「高齢者だけじゃない」新型コロナによる感染症が重症化した若者たちが警告

    新型コロナウイルス感染症に関する世界各国のデータは、70歳未満の多くの人々が重症化している実態を示している。イギリスで深刻な症状に陥った若者たち、そして現場の医師の声を取材した。

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    Daniel Leal-Olivas / Getty Images

    「絶対に、誰にも感染して欲しくありません」と、ケンブリッジの大学院生、ホリー・サザーランドさんはBuzzFeed Newsに語った。

    「私は24歳で、リスクの高いグループには属していませんでした。基礎疾患もなく、普段は健康そのものです」

    「こんなに重症になる原因なんてなかったはずなのに」

    新型コロナウイルスの感染リスクについては、70歳以上の人や、ほかに疾患のある人に対して、特に強い警告が出ていた。そのため、もし感染しても自分は重症にならないと考える若年層は少なくない。

    「自宅で簡単に対処可能」。英政府のメッセージで油断

    彼らがそう考えてもおかしくはない。

    イギリス政府のクリス・ホウィッティ主席医務官は約2週間前の記者会見で、高齢者や疾患のある人以外の大半は、新型コロナウイルスCOVID-19に感染したとしても、イギリスの国民医療制度NHSをまったく必要とせずに「簡単に」自宅で対処が可能であると述べた。

    「感染しても、まったく症状の出ない人もいる。感染したことにさえ気付かない」とホウィッティ主席医務官は説明した。

    「症状が出る人の中でも、その大半は軽症で、NHSに直接あるいは間接的にどのような形でも頼ることなく、自宅で簡単に対処ができる」

    国民を安心させることを狙いとしたメッセージは、ボリス・ジョンソン首相も繰り返していた。

    「ウイルスに感染する圧倒的多数の人にとっては、素早く完全に回復する軽度の病気だ」とジョンソン首相は語っていた。

    しかし、イギリスの事例や世界の他の国々からのデータを見ると、新型コロナウイルス感染症が重症化した若年層は、かなりいる。

    イギリスでこれまでに亡くなった422名(3月25日時点)の大半は、基礎疾患を患っていた。しかし、労働党下院議員でNHSの医師、ロゼナ・アリン=カーン氏はBuzzFeed Newsに対して、ロンドンの病院で集中治療が必要だった30代、40代の人たちを目撃したと述べた。

    アリン=カーン氏は、年齢ごとの入院患者のデータをさらに公表するよう政府に求めている。

    Supplied

    ホーリー・サザーランドさん(24)

    「誰かが肺の半分を盗んだかのような感じ」

    サザーランドさんは、自宅で症状が悪化し、救急に電話をかけなければならなかった。

    「私はここ6日間、Covid-19でとても具合が悪いです。まだ悪いまま」と、彼女はフェイスブックに書き込んだ。

    「火曜日の夜に咳と息切れの症状が出て、体調が悪くなりました。そこからすぐに悪化しました」

    「金曜日と土曜日は寝込んでいました。立ち上がるたびにめまいがして、意識を失うんじゃないかと心配だったから」

    「息が出来ず、咳が止まらず、ほとんど過呼吸のような状態でした。普通に肺に空気を入れることができなかったからです」

    「金曜日のある時点で、NHSオンラインサービスから緊急電話番号に電話をかけるようにアドバイスを受けるほどに症状が悪化しました。そして(非常に親切で非常に頼りになる)救急医療隊員が対応してくれました」

    「でも、横になっていても息が出来ず、息切れがあまりにひどくて一文を話しきることができなくなるまでは、入院はできないと言われました」

    「ベッドに座り、彼女(救急隊員)と話すのが肺にとってあまりに負担だったため、一文喋るごとにたっぷり30秒間咳をして喘ぐ私に対して、彼女はそう言ったのです」

    サザーランドさんの病状は良くなってはいるものの、完治はしていない。

    「現在、少しの時間机に座っていられるほど良くなりました。でも、しっかりと息をすることはできません。まだ咳も出ます」

    「誰かが肺の半分を盗んだかのような感じで、数分ごとに大きく息を吸い込んで、それ以外の時の浅い呼吸の代わりに、肺にしっかりと空気を送り込まなければなりません」

    「階段の上り下りは疲れます。5分以上喋ると息が切れ、咳が出ます。立ち上がると頭がくらくらします。座っているだけならなんとかできますが、それでも30分もすると疲れて、ベッドに戻らなければなりません」

    「咳のためにあばらが痛くて、横向きに寝ることができません。4日間も咳をしていて、喉が痛むため、時々血の味がします。薬はほとんど何の役にも立っていません」

    サザーランドさんはBuzzFeed Newsに対して、若い人はソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保に、より真剣に務めるべきだと語った。

