• worklifejp badge

管理職が肝に銘じたい一つのこと。「会議では、黙ったほうがうまくいく」

さまざまな世代の人がいる組織では、考え方の違いによって、誤解や軋轢(あつれき)が生まれることがあります。「ジェネレーションギャップ」を「ジェネレーションシナジー」に変えることができた、ある企業の挑戦を聞きました。

50代の管理職と、20代の新入社員。職場にあるジェネレーションギャップ(世代間のずれ)は、働き方にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。

世代間の違いを「対立」ではなく「相乗効果(シナジー)」に変えようとしている組織の事例が、2020年9月にあったイベント「Dive In Festival 2020」で紹介されました。

Dive In Japan: Generations

自分の世代を象徴する「思い出の品」を携えて登壇したメンバー(左から、モデレーターの蓮見勇太さん、パネリストの野崎恵さん、セーラームーンのステッキを見せる武信絢子さん)

「Dive In Festival」は、保険業界がグローバルでダイバーシティ推進を考えるイベントで、2020年は約30カ国が参加、日本では3回目の開催となりました。

3日間にわたってオンラインで配信されたセッションの一つ「世代を越えて創りあげていく組織 〜架け橋となるジェネレーションの強み〜」(AIGジャパン・ホールディングス、スイス・リー共催)は、世代の強みや特性を生かした組織づくりを考える内容で、筆者もパネリストの一人として参加しました。

職場に世代間ギャップはありますか?

Dive In Japan: Generations

マイナビが2019年2月に2000人を対象にした調査では、職場で「若手社員とジェネレーションギャップを感じた経験」や「若手社員と仕事をして困った経験」が「ある」と答えた人が55.4%と半数を超えました。

「コミュニケーションスタイルや考え方の違いが、組織で働くうえでマイナスに影響するだけだともったいない。これをシナジーに変えていくことはできるのでしょうか」

セッションのモデレーターをつとめたIkigai Authentic代表の蓮見勇太さんは、「社員がお互いに年齢を明らかにする必要はない」としたうえで、それぞれの世代が抱える特性をポジティブに生かす方法について問題提起しました。

世代を超えて集まる「業務」

世代の異なる社員を集め、その「違い」を積極的に生かそうとしているのが、AIG損害保険です。

AIG損害保険オペレーション統括部には、バリューアップミーティング(VUM)というグループがあります。

リーダー(セッション配信当時)の野崎恵さんによると、部門の価値を高めるために2019年に設置された組織で、5つの課から集まった11人で構成されています。若手からマネージャーまでさまざまな世代のメンバーがおり、担当している業務や勤務地もバラバラだそう。

「部門にある5つの課はそれぞれが専門的な業務を担当しており、普段はほとんど横の連携が生まれません。なので、それぞれの課内での上下関係はあっても、若手とベテランが柔軟にコミュニケーションをする機会はあまりありません」

「それぞれの世代、それぞれの視点を生かすことによって、部門の価値を高めることと、個人が成長することの両方を目指しているのが、このVUMです」

一見、有志によるサークル活動のようですが、人事評価の対象になるという点がVUMの活動の特徴です。メンバーも各課長が選出し、れっきとした業務として活動しているのです。

「部門の価値を高めるという目標があるので、もちろん成果を出さなければいけません。通常の課やチームのような上下関係はないため、若手が自由にアイデアを出したり、率直な意見を発言したりしやすい場になっています」

ベテラン社員が発言しなかった理由

提供写真

AIG損害保険オペレーション統括部のバリューアップミーティング(VUM)

それでも、世代も、担当領域も、意見も異なるメンバーが一つの価値を創造するのは、簡単なことではありません。

VUMでは当初、若手社員が積極的に発言する一方で、ベテラン社員が発言しないことが、リーダーの野崎さんは気になっていたといいます。

「枠組みは作ったものの、何のためにどんな活動をするのかというところから話す必要があったため、概念的な議論のままなかなか前に進まず、気をもんだ時期がありました。そういう時、ベテラン世代がもっと意見を出してくれたらいいのに......と内心思っていました」

しかし、野崎さんはコミュニケーションを重ねていく中で気づいたといいます。

「経験が豊富な世代は、このVUMを、若手の初めてのチャレンジを応援する場としてとらえてくれていたのです。自分は見守るよ、背中を押すよ、という意識が強くあったからこそ、あえて発言を控えてくれていたのですね」

「そのことを知ってから、積極的に自分が発言することだけがチームの力を強める行動ではない、と私も気づくことができました。ベテラン世代にはここぞという時に発言してもらったり、若手の発言をまとめてもらったりするような役割を任せられるようになり、結果的にはよい相乗効果が生まれました」

VUMの活動を始めてから、課を超えてより連携できるようになった、と野崎さん。新型コロナウイルスの影響で社内コミュニケーションの課題を感じ始めていたとき、部全体のミーティングを提案し、実現させたのもVUMだったといいます。

「これまで会議室の確保や大人数のスケジュール調整が難しいためにできなかった全体ミーティングが、Web会議ならその必要がなくなる、今こそやったほうがいいのでは、という提案により実現しました。それにより、他の課の業務を知ることができ、部全体の戦略や方針もスムーズに伝わるようになりました」

任せることと、支えること

提供写真

AIGビジネス・パートナーズの新入社員の導入研修

若い世代のアイデアを生かせるよう、ベテラン世代は一歩引いて、「脇役」に回る。そんなマネジメントの仕方について、AIGビジネス・パートナーズの人事部で新入社員の導入研修を担当している武信絢子さんは、「任せることと、支えることのバランスが重要」と話します。

武信さんは日々、新入社員と接するうえで、こう感じているといいます。

「若手には、フレッシュな視点でアイデアを出せる強みがありますが、いざ実行するフェーズでは、ビジネススキルや経験値が不足しています。若手のアイデアを形にするうえで、経験のあるベテラン世代のサポートはやはり不可欠です」

武信さんがこう指摘するのは、「ゆとり世代」とまとめて呼ばれがちな自身の経験に基づいています。

武信さんは、入社して1年ほど経って仕事に慣れてきたころ、「これから先、自分はどうなっていくのか」という漠然とした将来への不安に見舞われました。

そのとき、周りの先輩からかけられた言葉が、「5年10年がんばれば、何とかなるよ」でした。

「的確なアドバイスだとはわかりながらも、当時は素直に受けとめることができませんでした。先輩が感じる5年10年は振り返ればあっという間かもしれませんが、入社したばかりだった私にとっては、とんでもなく遠い将来のような気がしてしまったのです」

「もう一つ、常に『正解』を求めてしまう自分もいました。失敗から学べることがある、と頭ではわかっていましたが、心が追いつかない。ネガティブな経験を避けたいと無意識に考えてしまうので、新しいことへのチャレンジに腰が重たくなってしまったり、周りの人が考えている以上に不安になって夜も眠れなくなったりしたこともありました」

「かつての自分を思い出す」

新卒の社員を対象にした研修で毎年、人気があるのは「レジリエンス」に関するセッションだといいます。困難な状況に直面したときに、ストレス状態からしなやかに素早く立ち直るためにどのようなことができるかという内容です。

失敗や挫折、ネガティブな感情に向き合うことに萎縮している後輩を見るたび、武信さんはかつての自分を思い出し、「あなたはどう思う?」「間違っていてもいいから言ってみて」と積極的に声をかけるようにしています。

「若手社員の力を引き出すためには、思い切って任せてみることがとても大事だと感じます。悩み、迷いながらもその過程を経てきた一人として、彼らの潜在的な強みを生かせるよう、支えられる存在になりたいです」

セッションの内容はこちらの動画から。