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Uberの元女性社員がセクハラ訴え、CEOが涙で謝罪 シリコンバレーに激震

一人の勇気ある女性の告発から始まった。

Uberを昨年12月に退社した女性エンジニアがブログで、性交渉を迫るなどの上司のセクハラとそれを放置した人事やマネジメントを告発し、大きな話題になっている。トラビス・カラニックCEOは2月21日、全社員を対象にした会議で涙ながらに謝罪し、対策を講じると述べた。

ブログを書いたのはスーザン・ファウラーさん。名門ペンシルベニア大で素粒子物理学を学び、いくつかのスタートアップ企業を経て、2015年11月にUberに入社した。

Stripeに移るまでの1年余りを技術者として働いた。サイト・リライアビリティ・エンジニア(SRE)だった。

長文ブログ

ブログ投稿によると、チームに正式配属された初日からセクハラは始まった。上司から性交渉を求めるメッセージを受け、人事や上層部に報告したが「初回だから」「優秀な社員だ」などとして、取り合ってもらえなかったという。

さらに、チームに残留するか、異動するか、提案を受けた。残留を希望していたが、今後の人事考課でこのマネジャーによって低い評価が下される可能性を示され、異動することにした。

新しくできたSREチームに移り、仕事に励んだファウラーさん。実践したことを本「Production-Ready Microservices」にまとめ、ベストセラーになった。

その後、問題の上司から複数の女性技術者がセクハラ行為を受けていたことを知る。「最初の行為というのは嘘だった」とファウラーさん。「わたしたちはみな、Uberの人事、マネジャーたちに愛想を尽かした」

社内政治

さらにインフラ技術部門の上層部は、見苦しい社内政治を展開していたという。チーム同士が足を引っ張り合い、「間断のないカオス」だった。エンジニアたちは別の部門に移り始め、ファウラーさんも異動を希望した。だが「文書になっていない業績に問題がある」として、却下された。

意味がわからないファウラーさんだったが、異動を諦めて、次の評価まで待つことにしたという。

その評価は問題ないものだった。だが数ヶ月後、再び異動を申し出ると、評価のスコアが変更され、異動の基準に満たなくなったと言われた。

それだけではない。Uberがスポンサーとなりスタンフォード大のプログラムに入学していたが、評価スコアが変更されたために、スポンサー基準に満たなくなった。「後から、マネジャーは自分をチームに残留させることで体面をよく装おうとしたのだとわかった。他のチームから女性技術者がいなくなっているのに、自分のところにはまだいると自慢していたとも聞いた」

入社時に、インフラ技術部門の4分の1以上が女性だった。だが、このときまでに他部門に移ったり、退社したりして、6%未満に減っていたという。「主な理由は二つ。組織的なカオス、そして性差別だった」

解雇の脅迫

さらに人事に問題を報告し続けると、反対にファウラーさん本人に問題があるのではないかと指摘されたという。SREには女性が少ないことを指摘すると、特定の性別や民族的背景の人たちは、特定の仕事に向いていることがあるという話を持ち出された。メールで報告するのはプロフェッショナルではないとも非難された。

それから1週間もたたないうちに、マネジャーが1対1のミーティングで、今後も人事に通報すれば解雇すると脅した。この脅迫をすぐに人事と最高技術責任者(CTO)に通報したところ、両者ともにこれは違法だと認めたが、何もしなかったという。

それから1週間以内に、転職先を見つけたファウラーさん。Uberでの最終日、この部門に残っている女性の割合を計算すると、150人以上の技術者の中で、女性はたった3%だった。

I wrote something up this weekend about my year at Uber, and why I left: https://t.co/SyREtfLuZH

#Uber削除

ブログが投稿されたのは2月19日。テック業界の性差別やマネジメント問題を象徴するとして、SNS上で大きな話題になった。ハッカーニュースではトップ記事に。さらに#DeleteUber(Uber削除)というハッシュタグも広がった

