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休校中、PTAは何をしているのか。「すべての子どものための日本最大の団体」の活動は

長引く休校中、子どもたちの学習の機会や権利を守るため、オンライン授業の導入をはたらきかけている保護者たちがいます。もともと学校には、保護者と教員による組織があるはずなのですが......

学校の臨時休校に伴い、PTAの活動も休止、もしくは開店休業状態であるところが少なくない。

例年なら4月から5月にかけては、新年度の委員を決めたり、活動内容の引き継ぎや分担をしたり、年会費を徴収したりと、活動が多く話題が盛り上がる時期だ。

しかし今年は、役職をもって活動している人でなければ、保護者がPTAのことを気にかける機会がない状況が続いていた。

保護者が知らない要望書のわけ

時事通信

緊急事態宣言が解除された愛知県では、分散登校が始まった(5月18日)

そんな中で5月2日、PTAの最上部団体である「日本PTA全国協議会(日P)」が、9月入学について慎重に検討するよう求める緊急要望書を文部科学省に提出した、という報道があった。

PTAに詳しいライターの大塚玲子さんはYahoo!ニュースの記事で、9月入学については保護者の間でも意見が割れていることを指摘。「そもそも日Pは、PTA会員に意見をたずねたことがあるのでしょうか」と問題提起した。

Twitterでは「そんなアンケートは回ってきていない」「なぜいま団体として要望するのか」などの意見があった。

どのような合意形成のプロセスで、緊急要望書を提出することになったのか。BuzzFeed Newsが日Pに尋ねたところ、理事の一人が電話取材に応じた。

「日Pは、理事を全国各地の協議会から選出しています。その理事の間で、オンラインで要望書の文面をやりとりし、同意を得ました」

各学校のPTAには、上部組織として市区町村レベルのPTA協議会(連合会)があり、さらにその上に都道府県レベルの協議会(地方協議会)がある。その上に日Pがあるため、PTAの全体像はピラミッド型で、会員約800万人という日本最大の社会教育関連団体を構成している。

この縦の連合に加入していないPTAも一部にあるが、PTAが全国組織であることを知らない保護者もいる。保護者が支払うPTA会費に含まれるわずかな金額が、上部団体に納める負担金となっている。

「入学式は桜の時期に」

日本PTA全国協議会

PTAの組織図(日本PTA全国協議会ホームページより)

緊急要望書は、「突然の9月入学に関する議論の高まりは、子どもたちに更なる不安を与え、我々保護者にとっても多くの戸惑いを生むもの」として、学校現場への負担、部活動の大会と兼ね合い、社会と学校の始期のズレ、入学式や卒業式を桜の時期に合わせられない、など9項目の懸念点を挙げている。

一方で、休校中の子どもたちの学習については、このように述べている。

現下の状況においても最善の学びを提供しようと尽力してくださっている学校の先生方のご努力と熱意が、これ(注:9月入学の議論の高まり)により失われてしまうことも懸念されます。

むしろ今は、学校休業期間における子どもたちの学びの保障、心と体のケア、感染防止対策を徹底した上での学校再開、子どもたちに不公平が生じないよう入学試験の弾力的な取扱い等に予算と時間と労力を費やし、最大限の力を尽くしていただくことが必要です。

要望書では、公立学校でオンライン授業の導入が進んでいないことや、家庭によって学習環境に差があることには触れられていない。

「子ども達の心身の健やかな成長を願い、教育環境の向上と社会教育及び家庭教育の充実、発展のために積極的に活動を展開しています(要望書より)」という日Pが、休校期間中、どのように積極的に活動を展開しているのかは、要望書からは読み取れない。

取材に応じた理事は、このように語った。

「さまざまな活動の変更の対応で、非常にバタバタしています。日Pから各地の協議会や各PTAに、休校期間中の活動について指示することはしていません。各PTAの活動内容についても情報収集中であり、現時点では把握できていません」

では、PTAは何をしているのか

一部の学校では、入学式は短時間で済ませたものの、その後PTAの委員決めのために保護者が三密の状態で体育館に集まり、長時間の話し合いをしたというケースもあった。

PTAは、ボランティアでありながら強制力や保護者の負担が大きいことから、そのあり方や活動の見直しがたびたび議論になっている。

活動内容は基本的に前例踏襲であるため、休校で授業や行事がなく、前年度からの引き継ぎもできない状態では、できる活動がない、もしくはする必要がないということで、休止状態となっているPTAは少なくない。

「いま動かないと存在価値がない」

Recep-bg / Getty Images

(写真はイメージです)

「こういうときにこそPTAが動かないと、PTAが存在する意味はないんじゃないか」

そう語るのは、川崎市立下沼部小学校で、昨年度のPTA会長をつとめた川村祐正さんだ。

「この未曾有の事態で、子どもたちのために何ができるかを考えたら、先生と保護者が協力してできることはおのずとわかってきます。ここで動かないPTAは、存在価値がないと思われても仕方がないと思います」

