性に関することについて、なんとなく語りづらい......それはもしかしたら、「古きタブー」にとらわれてしまっているからかもしれません。
BuzzFeed Japanでは10月11日の国際ガールズ・デーを前に、ライブ番組「自分らしい『きれい』のために、知っておきたいからだのこと〜femtech and beauty」を、資生堂fibona、BeautyTech.jpとともに配信しました(アーカイブ視聴はこちらから)。
「女性の性が『恥ずかしい』『はしたない』といった社会の認識があり、語られてこなかったがゆえに解決していない課題があります」
こう話すのは、ゲストとして登壇したarca CEOでクリエイティブディレクターの辻愛沙子さん。辻さんが語った、性のタブー視を変えるためのポイントをまとめました。
女性のヘルスケアの進歩が遅いわけ
女性の性が語られにくいのは、構造やルールの問題が大きかったと思うのです。
そもそも、日本の法律やルールを決める国会議員にジェンダーギャップがあります。
女性議員の割合は、衆議院で10.1%、参議院で22.9%(2019年7月現在)。女性のヘルスケアに関してとても大事な部分を担っている人たちに、女性が少ないのです。
ちょうど緊急避妊薬(アフターピル)を薬局で処方箋なしに販売することが検討されるとの報道がありました。これも「ようやく」という感じですが、月経困難の治療のためにも使われる低用量ピルも、認可されるまでにとても長い期間がかかりました。
企業がさまざまなサービスを出していくにあたって、その前提となる法規制を担う政治の世界も変わらないと、女性のヘルスケアの未来はひらけません。
さらに、性教育の課題もあります。
学校の保健体育の授業で教わるのは男女の身体の仕組みにとどまり、妊娠や中絶について学校では教わっていないという人が少なくありません。
すべての人が必ずしも子どもを産むわけではありませんが、妊娠何週くらいで出産するとか、妊娠中に身体にどのような変化があるかなどは、男女ともに知識として持っておかないと、将来設計やキャリアプランを考えにくく、妊活や不妊治療などへの影響も出てきます。
例えば、出産後は退院したらすぐに元のように動けるものだと思い込んでいる、といったような勘違いも多くみられるのが、今の日本の現状です。
また、日本の刑法では「性交同意年齢」が13歳と定められており、性行為に同意する能力があるとみなされます。13歳といえば中学1年生ですが、「性的同意」という言葉を小学校のときに聞いたことがあるという人はどれくらいいるでしょうか。法律と、教育の実態にずいぶん乖離があると感じます。
お金とデザインの力でアクセスしやすく
課題解決のためには、性のことを語りやすくすること、つまり意識改革も、構造やルールの改革と同じくらい重要です。
女性の性については「恥ずかしい」「はしたない」という社会の認識がまだまだあるのが現実です。性の悩みやホルモンバランスのことを、こそこそせず、喫茶店や居酒屋でも話していい。
すべて自己責任で解決しなければいけない「個人の不便」ではなく、多くの人が抱えている「社会の課題」として、それぞれが抱え込まずに済む意識改革や空気づくりがとても重要だと思っています。
テクノロジーの力で女性たち身体や性に関する課題を解決しようとする「フェムテック」(FemaleとTechnologyを組み合わせた造語)という概念が、海外発で盛り上がっています。
フェムテック投資を専門としたファンドができたり、ベンチャーができて市場が活性化したり。法整備と経済が同時に動いて、ここ数年で大きく伸びてきています。
日本でもフェムテック専門のオンラインストア「fermata(フェルマータ)」ができたり、年内にフェムテックに特化したファンドができる動きがあったりと関心を集めているものの、お金がかかるというイメージもあります。一部の人だけが手に取れることにならないよう、経済的な支援やテクノロジーによる工夫が期待されています。
誰もがアクセスしやすくするためには、金額と同時にデザインの力も重要です。
例えばこれ、韓国のコンドームなんです。こんなスタイリッシュなケースに入っていて、雑貨や化粧品と同じ感覚で持ち歩けるデザインなので、ポーチに入れていても違和感がないですよね。デザインの工夫によって、女性が自分の身体を守るアイテムを堂々と持ち歩けるようになるという一つの例です。
私はクリエイティブの仕事の一環で、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」というプロジェクトを2019年に始めました。
「女性を知る。社会を知る。自分を知る。」というキャッチコピーで、さまざまなデータを集めて女性のヘルスケアの現状をインフォグラフィックでわかりやすくまとめ、解決の第一歩の「知る」ことを目指しました。
例えば20代・30代の女性は、健康診断の未受診率が、男性や他の世代の女性に比べて高いです。そもそも健康診断に抵抗があるとか、忙しいとか、お金がかかるとか、さまざまな理由があるのですが、自分の身体と健康のことを知ることで、防げる病気はたくさんあります。
もっと気軽に健康診断に行けるような仕組みや空間をつくりたい、健康診断の心理的・経済的なハードルを取り除きたいと考え、2019年の国際ガールズ・デーに合わせて、ワンコイン(500円)で受診できるフォトジェニックな健康診断を企画しました。
2020年の国際ガールズ・デーは新型コロナウイルスの影響で実施できませんでしたが、私自身とても強い思いがある企画なので、またいつかできるといいなと思っています。
古きタブーを超え、女性のヘルスケアについて正面から取り組める未来に、少しずつ向かっていることを実感しています。
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誰にとっても他人事ではないけれど、どこか話しづらい「性」。BuzzFeed Japanは、性にまつわる様々な記事をこちらのページで配信しています。