カラニックCEOは19日、BuzzFeed Newsの取材に、ファウラーさんが訴えたようなことは知らなかったとして、こう回答した。

「彼女が書いた内容は嫌悪すべきもので、Uberが拠って立ち、信じる全てのことに反する。このことを知ったのは初めてで、こうした訴えについて、新たに就任したリアン・ホンジー最高人事責任者に緊急調査するよう指示した」

「Uberがすべての人にとって働きやすい場所となるよう追求しているし、Uberにこのような行為が許されるような場は絶対にない。このような行為をしたり、これが許容されると考えたりする人間は解雇されるだろう」

ハフィントンポスト編集長だった、Uberのアリアナ・ハフィントン取締役もツイートした。

「トラビス(CEO)と話した。Uber取締役会のメンバーとして、(最高人事責任者の)リアンと連携し、今から完全に独立した調査をする」

Just talked w/ Travis & as a representative of Uber's Board I will work w/Liane to conduct a full independent investigation starting now 1/2

独立調査立ち上げ

カラニックCEOは20日、社員向けのメモで、ファウラーさんが声を上げた職場環境の問題について、エリック・ホルダー元司法長官らをトップとする独立調査を開始すると発表した。会社としてのダイバーシティーやインクルージョンのあり方も対象とするという。

「全くの失敗」

さらにUberは21日、全社員を対象とする会議を開いた。出席した複数の社員によると、カラニックCEOは、会社が適切に対処しなかったことを謝罪。性差別やハラスメント行為を報告する社内規定について説明し、無意識にある偏見に関するトレーニングの計画を発表した。

1時間以上続いた会議。ブルームバーグによると、カラニックCEOの目には時折涙が浮かんだという。

ファウラーさんが解雇の脅迫を通報した相手としてブログに書いたトゥアン・ファムCTOは、会社の対処の仕方は「全くの失敗」だったと振り返った。

優れた実績よりも、パワハラをしないことを重視すると述べた。昨年10月、人事考課を改ざんして社員が異動しないようにしたマネジャーを解雇したことを明らかにした。

An update following today’s @Uber all-hands meeting: https://t.co/kPqUgeVbLz

会議を振り返って、ハフィントン取締役は「トラビス(CEO)は自身の犯した誤りについて、非常に正直に話した」と書いた。

「社員がマネジャーたちの責任を問うのは素晴らしいことだ。また、私の責任は、指導者層のチームがこの問題にしっかり取り組むようにさせることだと認識している」

「変化は通常、触媒がなければ起きない。問題点を理解するのに時間をかけ、直すことによって、Uberをより良くするだけではなく、業界における女性の地位向上につながることを期待している」

会議内容についてUberは、BuzzFeed Newsにコメントしなかった。

現役の女性エンジニアも声

「これは嫌悪すべき、ぞっとする、本当にひどいことだと思う。でも、私は全然驚いていない。それどころか、皆さんが驚いていることに一番驚いている」

ファウラーさんの投稿を受けて、Uberに在籍する女性エンジニアもブログに長文を投稿した。エイミー・ルシドさんは、「シリコンバレーのほぼ全員が読んだ」ファウラーさんの投稿は「テック業界の不都合な真実だ」と指摘した。

「性差別はどこにでもある問題。政治でも、出版でも、アカデミアでも」「(この投稿は)すべての人にとっての警鐘となるべきだ」

そして、カラニックCEOがすぐに対応したことを喜び、ファウラーさんに感謝した。

「私たちがずっとやろうとしてきたような方法で、ついに人々に伝えてくれてありがとう。あなたがここで働いていた間、知り合うことはなかったけれど、友達になれたと思う。ありがとう。ありがとう。ありがとう」

ブログ「奇妙な一年」

ファウラーさんのブログ投稿「とても、とても、奇妙だったUberでの一年を振り返って」の抄訳は以下の通り。

2015年11月、サイト・リライアビリティ・エンジニア(SRE)としてUberに入社しました。技術者として入社するには、素晴らしい時期でした。SREチームはまだ新しく、幸運なことに参画したいチームを選べました。

