出産後にペーパー離婚。家族なのに......選択的夫婦別姓の裁判、第2ステージへ

    事実婚の夫婦4組が提訴を予定している。

    夫婦が同じ姓を名乗るのは合憲だとして、選択的夫婦別姓を認めなかった最高裁大法廷の判決から2年あまり。

    今度は、東京都と広島市に住む事実婚の夫婦4組が「夫婦別姓での婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だ」として、3月にも国を提訴する。

    出産後にペーパー離婚

    2月27日、4組のうち2組が夫婦別姓での婚姻届を提出した。夫婦別姓が認められていない現状では、不受理となる見通しだ。追って2組も婚姻届を提出し、受理を求めてそれぞれ家庭裁判所に審判を申し立てたのち、提訴するという。

    この日、原告となる女性と弁護団が、司法記者クラブで会見した。40代の女性はこのように語った。

    「私と夫は2001年に結婚式を挙げました。お互いの姓を変えずに結婚すること望んで、今は事実婚となっています。生まれたときの姓名で築いてきた公私にわたる実績や人とのつながりを、結婚後もそのまま継続してほしいとお互いに思ったからです」

    女性は看護師として働いているが、各種の免許は戸籍名のため、もし改姓したとしても職場で旧姓を通称として使用することができないという。また、子どもは父親の姓の婚内子とするため、出産前に婚姻届を提出し、出産後にペーパー離婚をした。

    「私たちは法律婚の夫婦と同様に、生活を支え合い、家族の命や人生に愛情と責任をもちたいと考えています。ですが、事実婚では夫婦間や子どもについての法的な権利や保護が及ばないことが多々あります。夫婦のどちらもが改姓せずに結婚できることは、これからの社会に必要な選択肢と考えています」

    選択的夫婦別姓に賛成43%、反対29%

    選択的夫婦別姓をめぐっては、1996年に法制審議会が導入を答申したものの、国会で議論が進まず、法改正のめどは立っていない。2015年12月、最高裁大法廷は民法の夫婦同姓の規定を合憲としたが、女性判事3人を含む5人が「夫婦同姓は違憲」とする反対意見を述べていた。

    内閣府の2017年12月の「家族法制に関する世論調査」によると、「夫婦がそれぞれ婚姻前の姓を名乗れるように法律を改めてもかまわない」(選択的夫婦別姓に賛成)と答えた人が42.5%。「結婚する以上、夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきで、法律を改める必要はない」(選択的夫婦別姓に反対)と答えた人は29.3%、「婚姻前の姓を通称としてどこでも使えるように法律を改めるのはかまわない」(通称使用に賛成)と答えた人は24.4%だった。

    1月9日には、ソフトウェア会社サイボウズの青野慶久社長ら4人が、選択的夫婦別姓を求めて東京地裁に提訴。民法上の姓の変更についてはこれまで通りで、旧姓を名乗り続けるための戸籍法上の根拠を求めている。

    結婚したくてもできないという「差別」

    3月に提訴する4組の夫婦の弁護団は、2015年に最高裁大法廷まで夫婦別姓訴訟を持ち込んだ榊原富士子弁護士ら。今回は新たに「夫婦別姓を希望する人が差別されている」という点を、司法の場で問う予定だ。

    「実質的な男女不平等については今回も主張するが、新たに主張するのは、夫婦別姓を希望する人には、同姓の夫婦が得られるさまざまな権利や利益を得られないという差別があるということです」

    民法750条は、結婚すると夫婦はどちらかの姓を選ばなければならないと定めており、夫婦別姓を希望する場合は法律上の結婚ができず、事実婚にせざるをえない。

    そのことは、憲法24条にある「婚姻の自由」の侵害であり、法律婚のみに与えられている相続や税制優遇措置など法的な権利を得られないことは差別である、という主張だ。

    原告らは「結婚したいと願っているにもかかわらず、夫婦別姓を希望すると法律婚から排除されることは、正当化されうるのか」と問いかけている。

    BuzzFeed JapanNews