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性交中に合意なくコンドームを外す「ステルシング」 性犯罪として法制化の動き

日本は?

性交中に合意なくコンドームを外すことを性犯罪とする法制化の動きがアメリカで広がっている。ウィスコンシン州とカリフォルニア州の議員が法案を提出した。

性交中にコンドームなど避妊具を相手の合意を得ないまま外すことは英語で「ステルシング」と呼ばれる。イェール大法科大学院生だったアレクサンドラ・ブロドスキ氏(現・全米女性法センターフェロー)が4月、その犯罪性、ネット上で推奨する動きがあることや、泣き寝入りをしている女性たちがいることを論文にまとめ、注目を集めている。

強姦と変わりない

ブロドスキ氏は論文で、被害者たちが望まない妊娠や性病感染を恐れるだけではなく「強姦と違わない、信頼の侵害、自律の否定」を感じていると指摘した。

ある若い女性はこんな証言をしている。概要はこうだ。

11月、ある男性とデートして数週間のことでした。「コンドームなしにセックスをしたい」と言われました。でも、したくありませんでした。避妊薬を飲んでいないんです。正確にはこう言いました。「交渉の余地はない。もしそれが問題なら、いいです。別れましょう」

性行為をしている途中で、彼はコンドームを取りました。動揺し、少し争いました。

後に彼と話し合いました。「もう別れます。これのせいです。本当にめちゃくちゃ」。彼が「心配するなよ、俺を信頼しろ」と言ったのが、頭に残っています。なぜなら、彼にとって私の信頼はいらないということを示しているから。

私が本当に悩んだのは、両者が合意したことへのあからさまな侵害だったことです。私は境界をセットしていました。とてもはっきりとです。

ジェナ・ブラウンさん(仮名、22歳)はBuzzFeed Newsの取材にステルシングの体験を「侵害され、使われたように」感じたと話す。数ヶ月付き合っていた男性が昨夏、性交中にコンドームを取った。だが、いまだに自分に責任はなかったと自分を説得し切れないと打ち明ける。

「打ちのめされました。自分の身に起きたことは性的暴行なのだと本当に思えれば、癒しにつながります」

ブラウンさんのような体験をしている人は少なくない。インターネット掲示板にはステルシングが「悪いこと」なのかと確信しきれずに悩む声が溢れる。

ステルシングのコツを教えるサイトもある(現在は閉鎖)。「やりたいなら、やり方を知らなければならない」。著者のマーク・ベントソン氏は書いていた。

論文の著者ブロドスキ氏はステルシングの動機について「女性蔑視」「男性の性的優位意識」があると指摘する。ネット上で、ステルシングを正当化する人たちは「自然な男性の本能」だと主張している。

実態は

ステルシングの実態はどうなのか。

データは限られている。性的暴行の問題を扱う複数の団体に問い合わせたが、ステルシングに関するデータはなかった。ただ、米司法省の全米犯罪被害調査(2005年)によると、女性7人に1人が、避妊をしてくれないパートナーとの経験があった。

「全米強姦・虐待・近親相姦ネットワーク」(RAINN)の広報担当ジョディ・オマー氏はBuzzFeed Newsに「各州で性的暴行の定義は異なるが、ステルシングは同意の侵害。性交中にコンドームを使うことに合意していながら、それを外せば、合意の侵害だ」と指摘する。

性犯罪被害者を支援するNPO「SurvJustice」のカーリー・N・ミー弁護士も、相手を欺く意思がないなら内緒でコンドームを外すことはないのだから、同意の侵害となると指摘する。

「同意は段階的。1回でいっぺんに全部の性的行為に合意するわけではない」とBuzzFeed Newsに話す。

このNPOはステルシング被害者を支援してきた。現在は、ステルシングを性的暴行とする判例がないため、検察がどう事件を扱うかに任せられていると指摘する。

「上手く行っていません。こうしたタイプの合意侵害は広く理解されていない。だから、裁判官や陪審員も理解するためのトレーニングを受けていない可能性がある。これは変えるべきだ」

