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なぜ社員がお互いの年齢を明かさないのか。ある社長の思い

「フラットな組織風土」をめざす背景には、法律よりも高い倫理基準があった。

上司も部下も、全員「さん」をつけて呼ぶ。隣に座る同僚の年齢を知らない。

「VISA」カードで知られるクレジットカード決済大手「ビザ・ワールドワイド・ジャパン」の社内では、不必要に同僚に年齢を尋ねることはご法度だ。

「年功序列とは正反対の組織ですね。ハラスメントが起こりにくい仕組みになっています」

ダイバーシティ推進のためのビジネスカンファレンス「MASHING UP」のトークセッションの一つ「ゼロハラへの道」で11月30日、同社の安渕聖司社長が語った。BuzzFeed Japanは「MASHING UP」にメディアパートナーとして協力しており、筆者もパネリストの一人として登壇した。

性別、年齢、国籍......あらゆる属性で差別しない

提供写真

モデレーターの小島慶子さん、安渕聖司さん、松中権さん(左から)

ゼロハラとは、あらゆるハラスメントをなくすために行動を呼びかけていくプロジェクトで、11月20日に発足した。呼びかけ人であるエッセイストの小島慶子さんと、グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんも、この日のトークセッションに参加した。

企業はどのようにハラスメントをなくせばいいのかという問いに、ビザの安渕社長は、自社の取り組みについて語った。

「まず、ハラスメント禁止は大原則です。人種、国籍、性別、年齢、性的指向、妊娠しているかどうかなど、さまざまな属性によって社員を否定したり差別したりすることは、あってはなりません」

男女雇用機会均等法は、性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない、としているが、ほかにもさまざまな属性によってマジョリティとマイノリティ、上下関係や権力関係が生まれ、ハラスメントは起こりうる。

#WeToo Japanのサイトにハラスメントに関する解説ページを制作した松中さんは、このように強調した。

「どこからどこまでがハラスメントなのか、とよく聞かれますが、本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり尊厳を傷つけたり、不利益を与えたりする言動や行動のことを指します」

能力と属性は関係がない

#WeToo Japanサイトより / Via we-too.jp

さまざまな場面でハラスメントが起こりうる

安渕さんはこう話す。

「ハラスメントの根底には、自分はそういうことを言ってもいい、と感じてしまうような上下関係や権力関係、マジョリティとマイノリティを区別する意識が隠れていることが多いです。しかし会社としては、どんな属性であろうと、優れた能力をもった人に世界中から集まってもらい、そんな人たちに自分の力を100%発揮してもらいたいのです」

「もう一つ、ハラスメントを恐れて属性を隠そうとすることもマイナスです。マジョリティのふりをして生きなければならないのは、かなりのエネルギーが必要です。みんなが過ごしやすく、みんなが自分の力を存分に発揮でき、日曜日の夜になると、『明日からまた出社できるんだ』と喜べるような会社を目指さなければなりません」

そこでビザでは、ハラスメントの禁止にとどまらず、ハラスメントを見かけたときの対処法の周知や、ハラスメントが起きにくい環境整備にも力を入れているという。

BuzzFeed

「ひょっとしたらハラスメントかもしれない、これはおかしい、と思うことがあれば、みんなが声をあげる。社員には報告の義務があります。そして声があがったことに対しては、会社はきちんと調査する義務があります」

「声をあげやすくするため、完全に匿名で相談できるシステムや、報復禁止ルールがあります。犯人捜しも禁止で、『犯人はお前だろ』ということが新たなハラスメントになりかねませんから、そこは徹底してやっています」

無意識バイアスを変えるには

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モデレーターの小島さんは、自身が以前、ラジオ番組でゲストの容姿をいじって盛り上げた経験を打ち明けた。

「当時はそれを洗練されたコミュニケーションだとさえ思っていましたが、いま考えるとぞっとします。どうしてもやらなきゃいけないことではなかったし、視聴者には不快に思った人もいたかもしれません」

「私はハラスメントをされたことも、してしまったこともあり、傍観者として笑っていたこともあります。誰しも自分の中に、その三者がいるのではないでしょうか。そのことを悔いてハマグリのように口を閉ざしてしまうのではなく、悔いているからこそ『もうやめよう』と声をあげたほうが、空気は変わっていくはずです」

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ビザでは年1回、eラーニングによってアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を自覚するトレーニングを実施している。ビジネスコミュニケーションのビデオを見て、行動や言動のどんな点が不適切かを話し合うというものだ。

安渕さんによると「誰にでも偏見の刷り込みはある」というところから、指導をスタートしているという。

「大事なのは、どのように行動を変えていくかということです。行動を変えることができる人は、自分には偏見がないから関係ないという人ではありません。自分にも偏見があるかもしれないから直していこうと思える人です」

発言の意味を考える

ビザの社員には「Visa Leadership Principles」という行動基準があり、法律以上の高いコンプライアンスにのっとって行動することが求められている。

「ハラスメント行為や高圧的な物言いが報告されると、評価はマイナスになります」と安渕さん。

しかし、先に述べたようにハラスメントは本人の意図とは関係なく、相手を不快にさせたり傷つけたりする言動を指す。このことから #MeTooを「一方的な告発」だとして批判する動きもある。

「何気ない発言によって評価が下がるかもしれないとなると、萎縮したり窮屈に感じたりする人もいるのでは」という小島さんの質問に対し、安渕さんはこう答えた。

「そもそも、なんのために発言するのでしょうか。会社やチームのみんなが元気に明るく働けるようにするためですよね。自分の言いたいことを言うことがすべて正しいわけではありません」

「言いたいことを言う自分は、果たしてみんなの役に立っているのか。ひょっとしたら役に立っていないかもしれないのではないか。みんなポジティブに仕事ができるようにするために、自分は会社で何をすればいいのというところに立ち戻って考えてみるとどうでしょうか」

さらに、ハラスメント対策の目的は、個人の評価を下げたり否定したりするためではないことを強調した。

「こうした対策をしていると、ハラッサーの傾向がある人はわかってきます。そういう人は、行動や発言を変えてもらうよう個別に指導していきます。人格を全否定するわけではなく、改善できる機会を与える。改善したかどうかもチェックする。このように指導したら言動が改善したという実例が出てくることで、全体をよくすることにもつながるのです」

BuzzFeed Japanでは2017年からのハラスメント報道をこちらにまとめています。


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