公共の場では隠してもダメですか? 電車で授乳する動画が問いかけること

ベビーカー参拝に続き、公共の場での授乳が改めて議論を呼んでいる。立場によって賛否が分かれがちだが、折り合うことはあるのか。

初詣にベビーカーで参拝することの議論が冷めやらぬ矢先、1月11日の朝日新聞に掲載された「授乳」に関する投書が話題になった。ショッピングセンターの飲食店でアルバイトをしている大学院生(23)が書いたものだ。

ショッピングセンターには、授乳室やキッズルームなどの設備が完備している。それなのに、店に入ってきて、注文する前から授乳を始める母親がいる。(中略)ケープなどで隠しながら授乳する人が多いが、それでも目のやり場に困る。注文を取ったり、食事を提供したりする際にも、ためらってしまう。

Twitterでは「ケープや布で隠してもダメなのか」「きょうだいがいると席を立てない」などの反論のほか、「自分も人前では授乳しづらい」「授乳室があるなら行くのがマナー」といった声もある。

こんなアンケートもはじまった

授乳をしたことがある人とない人に別々に尋ねている

授乳した事がない方(男女問わず)にお尋ねします。 授乳ケープなどで乳房が見えない工夫をする前提で、公共の場での授乳は、

Twitterでアンケートを呼びかけているのは、内科医で、現在は育児のため休職中のHAL@36歳女医(@halproject00)さん。2歳の長女を育てている。

授乳問題が紛糾しているのを見て、「この国は育児に不寛容だ」という意見が特に気になった。

自身も飛行機の中で授乳した経験があるが、公共の場での授乳にここまで不快感をもつ人がいるとは考えたことがなかった。一方で、長女を連れて外出すると、たくさんの人が笑いかけてくれ、子育てを社会に支えてもらっている、と感じることもある。

本当に不寛容なら、授乳経験者とそれ以外の人では、公共の場での授乳について受け止め方が違うのでは? そう考え、「授乳経験あり」と「授乳経験なし」を分け、1月14日からアンケートを始めた。

「授乳していい」が9割

1月16日現在、授乳経験ありが約8000票、授乳経験なしが約1万票、集まっている(アンケート集計は締め切り)。

HALさんによると、授乳ケープなどで乳房を見えないようにしたうえで公共の場で授乳することについて「抵抗がある」を選んだのは、むしろ授乳経験者のほうに多い傾向があった。

「授乳していいと考えている人は、授乳経験の有無に関係なく9割を超えています。決して不寛容ではなく、多くの人が理解を示そうとしていると感じます」

「授乳をはじめとした育児のさまざまな問題に、答えは出ません。ただ、経験者と非経験者の間に、実際にはない”溝”を作り出している面はあるのではないでしょうか」

HALさんは集計結果を考察し、ブログで公表した。

「アンケート結果の解釈と考察は、いろいろできるのではないでしょうか。お互いの立場や感情を尊重して、社会全体で気持ちよく育児ができる工夫を、私も考えてみます」

授乳服メーカーのモーハウスは、電車内で授乳する動画をつくった。

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

モーハウスが制作した動画「Breastfeeding in the train」

動画は2016年末に撮影したもので、17年1月からYouTubeで公開している。

2人の子どもを連れた女性が電車に乗ろうとすると、赤ちゃんが泣き始める。電車の中で授乳し、赤ちゃんは落ち着く。周りの乗客は気づいていないのか、胸には視線を送っていない様子だ。

モーハウスの光畑由佳代表は、電車の中で子どもが泣いてやむなく授乳した経験から、1997年に授乳服を作った。授乳服は、胸の部分にスリットがあるなどのデザインで、服をめくり上げなくても素早く授乳できる機能がある。同時に「周りから胸が見えないこと」「授乳中だとわかりづらいこと」も重要な要素だという。

「授乳する権利」は主張できるのか

公共の場での授乳について、肌が露出しないように授乳ケープで隠しているにもかかわらず「目のやり場に困る」といった意見があることについて、光畑さんはこう話す。

「ケープを使い、授乳中です、とフラグを立てることによって、注目されるリスクがある。マタニティマークと同様、必要があってやっているにもかかわらず、権利を主張していると感じてしまう人もいるのです」

海外では、授乳できる権利を求めてデモをするなどの動きがある。だが、授乳をめぐる議論が堂々めぐりで繰り返される日本では、まだその段階に達していない。

屋外で肌を露出せずに授乳している写真を利用したモーハウスのFacebook広告は2016年4月、「成人向け製品」に該当するとみなされて取り消された。

「授乳についてはさまざまな感じ方やとらえ方をする人がいる。多様な人がいる社会では、まずは『周りにわからないように授乳する』という方法が無難であり早道です。実際、そうやって授乳中の母親が積極的に外に出て行くようになれば、価値観が変わっていくのではないでしょうか」(光畑さん)

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