    「コロナウイルスに感染した他の人と話した印象は、『私は例外/不運だった』というものでした。私が話した他の数人は、年齢は様々ですが、咳や熱が数日間続いて、それでおわりという感じでした」

    「けれど、誰も私のような症状に苦しむ危険を冒すべきでは決してありません。病院に行く必要はなかったけれど、本当に辛く恐ろしかったです」

    「このような事態を防ぐために、そして誰かに私のような症状を出させる可能性を回避するために、できる限り政府のアドバイスに従うべきです」

    英保健省、英国公衆衛生庁、NHSイングランドはいまだに、COVID-19による入院患者の年齢ごとのデータを公表していない。BuzzFeed Newsは当局に問い合わせたが、情報公開に同意していない患者がいるためだと説明を受けた。

    しかし、より包括的なデータを公表している国もある。それらの統計や病院の事例研究は、最もリスクの高いグループに属していない多くの人の症状も、「軽度や穏やか」ではないことを示唆している。

    「高齢者や慢性疾患患者だけの問題ではない」各国のデータが示す若年層の感染実態

    フランスが国境を封鎖した頃、重症患者300人のうち半数以上は60歳未満だった。

    Alberto Pizzoli / Getty Images

    ローマ近郊のカサル・パロッコ病院の医療従事者。

    パンデミックによりヨーロッパで最も深刻な打撃を受けたイタリアでは、死者の約95%が60歳を超えていた。

    しかし、ベルガモヴェネトミラノアブルッツォを含むイタリア全土の病院が、全体数から見れば少数だが、集中治療を受けている若い人々の事例を報告している。

    「30歳の患者も、30歳未満の患者もいます。数は少なく、もちろん比べものにはなりません。蘇生術が施された事例もあります」と、ミラノの病院の医師、マッシーモ・ガリ氏は、英ニュース番組、スカイ・ニュースに語った

    軽症患者も含むと、イタリアで陽性反応を示した人の約4分の1は50歳以下だ。

    オランダ集中治療医学会(NVIC)によると、オランダでは集中治療を受けている患者の約半数は50歳未満だ。

    ニューヨーク・タイムズは、アメリカで入院したCOVID-19の患者の40%近くが54歳未満であると報じた。

    3月23日、マイアミの病院に務める76人の救急医と看護師が、厳しい警告を発する公開書簡に署名した。

    「マイアミの緊急救命室で我々が目撃したことは、他のアメリカの都市で報じられていることを裏付けるものだ。若くて健康な人もCOVID-19によって深刻な症状を示している」と彼らは記した。

    「高齢者や慢性疾患患者だけの問題ではない。我々すべてにとって脅威だ」

    オーストラリアでは、集中治療を必要とする40代、50代の事例が報告されている。

    メルボルンの新聞ジ・エイジ紙は、重体のコロナウイルス患者の治療にあたる上級の医療従事者の発言を引用している。

    「大半は高齢者でしょうが、非常に深刻な症状に苦しむ少数の若い人たちも出てくるでしょう」

    軽症・無症状でも、感染を拡大させてしまう危険性

    軽症・無症状の若年層は、ウイルスの拡大に大きく寄与している可能性がある。

    企業と協力して幅広く検査を実施しているアイスランドでは、陽性反応が出た人の40%近くが40歳未満だと明らかになっている。

    今までに検査を受けた国民で陽性反応が出たのは約1%。その大半は症状が出ていなかった。

    アイスランドのデータは、他の国で見られる結果や既存の研究とおおむね一致している。流行が最初に発生したコミュニティーの1つ、イタリア北部の小さな町ヴォーでは、3300人の全住民に検査が実施され、3%が陽性、その大半が無症状であったと、研究者らは明かした。

    ドイツのロベルト・コッホ研究所のデータによると、1週間に16万件の検査を実施している同国では、大半の感染者が35〜59歳で、平均値は47歳だ。

    サイエンス誌に先週発表された研究では、コロナウイルスが確認された事例1件につき、コミュニティー内に5〜10名の検知されない感染者が存在する可能性が高いことが判明した。

    中国のデータに基づいてモデルをたてた科学者らは、こういった軽度で感染度合いの低い事例が、80%近くの新しい事例の背後にあると報告した

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    ロンドンのロイヤル・フリー病院の外に貼られた新型コロナウイルス警告の貼り紙。