数週間のトレーニング後、私が専門領域とするチームに配属されました。ここから奇妙な事態が始まったのです。

正式配属された初日、マネジャーが社内チャットで複数のメッセージを送ってきました。自分は(特定の相手以外とも性交渉をもつ)オープンな関係にあり、自分の彼女は簡単に新しいパートナーを見つけているのに、自分はそうではないと言うのです。

仕事ではトラブルを起こさないようにしているが、そうせざるを得ない、なぜなら性交渉を持つ女性を探しているから、と言います。彼が私と性交渉を持とうとしているのは明らかでした。会話のスクリーンショットを人事部に送り、報告しました。

このときUberはすでにかなりの規模になっていて、このような状況をどう処理してくれるかについて、普通の期待を持っていました。適切な処分を下して、私の人生はまた進み続けると思いました。でも違ったのです。

人事部もマネジメント上層部も、明らかなセクハラだと認めましたが、今回の行為は初めてのことだと、だから警告以上のことは気まずく感じると言いました。マネジメント上層部は、このマネジャーは「業績が良い」し、おそらくただの悪気のない過ちなので、罰するのは気まずく感じるとも言いました。

チームに残留するか、異動するか、選ぶように言われました。ただ、次回の人事考課で、このマネジャーが私を低く評価する可能性があることを理解しなければならないとも言われました。ある人事は、私は「選択を与えられた」のだから、低い評価を受けても報復人事ではないとさえ言いました。

ですから、チームを去りました。数週間かけて他のチームがやっていることを知り、新しくできたSREチームに移りました。裁量が大きく、楽しくいい仕事をする方法を見つけました。そこでの仕事はベストセラー本「Production-Ready Microservices」に書いたものです。

それから数ヶ月、複数の女性エンジニアと知り合いました。驚いたことに、私と同じような体験をした女性の話を聞きました。私が訴えたマネジャーを同じように訴えた女性たちもいたのです。私が入社するずっと前のことでした。人事もマネジメントも「最初の行為」といったのは明らかに嘘でした。その数ヶ月後、このマネジャーは再び訴えられましたが、この訴えた人も「最初だ」と言われました。

このマネジャーを訴えた数人の女性たちと私は、何か対策をするべきだと主張するために人事とミーティングを持とうと決意しました。私とのミーティングで人事は、このマネジャーは1回しか問題を起こしていないと言いました。他の女性たちは彼について何も悪いことは言っていないとも。だから対処することはないと言われました。私たちができることは何もないというのは真っ赤な嘘です。私たちはみな、Uberの人事やマネジャーに愛想を尽かしました。最終的にこのマネジャーは会社を「去り」ましたが、彼が最終的に何をしてクビになったのかは知りません。

インフラ技術部門の上層部は、見苦しい社内政治を展開していました。チーム同士が足を引っ張り合っていました。間断のないカオスでした。

この間も、私は素晴らしい技術者たちと仕事をできたのは幸運でした。わたしたちは身を潜めて静かにし、カオスだったにもかかわらず、いい仕事(時には素晴らしい仕事)を残しました。愛着を持って仕事に励み、巨大なUberのエコシステムを走らせ続けました。

ただ事態は改善しませんでした。技術者たちは別の技術部門に移り始めました。私もプロジェクト終了後、異動を希望しました。でも、却下されたのです。

私のマネジャー、そのまたマネジャー、ディレクターによると、文書になっていない業績に問題があるという理由でした。でも、それが何か尋ねても回答はありませんでした。当初、技術的に足りないと言われましたが、管理目標はこなしていると主張すると、その指摘を撤回しました。しまいには「業績の問題は必ずしも仕事と関係するわけではない。時には仕事外のこと、私生活のことについての場合もある」と言われました。私は意味がわからず、異動を諦めて、次の評価まで待つことにしました。

