愛は儚いものであることを証明する感動の物語13

    モノが語る、終わってしまった愛のかたち

    恋の終わりは、誰だってつらいもの……

    2006年、破局を迎えたばかりだったドラゼン・グルビシックとオリンカ・ヴィスティカは、4年にわたる二人の関係をしのぶために、「壊れた絆の博物館(Museum of Broken Relationships)」をオープンした。

    企画展では、世界中の匿名の人たちから寄せられた、関係が終わったあとも捨てられないモノたちを展示した。創設者の二人はその選りすぐりを、著書『The Museum of Broken Relationships: Modern Love in 203 Everyday Objects(壊れた絆博物館――203のありふれた品々に宿る現代の愛)』にまとめた。素敵な例を紹介しよう。

    4枚のCD

    Ana Opalić

    2008年5月~2009年1月10日
    アメリカ、ヴァージニア州リッチモンド

    「2008年当時、私は62歳で、彼は34歳でした。彼は私の探していた人ではなかったし、私も彼の探していた人ではありませんでした。

    でも、宇宙の扉が開き、私たちはそのなかへ踏み出しました。彼は魔法のような時間を与えてくれました。

    2009年1月10日、私は彼を手放しました。その魔法を終わらせたかったからではありません。始まったその日から終わりを迎える運命にあったこの関係を終わらせるには、それが最高の形だと思ったからです。

    私が死んだら、家族が遺品を整理するでしょうが、彼の痕跡が見つかることはないでしょう。『証拠』を残らず処分したからです。思い出は心のなかにしまってあります。でも、この4枚のCDだけは別です。彼が曲をまとめて、私にくれたんです。何か大切なものをあげたいから、と言って。自分の愛しているものを、私に贈りたいと思ってくれたのでしょう。彼は私に音楽をくれました。

    このCDを提供するのは、彼と、壊れたハートに、敬意を表したいからです。

    ありがとう!」

    「Mejor Sola Que Mal Acompañada(Better alone than in bad company:ひどい相手と一緒にいるよりは、ひとりのほうがマシ)」と書かれたタイル

    Ana Opalić

    1987年8月29日~2004年12月4日
    アメリカ、テキサス州ヒューストン

    「18年の結婚生活の果てに、夫は26歳の同僚と駆け落ちしました。その直後に、私はメキシコのティファナへ行き、このタイルを作ってもらいました。このタイルは日々、『ろくでもない連れといるよりは、ひとりでいるほうがマシ』だと思い出させてくれます。あのあと、私はひとりで息子ふたりを育て、非営利組織運営の修士号をとりました。このタイルを提供するのは、ほかの人たちが失恋と向きあい、自分の持っている力を、自分の思うように広げていくきっかけになればいいと思ったからです」

    溶けた携帯電話

    Erika Paget

    2009年~2013年
    アメリカ、マサチューセッツ州レキシントン

    「私はレキシントンでアパートを経営していました。自宅からほんの数ブロックの場所です。そこに住んでいたカップルは、しょっちゅう喧嘩をしていました。強制退去になったあとに、別れたのではないかと思います。あのふたりは、一緒にいてもあまり幸せではないようでした。退去後に部屋のクリーニングをしたとき、オーブンの中で、この折りたたみ式の携帯電話を見つけました。きっと、どちらかが相手への腹いせにそこに入れたのでしょう」

    空になった木製のラム酒ボトル

    Erika Paget

    2014年7月~2015年6月
    アメリカ、カリフォルニア州シャーマンオークス

    「このボトルのラム酒を飲みはじめたのは、ホテルの一室でした。ぱりっとした白いシーツに潜って、なんの変哲もない透明なグラスで。どんどん酔っぱらって、どんどん彼のことを知るようになって、どんどん幸せな気分になりました。このボトルを飲み終えたのは、1週間後、私の家のカウチでした。テーブルいっぱいのイタリア料理を注文していました。私たちは酔っぱらって、おなかいっぱいになって、また幸せになりました。ボトルが空になるころには、すっかり恋に落ちていました」

    クロスワードパズル

    Boris Cvjetanović

    人生のはじめ~2015年4月14日
    イタリア、ボローニャ

    「私の父は、2015年4月14日に亡くなりました。私は病院で父に付き添い、世話をしていました。父はいつも、このクロスワードパズルをしていました。最後のひとつは完成していません。父は愉快で、謎めいていて、一緒にいると心が安らぐ人でした。ちょうど、このクロスワードパズルのように」

