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いま泣いている子どもを救いたい。児童虐待の対策を求める署名活動はじまる

児童相談所のマンパワーが圧倒的に足りない。

1日1人、子どもの命が奪われている

東京都目黒区で、5歳の船戸結愛ちゃんが3月に死亡し、両親が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された事件。

「もっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」

ひらがなの練習として結愛ちゃんがノートに書いた文章が公開され、事件への関心が一気に高まった。

厚生労働省によると、児童虐待で亡くなる子どもは、年間84人(2017年度、心中を含む)。日本小児科学会はその3倍超の350人と推計しており、1日に1人は、子どもの命が奪われていることになる。いまも、どこかの家庭で泣いている子ども、苦しんでいる子ども、お腹を空かせている子どもがいる。

子育てに困難を抱えている家庭に個別に介入するには、マンパワーと適切な判断が必要だ。そのために法律や制度を整えるよう求める署名プロジェクトが始まった。

児童相談所のマンパワー不足

署名プロジェクト「もう、一人も虐待で死なせたくない。総力をあげた児童虐待対策を求めます!」は6月14日、インターネット署名サイトChange.orgで始まった。認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんらが発起人となって呼びかけた「なくそう!子どもの虐待プロジェクト2018」の一環。

駒崎さんは、児童相談所の数が圧倒的に少なく、職員が多くのケースを抱えていること、IT化が進んでおらずFAXで情報共有していること、すべての情報が警察と共有されておらず、虐待を発見しづらいことなどを問題点として挙げ、その背景として、日本は社会的養護の予算が極端に少ないことを指摘している。

結愛ちゃんは以前住んでいた香川県で2回、児童相談所に保護されており、顔や脚にあざが見つかっていた。目黒区に転居してから品川児童相談所が家庭訪問したが、結愛ちゃんとは会えなかったという。両親は、十分な食事を与えず、暴力をふるい、栄養失調状態で放置した虐待の疑いがもたれている。

「虐待した親や、児童相談所の対応を責めるだけでは解決しません。結愛ちゃんの事件で胸を痛めた人は、悲しみを声にしてください。国のお金の使い方は変えていけるはずです」(駒崎さん)

駒崎さんは、複数の専門家の知見をもとに、8つの総合的な対策「児童虐待八策」をまとめた。集まった署名は、東京都と政府に届ける。

「児童虐待八策」と、求めている内容は以下の通り(要約)

(1)児童相談所の人員補充

児童相談所の人員を大幅に増加させ、常勤弁護士を設置してください。市町村の虐待防止体制を強化してください。

・児相のマンパワー不足を解消すべく、職員数を増やしつつ、一時保護や親権停止を機動的に行っていくために常勤弁護士を配置してください。

・児相だけではなく、「オール地域」で子どもを守っていくために、児相に来る前にケースを発見・ソーシャルワークしていけるよう、自治体の虐待防止体制の強化を望みます。

・保育園や幼稚園・学校は虐待を発見しやすいので、保育・教育現場と児相の連携を強化してください。

(2)警察との情報共有


通告窓口一本化、児相の虐待情報を警察と全件共有をすること、警察に虐待専門部署(日本版CAT)を設置することを含め、適切な連携を検討する会議を創ってください。

・児童虐待は子どもの自己肯定感を削り、命を奪いうる犯罪であり、しつけではありません。しかし3分の1の自治体は、警察に情報を共有する基準がありません。

・すでに愛知・高知・茨城は全件共有を行なっています。また埼玉県も全件共有に踏み出しました。虐待は犯罪とはいえ、当事者の親を批判するだけでは、問題は解決しません。

・構造を変えるため、政府は通告窓口を一本化し、警察にも虐待案件を共有する等、全件共有に向けた検討会議をすぐに創ってください。また、警察内に虐待専門部署(日本版CAT)を設置することを検討してください。東京都は、国に先駆けて検討を開始してください。

(3)児童相談所の組織改革

児相が積極的に司法を活用できるよう、児相の組織改革を。

・結愛ちゃんのケースでは、一時保護の後に児童福祉法28条を活用し、親子分離させていたら、救えたかもしれません。

・ドイツでは年間1万2000件を超える親権停止を行っているのに対し、日本では約80件の親権停止しか行われていません。

・児相が積極的に司法を活用できるようにするとともに、親との関係性がこじれることを恐れるあまり司法的手段に出られないことを防ぐため、親支援と介入・救出は部署を分けるような児相の組織改革が必要です。

(4)里親の拡充と支援

リスクが高い場合すぐに一時保護できるよう、一時保護所・里親・特別養子縁組の拡大と支援を推進してください。

・児相が一時保護を躊躇する理由に、一時保護所や里親等の不足が挙げられます。

・一時保護所の拡大と里親の増加を促進してください。

・量とともに質も重要です。一時保護所は子どもの人権を守れるような十分な施設、職員配置を。里親も研修や支援の機会を増強してください。また、リスクアセスメントが適切にできるよう、児相職員向け研修の充実も欠かせません。

(5)児童相談所のIT化

児童相談所間でケースを共有できるITシステムを導入・推進してください。

・児童相談所は、転居した居所不明児童をFAXで探している状況です。これではいくら職員を増やしても、膨大な仕事量で忙殺されてしまいますし、子どもの命を助ける仕事の時間が非効率的な働き方で失われていきます。

・全児童相談所で子どもの情報を共有できるデータベースや、AIによって適切な優先順位で家庭訪問ができるシステムを導入してください。

(6)児童相談所の適切な配置

東京都で11個の児相は少なすぎます。特別区・中核市の児相設置を急いでください。

・東京都は1300万人都市にも関わらず、11個の児相で対応しています。

・児相の児童福祉司は1人あたり120件のケースを担当し、これは欧米基準の5〜6倍です。

・23区・市部ごとに児相を設置できるよう、東京都は積極的な支援を行なってください。

(7)包括的な性教育


若年妊娠リスクや子育てについて早期から知る、包括的性教育を義務教育でしてください。

・虐待の要因の一つに、若年妊娠や子育てについての知識の欠如があります。

・こうしたことを義務教育で伝えていくことが重要ですが、いまだに学校では「性交」と言う言葉さえ使えません。

・包括的な性教育を義務教育で実施してください。そして若年妊娠のサポート政策を充実してください。

(8)予算の確保

これら全てを迅速に実行できる十分な予算を確保してください

・虐待防止予算の対GDP比は、アメリカの130分の1、ドイツの10分の1です。

・日本は子どもの命を守ることに、あまりにもお金を使ってきませんでした。これまでの予算の水準ではなく、大幅に増額してください。

署名の詳細はこちら

少しずつ動きも

菅義偉官房長官が6月14日の記者会見で「東京都による一刻も早い検証を行うべき」とし、6月15日に加藤勝信厚生労働大臣らによる関係閣僚会議を開き、児童虐待の防止策について検討する考えを示した。

目黒区の事件をめぐっては他にも、NPO法人シンクキッズが「結愛ちゃんの尊い死を無にしないためにも、児童相談所と警察は全件情報共有して連携して虐待から子どもたちを守って下さい」という署名を始めている。

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