    若いから病院に行かない方がよいのでは、と思ってしまう

    ロンドン北部に住む26歳の中等学校教員のサラさんも、新型コロナウイルスに感染して入院を余儀なくされた。

    疲れて、体調がすぐれないと感じた2日後、急に体調が悪化したと語る。

    「意識を失って、ソファーに倒れ込みました。吐いて、咳の発作があり、少しの間呼吸が止まりました」

    「体調が良くになったり、急速にひどくなったりの間を行ったり来たりしていました。3時間後、吐き気がしました」

    「けど立ち上がったとたん倒れてしまい、また意識を失いました。意識を取り戻して、息をまたし始めるのに苦労しました」

    自分は若く、リスクも高くないことから、病院には行かない判断をした。

    「病院に行くべきかどうか、分かりませんでした。大切なリソースを無駄にすることになる気がしたのです。自宅で対処できるからと、家に帰らされるかもしれません」

    「要するに、歳をとっていて対処できないか、若くても、死んでしまうくらい常に喘いでいたら病院に来るように私たちは言われていたのです(医療ヘルプライン、NHS 111から引用)」

    その晩、サラさんの体調はさらに悪化した。

    「本当にひどい状態でした」

    そこで彼女の恋人が、ロイヤル・フリー病院へとサラさんを連れて行った。新型コロナウイルスの検査を受けたところ、陽性反応が出た。

    「私は二次性上気道細菌性疾患にもかかっていたのですが、軽度だったため、静脈注射で治療を受けました」と彼女は語った。

    「脱水症状がひどかったので、水分をとるように指導されました。腎臓の機能が低下しているので、今は自宅にいて、24時間に水を4リットル飲まなければいけません」

    現在、体調は回復し始めているそうだ。

    「これは誰にでも起こり得る。自分勝手にならないで、家にいて!」

    事例を検証すると、イギリス中の病院で同様の事態が起こっているようだ。28歳のライアン・ヴァン・ウォーターシュートさんは、COVID-19の感染症から生じた合併症でピーターボロー・シティ病院に10日間入院した後、メディアの取材に応じた。

    This is me last week a healthy 28 year old no prior medical issues in hospital fighting Corona Virus leading to Pneumonia and Sepsis. Luckily this weekend I was discharged and allowed to return home. It can happen to anybody don’t be selfish. Please stay home! #COVID19 #COVIDー19

    ライアンさんのツイート。

    「先週の僕。28歳、基礎疾患もない健康体だったけど、肺炎と敗血症を引き起こした新型コロナウイルスと病院で戦っていた。幸運なことに、週末退院して家に帰ることができた。これは誰にでも起こり得る。自分勝手にならないで、家にいて!」

    「私はいつも健康で、元気でした。それが最も大きな衝撃でした。0から100に、ものすごい速さで悪化しました」と、ライアンさんはBBCに語った。

    「陽性反応が出たときには、恐ろしかったです。ひとりっきりで死んでしまうんだと思いました...人生で最も恐ろしい瞬間でした」

    普段は健康な36歳の看護師、アリーマ・ナスリーンさんは、ウォルソール・マナー病院で人工呼吸器につながれている。

    「どれだけ危険なのかみんなに知って欲しい」と、彼女の姉、カジーマさんは地元タブロイド誌バーミンガム・メールに語った。

    「私の妹は36歳で、普段は健康で元気です。人々は事態の深刻さを理解していません。彼女は若いのです。リスクがあるのは高齢者だけではありません」

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    労働党下院議員で医師のロゼナ・アリン=カーン氏。

    若年層にも感染リスクの警告、そして年齢層ごとのデータの公表を

    労働党下院議員で医師のアリン=カーン氏は、現場を助けるため所属病院の事故・緊急病棟に戻った

    BuzzFeed Newsの取材に対し、ロンドンの病院では集中治療を必要とする若い患者が見られると警告した。

    「最も恐ろしい側面は、高齢者と併存疾患を持つ人だけ(にリスクがある)と人々が信じているという点です。本当はそうではなく、ウイルスは選り好みしないのです」

    「もちろん、高齢だったり、免疫不全であれば、体がウイルスに対処するのはより困難ですが、セント・ジョージ病院では、30代の人々も集中治療を受けています」と彼女は語る。

    「昨日シフトに入ったとき、基礎疾患の無い40代の人たちがいました。これが恐ろしいところなのです」

    アリン=カーン氏は、政府がなぜ若い人に対してリスクについてもっとはっきりとした警告を発していないのか「困惑している」と話す。

    ウイルスがどのように若い人、そして様々な年齢層に影響を与えているのかについてのデータをより多く公表するよう、彼女はイギリス政府に求めた。

    「ウイルスが人々にどのように影響を与えるのか、毎日新発見があります。私たちが見つけた新情報に応じて、政府はメッセージの対象を考えるべきです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。