    スパイスの効いたアーミッシュ風ピクルスの瓶

    Erika Paget

    2013年10月~12月
    アメリカ、ニューヨーク州ニューヨーク

    「生まれて初めて愛した(と思った)人へのプレゼントとして、これを買いました。彼は子どものころ、バスタブのなかで宿題していたことを話してくれました。最初のデートのときに本を1冊持ってきてくれました。そして、このピクルスが大好きだと言っていました。でも、これを渡すチャンスが来るまえに、彼からのメールの返事が来なくなりました」

    レディ・ランプ

    Boris Cvjetanović

    2010年7月~2012年9月
    カナダ、ユーコン準州ホワイトホース

    「私たちは、車に積めるだけのものを積んで一緒に東部へ引っ越し、数年間を過ごしました。この『レディ・ランプ』はうまく積みこめなかったので、大切にしていたいくつかのほかのものと一緒に、倉庫に置いていきました。実を言えば私のものではなかったのですが、結局は自動的に私のものになりました。戻ってきたのは私ひとりだったからです」

    カエル

    Ana Opalić

    36年間
    アメリカ、インディアナ州ブルーミントン

    「私が3歳のときに、母がいなくなりました。このカエルは、母がくれた数少ないクリスマスプレゼントのひとつです」

    髭剃りセット

    Boris Cvjetanović

    1987年~1996年
    クロアチアの首都ザグレブ

    「誕生日に、この髭剃りセットを彼女からもらいました。もう長いこと使っていませんが、彼女の思い出としてとってあります。

    私と出会ったとき、彼女は17歳でした。私は27歳で、妻と3人の子がいました。その10年後に私たちは別れましたが、私の彼女への愛の強さは、当時から変わっていません。彼女はその後結婚し、娘をひとり産みました。彼女がもう私を愛していないことを願っています。彼女が私の愛したただひとりの人だということを、知らずにいてほしいと思っています」

    スチール製の手錠のペンダント

    Erika Paget

    2008年5月18日~2011年12月27日
    メキシコ、メキシコシティ

    「彼女は3年半のあいだ、精神分析医として私を担当していました。もう私の治療はしないと言われた6カ月後、彼女が私を訪ねてきて、私たちはつきあいはじめました。

    私たちは1年半、一緒に暮らしました。

    このペンダントは、私たちの関係が結婚と同じものだという証に、彼女からもらったものです。私たちが別れたのは、彼女が同性愛者だということをどうしてもカミングアウトできなかったからです。

    別れたとき、私は22歳で、彼女は36歳でした。彼女はいま、男性と暮らしています。自分が同性愛者だということを、どうしても受け入れられないと言っていました」

    虫眼鏡

    Ana Opalić

    期間不特定
    フィリピン、マニラ

    「別れるまえに、彼女に記念としてもらいました。なぜ虫眼鏡をくれたのかはわからないし、彼女もその意図を説明しませんでした。ただ、彼女はよく、私と一緒にいるといつも自分を小さく感じると言っていました」

    小さな紙片

    Erika Paget

    2001年~2009年
    アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス

    「私はアーティストですが、ガールフレンドと一緒に暮らしていたころ、私が別の部屋で仕事をしていると、彼女はいつも私の注意を引こうと躍起になっていました。ある日、部屋で絵を描いていたら、彼女が入ってきて、小さな紙片を寄こしました。そこには『私に目を向けて』と書かれていました。別れてから2年くらい経って、それを見つけました。あれからずっと、車の小銭入れのなかに入っていたんです」

    野球のボールとアメリカ国旗の絵葉書

    Boris Cvjetanovic

    2010年4月15日~2012年の大晦日
    アメリカ、コネティカット州ケント

    「物質は、信じられないほど、気が遠くなるほど虚ろなものだと、何かで読みました。世界中のすべての原子の核と電子の間にある空間を取り除き、質量を圧縮したら、野球ボールくらいの大きさになるのだそうです。それをスポーツ好きのボーイフレンドに話したら、彼はこのボールをくれました。私はそのコンセプトをもとにアートプロジェクトを創作したいと思っていたので、それに使うように、と。私は4年のうちに夫と息子を相次いで亡くしていて、この宇宙を理解するための方法を探していました。そのボーイフレンドは妻を亡くしたばかりだったので、彼ならこの悲しみをわかってくれると思ったんです。でも彼が同僚の妻と寝ていると知ったときには、バットで性根を叩き直してやりたくなりました」


    Grand Central Publishing

    The Museum of Broken Relationships: Modern Love in 203 Everyday Objects』から抜粋 Copyright © 2017 by Olinka Vištica and Dražen Grubišić. Reprinted with permission of Grand Central Publishing. All rights reserved.

    The Museum of Broken Relationships』についての詳細情報はこちらから。

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan