3年間まともに眠ることさえできなかった……三つ子育児のリアルを母が語る
「10分寝たら夜泣きで起こされ、1時間かけて泣いている子を寝かしつけます。そして30分寝たらまた起こされ…。気が付いたら外は明るくなっていました」
我が家にはもうすぐ2歳になる娘がいます。子ども1人を育てるのに四苦八苦する毎日です。
そんなある日、三つ子を育てる母親が描いたマンガをTwitterで見かけました。

投稿主は、いとせみどりさん(@midori_ooo_)。2012年4月に三つ子を出産しました。
1人でも大変なのに、3人を同時に育てる生活とは一体どんなものなのでしょうか…? 三つ子育児の実態についてBuzzFeedが聞きました。
0歳のころの子育ては「記憶がない」
いとせさんは、産後の1年間半は両親のいる実家に滞在。日中はいとせさんと実母の2人で子育てにあたりました。
三つ子育児は、大人2人がかりでも大変だったと言います。
「ミルク、オムツ、寝かしつけ、ミルク、オムツ、お風呂、お着替え、寝かしつけ、大人の食事、掃除、洗濯、夜泣き、夜中のミルク。そして病院の検診、買い物…。
日々必死で過ごしていました」

0歳の赤ちゃんは、2〜4時間おきに授乳が必要です。1人あたりの授乳回数を1日8回とすると、3人合わせて1日24回。
当時のメモには、たえまなくミルクを与えている様子が記録されています。
「この頃の記憶があまりありません。ただ毎日大変だったとしか…」
ワンオペ育児は、24時間プレッシャーを感じながら
子どもたちが1歳半になると、いとせさんは自宅に戻りました。
当時、夫は長期出張中だったため、いとせさんは1人で三つ子の面倒を見なければなりませんでした。
その日々は「毎日のタスクの山をこなし、1日を終えるのに必死だった」と言います。
「朝起きたらミルクまたは離乳食、オムツ、お昼の寝かしつけ、家事、お風呂、夜の寝かしつけ…夜はまた夜泣きとの戦いです」

「10分寝たら夜泣きで起こされ、1時間かけて泣いている子を寝かしつけます。そして30分寝たらまた起こされ…。
気が付いたら外は明るくなっていました。そしてまた1日が始まります」
いとせさんが身体を休められる時間はほとんどありませんでした。
「3つの小さな命の責任が自分にある責任感やプレッシャーが24時間続きました。24時間、緊張状態なのです。
そのうえ寝不足が続き、正しい判断能力は失われていき、身も心も疲弊しました」
お出かけは、外に出るまでで一苦労
「まず出かける前の準備が大変です。
3人の機嫌をとりながら着替えさせ、オムツを替え。そしてバッグの中に3人分のオムツ、着替え、お菓子、お茶、タオルなどなどを準備して」
さらに、どの道を通るか、どこへ行くかのリサーチも必須です。


「ツインベビーカーが通れる道や場所を考えなければいけません。駐車場も広めのところを。トイレも、車椅子用の個室があるところでないと無理でした」
準備ができたら出発ですが、ここでもまた一苦労。
3人をベビーカーに乗せて駐車場まで移動し、3人をチャイルドシートに座らせ、ベビーカーを畳んで車に載せて…。
目的地に着くまでに多くのハードルがあります。
1人が泣くと、ほかの2人も泣き出す恐怖
いとせさんが特に気をつかったのは、「3人同時に泣かせない」ことでした。


おんぶに抱っこをしても、同時にあやすことができるのは2人まで。
1人が泣き続ければ、その声でほかの2人も寝付くことができません。
「そうならないように、全身全力で24時間気を張り詰めていていました」
長男と次男の夜泣きがおさまったのは3歳になってから。それまで、一度もぐっすり眠ることができませんでした。
「大変なら助けを求めればいい」と言うけれど
いとせさんは、苦しいときこそ助けを求められなかったと言います。
「苦しい!助けて!ってのは自分に自信がなかったらなかなか言えない事なんじゃないかって。
(自分が苦しかったときは)我慢が足りないせいだとか甘えてるせいだしとかずっと思ってて、だから強く助けてって誰にも言えなくて」
さらにこう続けます。
「SOSを出すのには、気力と体力が必要です。
特に多胎児育児は情報が少ないため、助けてもらうにはまず理解をしてもらうところから始めないといけません。
3人の命を守るのに必死で、毎日いっぱいいっぱいでギリギリな生活をしている中で、それ以上の気力と体力がもうありませんでした」
「話を聞く」ではなく「大人の手」がほしい
三つ子を育てながら、いとせさんが何度も願ったのは、「助けてくれる大人の手がほしい」でした。
「行政の方々や保育士さんなど、話を聞いたりアドバイスをくれる方々は何人もいました。
『何でも言ってくださいね!』と声を掛けてくれますが、本当に話を聞いてくれるだけ。正直、それでは役に立ちません。
だって、実際に助けてくれないんでしょう? うちに来てくれないんでしょう? 必要なのは人の手なんです」
自治体が運営する地域の子育て支援サービス「ファミリーサポート」もハードルが高かったと話します。
「まず電話をかけ、登録しに事務所へ行き、依頼の電話かけ、そして顔合わせが必要でした。そのたびに三つ子を連れて外出するのは大変です。
苦労して登録しても、1つの家庭に預けれられる子どもは1人までと言われたこともありました。3件の家まで三つ子をそれぞれ連れていけということでしょうか?」
公的な支援は「話を聞く」までが多く、その先のサポートが足りないと、いとせさんは感じています。
「直接家に来てサポートしてくれる仕組みがあれば、と思います。親が子どもと離れて、1人でホッとできる時間を作れるような。
そんな公的支援があれば、今も苦しんでいる多胎児の親たちが、どれだけ救わるだろうと思います」
三つ子が笑い合っている、そのとき初めて子育てが楽しいと思った
「子どもが3歳くらいの頃でしょうか。3人で笑いあっている姿をよく見るようになりました。
このとき子育てが楽しいと感じました」

「三つ子は常に遊び相手がいるのでいつも楽しそうです。
車の中でも、外でも、テレビの前でも、ゲームも、お風呂の中でも、寝る前の時間も、いつも3人でじゃれあっています。
喧嘩も多いのですがね(笑)」
2019年4月、三つ子はそろって小学校に入学。いとせさんはこうコメントします。
「小学生になったんだなーとしみじみ。笑顔いっぱいの小学校生活になりますように!」
取材協力:いとせみどりさん
ブログ「三つ子育児まんが」
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