ブロドスキ氏がインタビューしたある女性はステルシングを「近似強姦」と呼んだ。「自分の身に悪いこと、間違ったことが起きたとは感じる。侵害だと感じる。でも、それを記述したり、理解したりする言葉がない」。ブロドスキ氏はBuzzFeed Newsに話す。

ただ、反対する人もいる。コーネル大法科大学院のシェリー・コルブ教授は法律ブログJUSTIAにステルシングは「法的責任を問われるべき、紛れもなく間違った行為」ではあるものの、ステルシングを性的暴行と判断することに異を唱える。

コンドームをつけない性交を拒否した相手と強制的に性交すれば強姦だ。だが、コンドームをつけると約束し、性交に合意した相手に対して、コンドームをつけないで性交した場合は、確かに相手を傷つけているが強姦ではないと説明する。「同意がないことと、状況をよく説明した上の相手の同意(インフォームド・コンセント)がないことは違う」

また、性的暴行は性行為そのものが問題になるのに対し、ステルシングは妊娠や性病感染の可能性といった性行為の結果が問題になると、違いも説明している。

各国は

ブロドスキ氏によると、米国内ではステルシングを取り上げた裁判例はないという。刑法、不法行為法、契約法といった既存の法律では不十分で、新しい法律によって被害者を救済することが必要だと論じている。

ロバート・グラッター医師によると、スイスの裁判所は2016年1月、性交中にコンドームを外した男に強姦罪の判決を下したという。

日本はどうか。現在の日本の刑法ではステルシングのみでは強姦罪にはならない。性犯罪に詳しい太田啓子弁護士はBuzzFeed Newsの取材に「適法な性行為の最中に女性の意思に反してコンドームを外しても、その後に暴行又は脅迫をして強姦したという事情でもなければ犯罪にはならない」と説明する。

現在、国会で性犯罪の規定を110年ぶりに見直す刑法改正案が審議されている。だが、ステルシングについては言及はない。性犯罪の処罰を巡って「日本は何周も後ろを走っている」と太田弁護士は嘆く。

また、ステルシングは「民事上の違法行為になる」可能性はあるが、「証明は容易ではない」と指摘する。

相次ぐ法案

米国内での議論の盛り上がりを受けて、ウィスコンシン州のメリッサ・サージェント議員(民主党)はアメリカで初めて5月、ステルシングを性犯罪とする州法案を提案した。

性的暴行罪に、ステルシングをした場合、正当な合意はない、という条文を加える。

サージェント議員はBuzzFeed Newsの取材に「これはよく起きていることだと知りつつあるところです。多くの人が自分だけのことだと思っていました」と話した。

この法案は、ペッサーリや子宮頸部キャップといった女性が使う器具も対象としている。

カリフォルニアでも

カリフォルニア州のクリスティーナ・ガルシア議員(民主党)もステルシングを強姦罪とする法案を提出した。性交中、意図的に、合意なく、コンドームを外したり、それに手を加えたりすることなどを強姦罪の構成要件に加えている。

「これは私の身に起きたことです。『性交は合意のものだ』と決めつけて、なかなか分かってもらえないのです」「力関係に起因することです。他人の体を所有していると思う人たちがいますが、そうではないのです」。ガルシア議員はBuzzFeed Newsに話す。

ただ、ガルシア議員もサージェント議員も、ステルシング被害者が裁判に持ち込むのは難しいと認める。同意の定義が曖昧なためだ。それでも動きはやめない。ガルシア議員はこう話す。

「難しいからといって、前進をやめるべきではないのです」

この記事は英語から編集しました。

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バズフィード・ジャパン アダプテーション・リポーター

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Brianna Sacks is a reporter for BuzzFeed News and is based in Los Angeles.

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