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ジェンダー平等を掲げる政治家のリアルを、史上最年少の女性市長が語る

「通院しなければならないし、9歳の子どもを育てています。生理だってあります。そういう市長がどんな働き方をするのか。すべてあけっぴろげに話しています」

「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ。時代遅れって感じ」

テレビ朝日のニュース番組「報道ステーション」は3月24日、番組のCMでこのような表現をしたことについて、「意図をきちんとお伝えすることができませんでした」などと謝罪し、CMを取り下げた。

2020年4月に、36歳0カ月で史上最年少の女性市長となった徳島市長の内藤佐和子さんは、「ジェンダーギャップの解消は、政治家の使命です。政策に掲げることを『時代遅れ』などといえるような段階ではありません」と話す。

政治と経済の分野で底上げを

内藤さんは3月25日、東京都内で、徳島市とMakuake(マクアケ)の包括連携協定の締結に関する記者発表イベントに登壇した。

Makuake」は、商品や体験の開発資金を募りたい企業と、それを「応援購入」という形で支援したい人たちをつなぐ、産業支援型のプラットフォーム。

徳島市は、市内の中小企業や女性経営者らが「Makuake」を通して商品開発や販路拡大をしやすくなるよう、連携協定を結んだ。

内藤さんとマクアケ共同創業者の坊垣佳奈さんは同い年で、それぞれ市政と企業のトップの立場にある。坊垣さんは、ジェンダーギャップを解消する必要性を、このように語った。

「ジェンダーギャップ指数が153カ国中121位の日本で、特に指数が低いのが政治と経済の分野です。意思決定層に女性を増やしていくことで、この2つの分野の底上げをしていけたら、空気が変わっていくのでは」

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」ではなく

内藤さんによると、徳島県内の社長に占める女性の割合は11.0%で、全国2位(2020年帝国データバンク)。

県経営者協会、県商工会議所、徳島経済同友会の3つの経済団体のトップはいずれも女性だ。

「徳島には『阿波女』という言葉があります。古くから藍染め産業が盛んで、働きもの、しっかりものの女性たちのことをこう呼んでいました」

内藤さんが市長に就任してからは、市政でもジェンダーギャップの解消を推進してきたという。

消防局、教育委員会などで女性の登用を進め、国との職員の人事交流でも女性に機会を与えた。市役所の部長級はほとんど55歳以上の男性が占めていたが、初めて女性部長が誕生した。

「男性を引き上げないということではなく、女性にも機会を与え、フラットに引き上げたいのだ、ということを初めから言ってきました」

「女性は、子育てなどで一時期、職場を離れることもありますが、それによって機会が閉ざされたり、飲み会に参加できないから情報が入ってこなかったりといったことがあります。いわゆるオールド・ボーイズ・ネットワークに入れないから機会が失われるというのは、ちょっと私は違うと思っています」

政治分野には本当に女性がいない

マクアケは、全社員の女性割合が45%、管理職の女性割合が47%、常勤役員7人のうち女性役員が3人いる。

坊垣さんは「社員の女性割合が増えても、意思決定層に女性がいなければ結局、マーケティング戦略で女性の声が聞き入れられなかったり、女性が働きやすい職場の制度づくりが進まなかったりする実態があります」と話す。

政治分野においてはそもそも女性の人数が少なく、内閣府の男女共同参画局によると2020年7月現在、都道府県知事は2人、政令指定都市の市長は20人中2人、市区町村長においては32人で、わずか約2%だ。

「全国市長会でも県市長会でも、どこに行っても女性がいません」と内藤さん。

「徳島では史上初めての女性市長だったので、秘書は女性がいいのか男性がいいのか、というところからのスタートでした。出張のときに同じホテルに泊まるのはどうなんだとか、そんな話からです。恋愛や不倫のゴシップが飛び交うこともあります」

報道ステーションのCMが、「ジェンダー平等をスローガン的に掲げる政治家」を「時代遅れ」と表現したことについては、真の意図や背景はわからない、としながらも、こう語った。

「特に政治分野においては、本当に女性がいないので、古くないですよ。時代遅れって何?という感想でした」

女性市長の働き方を見せていく

政治分野での女性の台頭は必要。議員だけでなく、首長も本当に少ない。意思決定するところにもっと当たり前に女性がいることが大事。 今の状況を普通と思わず、私たちがアップデートしないといけません。時代を作るのは私たち1人1人。 https://t.co/7HjcA90Tgc

Twitter: @sawacom0327

内藤さんは、20歳のときに難病の多発性硬化症を発症し、いまも通院を続けている。

「6週間に1回は病院に行かなければならないし、9歳の子どもを育てています。生理があるので、体調が優れないことだってあります。そういう市長がどんな働き方をするのかを私自身が見せていくことが大事だと考えて、すべてあけっぴろげに話しています」

「女性活躍推進の研修などをするだけではなく、女性市長として、日々の会話の中で相互理解を深めるよう努めながら、引き続きジェンダー平等を推進していきます」