滋賀県大津市で5月8日午前10時15分ごろ、車2台がぶつかる事故があり、散歩中の保育園児が巻き添えになった。朝日新聞によると、2歳の園児2人が死亡し、1人が意識不明の重体、園児10人と保育士3人がけがをした。
ネット上では「散歩を控えるべきだ」「引率する保育士が少なすぎる」など意見が出ているが、保育の実態とは異なっているという指摘もある。
実際の運用はどうなっているのか。

保育士は足りていたのか
事故に巻き込まれた保育園は、0〜5歳児までが通う認可保育園。車が突っ込んだ列には、2歳児クラス(2〜3歳)の園児13人がおり、3人の保育士が引率していた。
厚生労働省は、児童福祉施設の最低基準として職員の配置人数を設けており、それによると、1、2歳児は園児6人に対して保育士1人。園児13人に3人の保育士というのは、通常おこなわれている保育の内容だ。
<職員配置基準(保育士)>
0歳児 3:1
1・2歳児 6:1
3歳児 20:1
4歳以上児 30:1
一方、認可外保育施設には、このような配置基準はない場合がある。
なぜ園庭で遊ばせないのか

事故に巻き込まれた保育園には園庭がなく、日常的に子どもを散歩に連れて行っていたという。こうしたケースは珍しくない。
首都圏を中心に全国の都市に毎年、調査をしている「保育園を考える親の会」の冊子「100都市保育力充実度チェック」の2018年度版によると、認可保育園の園庭保有率は低下し続けている。
敷地内に必要基準面積を満たす専用の屋外遊技場がある認可保育園は、2015年度は80.3%、2018年度は73.8%。
認可保育園には園庭の設置が義務づけられているが、十分な土地を確保できなければ保育園そのものを建てられない、という事態を避けるため、「屋外遊技場(保育所の付近にある屋外遊技場に代わるべき場所を含む)」とし、近隣の公園などを代替地としてもよいことになっている。
このため、園庭代わりの公園に行くために、園児が列をなして公道を歩くことは日常的な風景だ。
事故に巻き込まれた園では、車道側に寄らないように歩かせたり、信号待ちをさせたりするなど注意していたという。
外で子どもを守れるのか

交通事故総合分析センターによると、子どもの歩行中の事故は、7歳が突出して多い。
また警察庁によると、2014年から2018年の5年間の合計では、小学1年生の歩行中の死者・重傷者数は6年生の約3.6倍だった。
小学1年生の事故の最初のピークは、5月の中・下旬となっている。これは、小学校に入学すると行動範囲が広がり、子どもだけや一人で行動することが増えるからと分析されている。
安全に登下校するためには、幼い頃から交通安全教育が必要で、保育園の散歩もその機会をつくる一環と言える。
保育園は悪くない
SNS上では「保育園が責められる必要はない」などという声とともに、「#保育士さんありがとう」というハッシュタグが話題になっている。