下沼部小学校は、ここ数年でタワーマンションが相次いで建設され、子育て世帯が急増した武蔵小杉にある、約1000人規模の学校だ。

ここのPTAは、保護者に加入の意思を確認しており、非加入の家庭であっても子どもへの対応を差別しないと決めている。

川村さんは息子の卒業を控えた3月、岐阜県でPTAの発案でオンライン教室が実現したことをニュースで知り、下沼部小でもできないかと考えた。

校長先生に記事をメールで送り、保護者たちからも話を聞いた。休校中に子どもの課題を見ながら朝昼晩の食事をつくり、そのうえ仕事もしなければならない。家庭内がぐちゃぐちゃで、親子ともにストレスが限界だという悲痛な声が上がった。

そこで川村さんは4月からも現役員と連携し、4月末にPTAの連絡メールで、各家庭のオンライン環境についてアンケートを実施した。その結果、オンライン環境はすでに整っているとの回答が99.5%を占めた。

「公立の学校は、家庭のWiFi環境やデバイスが平等でなければオンライン授業には踏み切れないとなってしまいがちです。環境が整っている家庭がこれだけ多いということで、まずはPTA主催にすればできるのではないか、と考えました」

「担任の顔が見たい」が最多

また、オンラインで学校とつながったら何をしたいかというアンケートの質問には、最も多かった回答が「担任の先生の顔を見たい」だった。

質の高い授業や綿密なカリキュラムよりも、休校中でも学校とつながっていたいと考えている保護者が多かったのだ。

そうした保護者や子どもたちの思いは、先生たちの背中を押すのではないか。川村さんはそう考え、オンライン会議システムを使って校長らにアンケート結果をプレゼンした。

次に学校を訪れると、校長室に簡易の「撮影コーナー」ができていた。整っていなかった校内のオンライン環境も、少し改善されていた。

5月中旬には、PTA主催による「オンライン交流会」が実現した。各学年ごとに担任らが参加して、子どもたちと会話を交わした。PTA会員かどうかに関わらず、約7割の家庭が参加した。

「私が司会をしたのですが、先生が画面に登場すると、子どもたちの表情が途端に明るくなるんです。今後も改善しつつ、継続してできればと思っています」

毎朝30分の読み聞かせ会

提供写真

東京都内の公立小学校で開催されているPTA主催の朝会では、お絵かき遊びもある

東京都内のある公立小学校でも、PTAがオンライン会議システムによる朝会や読み聞かせを実施している。

昨年度からPTA会長をしている女性は、こう話す。

「学校によるオンライン授業は、設備的にも体制的にもすぐには無理だろうと想像できました。休校が長引くだろうと考えたので、ひとまず自分の娘のクラスを対象に、ボランティア活動として個人的にオンラインでの読み聞かせを始めてみました」

試行錯誤しながら進め方や時間配分、私語のコントロールなどのテクニックを身につけたうえで、5月の連休明けまでの休校が決まった時点で、女性はPTA役員に、オンライン読み聞かせをPTA本部主導で全校に展開することを提案した。

現在は平日の朝30分間、毎日およそ100人の子どもたちが参加している。保護者のもつ特技を生かし、読み聞かせだけでなくお絵かきやクイズなど、内容を工夫している。先生が参加することもある。

「もともと完全任意のPTAで、運営も合理的なので、必要だと思ったことはすぐ実現できる体制があります。活動を強制するような旧来型のPTAでは難しいのかもしれません」

「要望を出すという発想がそもそもない」

前出の大塚さんは、PTAが動く難しさがある、と指摘する。

「ICT活用やオンライン授業の実施を求める保護者有志の動きは活発化していますが、PTAとして学校や教育委員会に要望したという例はあまり聞きません」

「PTAは、学校や教育委員会の意見を忖度しがちなことや、基本的に上意下達の一方通行で会員の意見をくみ取る仕組みがないため、要望を出すという発想がそもそもないことなどが理由です」

とはいえ大塚さんは、旧来型のPTAが積極的に教育活動にもの申していくことにはリスクも感じているという。

下沼部小学校や前出の小学校のように、PTAの加入は任意で、すべての子どものための活動であるという前提が共有されているPTAは少数で、多くの旧来型のPTAは強制力や同調圧力が強いからだ。

「教育委員会に要望する力があるからPTAに加入すべきだとか、非会員の子どもはオンライン授業に参加させないといった、同調や排除の方向になることを心配しています」

「そのうちPTAが何か動いてくれるだろう」という期待から、保護者が思考停止に陥り、自発的なアクションを封じてしまう可能性もあると言う。

「いま、すべての子どものためにできることを、大人たちが考えるのは大切です。ただ、それをすべて"現状のPTA"で担うべきかというのは、これを機に考え直したほうがいいのではないでしょうか」

運動会が延期になるなど学校行事の予定もたたない状況で、前例踏襲の活動しかしてこなかったPTAは、これからどう動くのか。今だからこそ必要な活動にシフトすることはできるのだろうか。

BuzzFeed Japanは、PTAについて継続的に取材しています。ご意見や体験談は、japan-report@buzzfeed.com にお寄せください。



Contact Akiko Kobayashi at akiko.kobayashi@buzzfeed.com.

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