10代でも直面する可能性がある「早すぎる妊娠」「デートDV」「性的同意」について、若者は自分ごととしてどのように考えているのでしょうか。アンケートの結果が公表されました。
アンケートは、国際NGOプラン・インターナショナルで活動するユースグループが、同NGOアドボカシーチームと協力して実施。2020年4〜5月、15〜24歳を対象にインターネットで実施し、544人が回答しました。
ユースグループのメンバーは、日本国内のジェンダー課題への啓発活動などに取り組む中で、ジェンダー不平等や偏見から起こる性暴力や妊娠など、女の子や若い女性が大きな影響を受けていることに注目し、意識や実態を調べることにしたといいます。
1.妊娠した女子高生は「かわいそう、たいへんそう」

妊娠した女子高生にどんなイメージをもっているかを聞いたところ、「かわいそう、たいへんそう」が322人で最多、「悪いことをしているイメージ(みだら、ふしだらなど)」が90人、「なんとも思わない」が80人、「幸せそう」が31人と続きました。
自分や身近な人が望まない妊娠をした場合に、相談先が思いあたると答えたのは、55.2%。女性は母親、男性は父親をあげた割合が高く、同性の親に比較的、相談しやすい傾向が見えました。

ただ、日ごろからパートナーや家族と避妊や妊娠について話すことができているかという質問では、「まったくできていない」(30.0%)と「ほとんどできていない」(25.6%)を合わせると過半数となり、「少しだけできている」(26.7%)「十分にできている」(17.7%)の合計を上回りました。
2.「デートDV」は知っているけど話さない

交際相手から不快な言動を受けたことがあると答えたのは84人で、交際相手がいる・いたことがあると答えた人の22.4%でした。
そのうち67人(79.8%)が女性で、うち19人が「望まない性行為を強要された」と答えました。不快な言動としては他に、モラルハラスメントや、容姿の否定、浮気、暴言、暴力などがあげられました。
交際相手から、身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力(バカにされる、無視される)、社会的な暴力(束縛される)、経済的な暴力(デートの費用をいつも払わされる、借りたお金を返さない)、性的な暴力(望まない性的な行為を強いられる)をされることは「デートDV」といわれています。
内閣府の2017年の調査では16.7%が、交際相手からのこうした暴力の「被害経験がある」と答えています。今回のアンケートでは、「デートDV」という言葉を聞いたことがある人は71.3%。学校で習ったという人は42.5%でした。

同NGOは、「デートDVという言葉の認知度は、女性より男性のほうが低い結果となりました。男女別の教育カリキュラムになっていること、あるいは男性はデートDVに関する啓発を受ける可能性が低いことが推察されます」としています。
「デートDV」が普段の話題になることはあまりないようで、話すと答えたのは8%。ほとんどが友達との話題にのぼるということでした。
「学校などで教えられることによって徐々に認識が高まっている一方で、暴力を身体的や性的なものととらえている人が多く、精神的、社会的、経済的な暴力まで認知していない人が見受けられました」(同NGO)
いわゆる「DV防止法」は2013年の改正で、配偶者からの暴力に加え、同居している交際相手からの暴力も対象になりましたが、同居していないパートナー間での「デートDV」は対象ではありません。
同NGOは「法の適用範囲の拡大や、迅速で強制力のある措置が必要」としています。
3.性的同意をとるのは「恥ずかしい」

「性的同意」について知った場所や機会としては、多かったものから「高校の授業」(166人)、「中学校の授業」(155人)、「インターネット」(132人)ーーとなりました。
性的同意の解釈について、自由回答では「性的な行為の前に取るものだ」と答えた人が最多となりました。次に多かったのが、パートナーとの行為全般や、パートナーを尊重して良い関係を築くためのものだという、広く解釈した意見。
一方で、「感染症とアレルギーの確認」など、明らかに誤った解釈も複数ありました。

アンケートでは、性的同意を取るというのはどういうことかを、京都市男女共同参画推進協会と、性的同意の大切さを伝える団体「Genesis(ジェネシス)」が作成したチェックリストをもとに、聞いています。
このチェックリストでは、一つでもあてはまると性的同意が取れていないとしていますが、「家に泊まるのは、性行為をしてもいいというサインだ」、「付き合っていれば、性行為をするのは当たり前だ」には、それぞれ回答者の10%以上がチェックをしていました。
「他にも、キスをする、クラブへ行く、イヤと言わないなどの言動が、性行為をしてもよいというサインである、という考えを持っている人が、いまだに多いこともわかりました」(同NGO)

ただ、93.1%の人が「性的同意を実践している、または、実践しようとしている」と答えていて、その理由は、「相手の心と体を尊重するため」(433人)「相手の気持ちを知りたいから」(224人)「習慣として」(74人)「取らなければいけないと教わったから」(73人)ーーと続きました。
性的同意を取るうえで感じる壁としては、「恥ずかしさ」が255人と最も多く、女性回答者の56.0%、男性回答者の65.8%となりました。続いて「雰囲気を壊す」(220人)、「教わっていない」(42人)と続きました。同NGOは「性について話すことのタブー意識が見受けられる」と分析しています。
「同意を取ることが重要だとわかっていても、性的同意を話題にすることが恥ずかしいという認識を持っているため、 実行に移しにくいようです」
「性のタブー意識をなくす」

「デートDV、性的同意については学校で学んでいる人が一定数いるにもかかわらず、知識に差が生じていたり、当事者性を持てずにいたりします。タブー意識を払拭できていないという現状が見えました」
こうしたアンケート結果を受け、同NGOユースグループは以下のような提言をしています。
1)タブー意識をなくすため、ユース世代が安心してジェンダー課題について自由に語り合うことができる場所、プラットフォーム、SNSサービスなど
2)特に認知度に男女差があるデートDVや性的同意に関する教育機会の拡充
3)ユース世代が相談しやすい環境整備
4)メディアによる問題提起や、固定観念を助長させない表現を意識した発信
「若年妊娠、デートDV、性的同意の3つの課題について正しい知識をもち、実践できるようにするためには、教育とメディアの役割はもちろん、ジェンダー課題について自由に語り、学び合い、課題解決を議論する場を設けていくことが必要です」