次の評価は問題のないものでした。数ヶ月待って、再び異動を申し出ました。すると、私の評価のスコアが変更され、異動の基準に満たなくなったと言われたのです。理由を聞くと、キャリアの上昇志向がないというのです。本を出版しようとしているし、カンファレンスで登壇していると言いましたが、技術者として証明する必要があるといわれました。

私は評価を戻すように頼みました。マネジャーは現実的には何の問題もないから、心配するなといいました。でもその日、私は帰宅して、泣きました。給料やボーナスへの影響だけでなく、現実的な問題があったのです。Uberがスポンサーとなり、スタンフォード大のコンピューターサイエンスの大学院プログラムに入学していたのです。でも、評価スコアが変更されたために、スポンサー基準に満たなくなってしまいました。

私をチームに残留させることでマネジャーが体面をよく装おうとしたと後で分かりました。他のチームから女性技術者がいなくなっているのに、自分のところにはまだいると自慢していたとも聞きました。

入社時に、私が所属した部門は4分の1以上が女性でした。でも、私が異動しようとしていたとき、6%未満に減っていました。女性は他部門に移るか、退社したか、退社を準備していました。主な理由は二つです。組織的なカオス、そして性差別です。全部門会議でこの部門に特有な女性の減少について何かできないのかとディレクターに尋ねると、Uberの女性はただ優秀な技術者になる必要があるという答えでした。

状況はますますバカバカしいくらい奇妙なことになっていきました。おかしいことが起き、性差別のメールがあるたびに、人事に報告し続けました。こんなこともありました。部門がSREたちに革ジャケットを用意するといって、サイズの希望を取りました。ある日、女性は6人いたと思うのですが、女性には革ジャケットはないというメールが来ました。ディレクターは、男性用は大量注文するから安いが、女性用はそうではないので、公平ではないと言います。欲しいなら、同じ価格のジャケットを探せというのです。

この馬鹿げたやり取りを人事に報告しました。するとすぐに会いたいと言われました。人事は「私」が、これまで報告してきたことの共通問題になっていると気づかないのかと切り出しました。私が問題なのではないかと考えたことはないのかと。私はすべての報告には証拠をつけているし、大半は、私がたきつけているわけでも、私が中心に関わることでもないと指摘しました。人事は女性の技術者同士は仲がいいのか、どのぐらい頻繁にコミュニケーションするのか、何について話をするのか、どのメールアドレスを使っているのか、どのチャットルームをよく使うのかといった馬鹿げていて、侮辱的な質問をしてきました。SREには女性が少ないことを指摘すると、特定の性別や民族的背景の人たちは、特定の仕事に向いていることがあるという話を持ち出しました。だから、技術者の性別割合には驚くべきでないと。最後には、メールで報告することを非難され、メールで報告するのはプロフェッショナルではないと言われて、ミーティングは終わりました。

それから1週間もたたないうちに、マネジャーと1対1でミーティングが設定されました。今後、人事に通報するようなことがあれば、解雇できると言われました。私はそれは違法だと答えました。でも、自分は長くマネジャーをやっており、何が違法かはわかっているので、人事への通報をもって私を解雇するのは違法ではないと言いました。私はこの脅しをすぐに人事と最高技術責任者(CTO)に通報しました。両者ともこれは違法だと認めましたが、何もしませんでした。

それから1週間以内に、私は転職先を見つけました。

Uberでの最終日、この部門に残っている女性の割合を計算しました。150人以上いる技術者のなかで、女性はたった3%でした。

Uberでの時間を振り返り、優秀な技術者たちと働けたことに感謝しています。成し遂げた仕事、組織に残したインパクトを誇りに思います。本を書き、それが世界中のテック企業に採用されたことを誇りに思います。この文章で振り返ってきたようなことについて考えるとき、非常に悲しく思います。でも、そのバカバカしさ加減にも笑えるのです。本当に奇妙な経験でした。本当に奇妙な一年でした。

この記事は英語から翻訳・編集しました。

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