「男子なら世界700位」と言われ物議 それでも差別と闘うテニスの女王、セリーナ・ウィリアムズ

    「座って見ているのではなく、実際に声を上げることが大切なんです」

    女子テニスの王者セリーナ・ウィリアムズ選手(35歳)。「男子だったら世界700位ぐらい」と侮辱した元男子王者の発言が物議を醸している。

    発言主は、元世界ランク1位のジョン・マッケンロー氏(58歳)。全米オープンで4回、ウィンブルドンで3回、シングルスのタイトルを手にしている。

    発言は6月25日、米ラジオNPRで著書を紹介する中で飛び出した。「史上最高の女子選手であることは間違いない」としつつ「男子ツアーでプレイしていたら、世界700位ぐらいだろう」と述べた。

    In John McEnroe's new book "But Seriously," he calls Serena Williams the best female player ever.… https://t.co/Xn6u2i12yn

    司会者:セリーナ・ウィリアムズ選手について話しましょう。本の中で、世界最高の女子選手とされていますね。

    マッケンロー氏:史上最高の女子選手だ。間違いないね。

    司会者:そうは思わない人もいるでしょう。世界最高の選手だと言う人もいるでしょう。なぜそう思うのですか?

    マッケンロー氏:ああ!いや違うよ。世界最高の選手に間違いないって意味?

    司会者:はい、世界最高のテニス選手。ほら、なんで女子選手と言うのですか?

    マッケンロー氏:なぜなら、もし彼女がね、彼女が男子ツアーでプレイしていたら、世界700位ぐらいだからだ。

    司会者:そう思うのですか?

    マッケンロー氏:ああ。セリーナが素晴らしい選手だと思っていないということではない。思っている。だが、現実に起こりそうなのは、セリーナは精神的に非常に強いので勝つような日もあるだろうと思うが、ツアーで、男子ツアーでプレイしたとしたら、全く違う話になるだろう。

    Twitterでは異論が。「事実=セリーナ・ウィリアムズは史上最高のテニス選手。ロジャー(・フェデラー)やラファエル(・ナダル)より秀でている。そう認めたって、殺されやしないよ」

    Fact: Serena Williams is the greatest tennis player of all time. Yes, she's greater than Roger and Rafa. Accepting… https://t.co/vlrKf0dU4p

    「セリーナ・ウィリアムズはトップ10のアスリート。この議論に性別は関係ない。信じられないハイレベルで競技を制している」

    Serena Williams is a Top 10 athlete. Gender should be irrelevant to the discussion. She dominates her competition at an insanely high level.

    一方、反論も。「問題がわからないね。ほぼ全てのスポーツで女性が別々に戦う理由がある。これを認めるのは性差別か?」

    @NPR i dont see what the issue with this is. theres a reason women compete separately in virtually all sports. is i… https://t.co/y6EH1mddSe

    BBCの取材に世界ランク701位のドミトリー・トゥルスノフ選手(34歳)が「セリーナに勝てるんじゃないかと思う」と発言し、論争に加わった。

    「一般的に男性の方が強い」「彼女は妊娠している。僕はしていない」などとも発言した。

    ウィリアムズ選手はTwitterで反論

    「親愛なるジョン 敬愛し、尊敬していますが、どうか、どうか、私について根拠のない発言をしないでください」

    Dear John, I adore and respect you but please please keep me out of your statements that are not factually based.

    「"その辺の"ランクの選手とプレイしたことはないし、そんな時間もありません。出産を控えているんです。私のこと、私のプライバシーを尊重してください。ごきげんよう」

    I've never played anyone ranked "there" nor do I have time. Respect me and my privacy as I'm trying to have a baby. Good day sir

    ウィリアムズ選手は昨年、スポーツ界の性差別についてこんな発言をしている。「女性であることには、社会から全く別次元の問題が降りかかります」「もし私が男性だったなら、100%史上最高だって、とっくの昔に認められていたでしょう」

    WATCH: "If I were a man, I'd have been considered the greatest a long time ago." -@serenawilliams

    ウィリアムズ選手は昨年12月にRedditの共同創業者アレクシス・オハニアン氏(34歳)と婚約し、第一子を妊娠している。

    ふたりの赤ちゃんについても、別の元男子選手が人種差別発言をした。女子国別対抗戦フェド杯のルーマニア代表監督を務めるイリ・ナスターゼ氏(70歳)は4月、試合後の会見で「どんな色か見てみようじゃないか。ミルク入りチョコレートか?」と述べた。

    これを受けて、ウィリアムズ選手はInstagramに「正しいことのために立ち上がり続ける」と投稿した。

    「イリ・ナスターゼのような人物が、私とお腹の子に対してこのような人種差別発言をし、私の仲間達に対して性差別発言をする。そのような社会に生きていることに失望しています」

    「前にも言ったことですが、もう一度言います。この世界は大変進歩しましたが、まだまだ遅れています。多くの壁を壊してきましたが、まだまだ先は長い」

    「私はどんなことがあっても、愛、光、そして前向きな気持ちをあらゆることに注ぐことをやめません。これからも率先し、正しいことのために立ち上がり続けます」

    「私は恐れません。あなたと違って。ほら、私は臆病者じゃないでしょ」

    ここで女性詩人マヤ・アンジェロウの詩「わたしはまた立ち上がる(Still I Rise)」を引用した。

    私が生意気だからいらいらするの?
    なぜ憂鬱に沈むの?
    あなたは言葉で私を撃つのかもしれない。
    あなたは憎しみで私を殺すのかもしれない。
    でも、また、空気のように、私は立ち上がる。

    最後、発言について調査に乗り出した国際テニス連盟(ITF)に感謝の言葉を添えている。

    テック企業「サーベイモンキー」の取締役も務めるウィリアムズ選手。6月23日、女性向けメディアのイベントで「シリコンバレーは本当に、本当に、本当に、多くの女性を受け入れることにオープンではない。有色人種に対しても」「この二つの壁こそを壊さねばなりません。私には、座って見ているのではなく、実際に声を上げることが大切なんです」と述べている。

    6月27日にはヴァニティ・フェア8月号の表紙写真をInstagramに投稿した。

    トップレスで膨らんだお腹を披露している。

    この記事は英語から編集しました。