私立探偵のきみにある晩、ひどく取り乱した電話がかかってきた。

「もしもし、私はアリス・バーンズです。うちの犬が誘拐されたの! 警察は何もしてくれないわ! お願い、助けて!」

バーンズ夫人によると、犬泥棒は几帳面な筆記体で書かれた身代金を要求する手紙を残していった。きみはバーンズ夫人にすぐに来るように頼んだ。

到着したバーンズ夫人は、おびえて気が動転しているようだ。

バーンズ夫人は飼い犬の写真をきみに手渡した。名前は「ビューグル」という。

「今夜、誰かが家の中に入って来たんです。でも誰だったかは見ていません。私は2階で寝る仕度をしていて、家の中の明かりはほとんど消してありました」

「下の階でビューグルが吠えるのが聞こえて、それから玄関のドアが閉まるのが聞こえました。夫が仕事から帰ってきて、ビューグルを散歩に連れて行ったのだと思っていました…。夫の足音がいつもよりも大きいなと思ったことを覚えています。下に降りてみると、ビューグルの姿はなく、夫はまだ帰宅していませんでした」

その翌日、きみはバーンズ家で指紋を採取する。不審な指紋は見つからず、ビューグル以外に家からなくなったものは何もない。

アリスの夫、ウォレンを呼び出して話を聞く。ウォレンはジャーナリストであることがわかった。 「僕はあいつが大好きなんです。僕には犬アレルギーがあるのですが、それでもビューグルがいなくなって、寂しいですよ。昨夜は遅くまで新聞社で働いていました。最近は特ダネが本当に少なくて、皆、残業して記事にできそうなネタを探しているんですよ」

「昨夜、帰宅するとアリスがヒステリーを起こしていました。そこでようやくビューグルが誘拐されたことを知ったんです。誰か名乗り出てくれる人がいるかを確かめるため、今日の新聞でビューグルの失踪を記事にしてみようと計画しているところなんです。僕もアリスもこの件ですっかり打ちのめされています」

きみはバーンズ家の隣人、ノーマとも話をする。「あの犬はいつも騒がしいんです。おかげでもう何年も、美に必要な睡眠が十分にとれていなくて。だからと言って、誰かのペットを盗んでもいいなんて思っていないですよ。バーンズさんが旅行に行く時は、いつも私がビューグルのお世話をしているんだから。これまでずっと、ビューグルをとっても可愛がってきましたしね。夫妻に聞いてもらえればわかります。あの人たちは私を信頼しているはずです。私専用の合鍵だって持っているんですから」

その翌日、犬泥棒事件のニュースがラジオ番組で流れている。「ビューグルが消えた日の晩に、ビクトリー・ホテルの外でビューグルを見たという目撃者がいます」 きみはアナウンサーのヴァレリー・ミルトンから情報を得るため、ラジオ局を訪れる。

「実を言うと、その目撃者は私なんです。エスター・ラッセルとデロレス・スチュアートがその犬と一緒にいるところをほぼ間違いなく目撃しました。あの犬は公園でいつも見かけているので分かったんです。ご存知かと思いますが、エスターとデロレスは、ハミングバード・ダンスホールで歌っていますよ。私も以前、そのダンスホールでオーディションを受けたことがあるんですけど…エスターとデロレスがすでに採用されていたので、私は断られてしまいました」

きみは、ビクトリー・ホテルに立ち寄ってエスターとデロレスに面会を求める。2人を待つ間、フロント係にビクトリー・ホテルにペットを持ち込めるかどうか聞いたところ、ホテルにペットを持ち込めることがわかった。

「エスターと私には時間があまりないんです。今、ハミングバード・ダンスホールで歌う準備をしていて。エスターに質問がしたいなら、どうぞ。でも部屋の中には入らないでちょうだいね」

「私が? 犬好きでもないし、犬がいて何をすると? 一日中働いているんですよ。誰かがその犬を盗んだとしたら、それはきっとハミングバードでピアノを弾いているロレッタでしょう。ロレッタは手グセも悪いし、嘘つき。 本当に我慢ならない」

その晩、きみは「ハミングバード」に向かう。

きみは薄暗いクラブに足を踏み入れる。

ピアノのそばにいるロレッタを見つける。「犬のことなんか何にも知らないってば。数週間前に夫が出ていってしまって、そのことだけで頭がいっぱい。寂して、誰かに一緒にいて欲しくて……。失礼。そろそろ仕事に戻らなくちゃ」

近くのテーブルにいた男がきみとロレッタの会話を聞きつけて声をかけてくる。「アリスと俺は、昔付き合っていたんだ。その犬はまだ仔犬だった時に俺がアリスに買ってやったのさ。そのくらい彼女を愛していたからな。あいつはお礼のしるしに他の男と結婚しやがった。俺はいまだに立ち直れていないんだよ」

きみがタバコを吸いに路地に出ると、そこでは2人組が低い声で話しているところだった。近づいてみると、2人は同業の私立探偵だった。

「私たちもこの事件を追っている。あなたと違って、私たちは雇われてはいないけど、それは関係ない。謝礼金が出るのは知ってる? ずっとヨーロッパをこの目で見たいと思っているし」

「よく聞けよ。俺たちは、陸軍基地が犬を探しているという情報をつかんだんだ。どうやら基地で犬を訓練しては海外に連れて行っているらしい。まあ遠慮しないでその線を調べてみなよ。俺たちはもっと有力な手掛かりを追うつもりだからな」

その翌日、きみは地元の陸軍婦人部隊に所属する2人の隊員とアポが取れた。「あなた、本当に私たちがそんなことをすると思っているの? 厳しい時代ではあるけれど、そんなのただ馬鹿げていますね」

「へぇ。私の姉は、下宿屋を共同所有しているんだけれど、数週間前に、その下宿屋が強盗に遭ったみたいで、見張り用の番犬が欲しいようなことを姉が言っていたような。その下宿屋の住所を教えましょう」

きみは下宿屋の共同所有者、ポーレットとアニータの2人と会う。ポーレットは自信にあふれているように見えるが、アニータはやや落ち着きがない。「アリスは仲良しのお友達」と、アニータは言う。「ビューグルがすぐに見つかるといいですね」「ラジオを聴いてずっと経過を見守っているんですよ」と、ポーレットが言う。「でも、私は何も知らない。今ここにいる下宿人はベティーだけ。よかったら、彼女に聞いてみたらどう?」

「左側の一番手前の部屋。でも、他の下宿人の部屋には立ち入れないで下さいね。ここではプライバシーを尊重しているので」

きみはベッドの上で慎重に日記を書いているベティーを見つける。「私は今日まで町を離れていたんです」と、彼女は静かに語る。「ほらね、 まだスーツケースの荷ほどきをしているところで」

ベティーのスーツケースは床の上で開けっぱなしになっている。

「ごめんなさいね、でもこの辺で失礼しないと。今夜はデートの予定があるので」 きみは下宿屋を出て事務所に戻る。

すべての聞き取りが終わったところで、そろそろ最重要容疑者を決定する時がやってきた。

この記事は英語から翻訳されました。