットな口紅をきれいに塗り、量の多い濃い茶の巻き毛を頭の高い位置で美しくまとめている。整った身なりでいることによる自信が感じられた。

「ここに来るときは、いつもとても素敵ですよ」とエドリンが言う。

「清潔でいることは本当に大切なことだし、自分がいい匂いだと気分も良くなります」とマリナが説明する。マリナはエドリンにも、ナプキンや化粧品などをブラッディー・グッド・ピリオドに寄付してくれる人たちにも、深く感謝しているという。「ありがたい気持ちでいっぱいです。私はまだ22歳だし、服や化粧品なしではいられません」

「私の家を見たらひどい暮らしだと思うでしょうけど、洗面所の棚だけはすてきなんです。本当に助かっています」

ブラッディー・グッド・ピリオドによる寄付品の大半は生理用ナプキンだ。エドリンによると、センターを訪れる女性たちはタンポンよりナプキンを好む傾向にあるという。「私たちが配布するタンポンは、ナプキン100箱につき1箱か、それより少ないくらいです。訪れる女性たちがあまり欲しがらないからです。文化的なものかもしれないし、ただ、慣れていないだけかもしれませんが、誰に対しても何も強要はしません」

センターでもっとも人気のブランドは「Kotex」と「Always」だ。貧しさから良いものを選べないことが多い女性たちに、質の良いものを提供することが大切だとエドリンは信じている。

「おそらくもっとたくさんの量を同じ金額で買うこともできるでしょう。でも、一番安いものを欲しいと思うでしょうか。祖国を離れなければならなかったからといって、不快な思いまでする必要はありません」

「ナプキンについても同じことです。安いものは使いたくないでしょう」

マリナも同意見だ。「どの国から来た人も、みんな膣があるんです」と彼女は笑う。「みんな膣があって、みんな出血するんですよ!」

「以前は、とても安い『Lidl』や『Asda』を使わなければなりませんでした。ほかのものを買えなかったからです。でも私はすごく敏感肌なので、肌が荒れてしまいました」とマリナは続けた。

「ブラッディー・グッド・ピリオドのテーブルに置いてあるものは、すべて良いブランドのものです。お店に行って見かけたとき、『え、あれって2.35ポンド(340円)もするの?』と驚いてしまいます」

本当なら買えないような良い製品を使えるのは、気分がいいものだとマリナは語る。「良い製品が使えないと辛いです。私は化粧品が好きだし、清潔でいい匂いでいたいから。でも無駄遣いはできません」

はっきりしない状態のまま、仕事をすることもできないマリナだが、ブラッディー・グッド・ピリオドが用意してくれる質の良い化粧品や生理用品が手に入ったことで、心配ごとが1つ減った。

「せめて働かせてくれたら、自分の化粧品が買えるのに!」とマリナは言う。「ボランティアでできることがあればやります。いつも忙しくしてきたのですから」。マリナは、ロシア語とクルド語、それに英語、母国語を含む7カ国語を話す。以前、赤十字でボランティアの通訳をしたことがある。

彼女が整った身なりでボランティアをやっているのを見て、難民認定申請者に見えないと言う人がいるのが腹立たしいという。「私たちをどう見ているんでしょうね」。

「『難民認定申請者』は私の名前ではありません。私の名前はマリナ。ジョージアで生まれました。普通の家で普通の家族と暮らしていました。私が難民認定申請者なのは、今の仕組みが、何年もずっと私を難民認定申請者にすると決めたからです。私は若い女性です。ファッションやおしゃれが好きです。髪をきれいに整えるのは普通のことなんです」


この記事は英語から翻訳・編集しました。また、プライバシー保護のため仮名にしています。翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan


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Laura Silver is a reporter for BuzzFeed News and is based in London.

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