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新型コロナウイルス 「指定感染症」になるとどうなるの?

新型コロナウイルスの感染者が拡大し、政府が「指定感染症」にすることを閣議決定しました。指定感染症になるとはどういうことなのでしょうか?

新型コロナウイルスの拡大が連日、メディアで報道されています。

中国当局の発表によると、中国国内での死者は81人にのぼり、2744人の感染者が確認されています。

1月28日午前時点で、日本国内でも4人の感染者が確認され、政府は中国・武漢市にいる日本人をチャーター機で緊急帰国させる対応を取ることも発表しました。

さらに、政府は28日、新型コロナウイルスによる感染症を感染症法の「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定するための政令を閣議決定しました。

「指定感染症」「検疫感染症」と聞くと、非常に重みがあるように感じるかもしれませんね。

どういうことなのか、解説してみましょう。

SARSやMERSと同じ2類感染症「相当」に

新しい感染症を、感染症法に組み込むには法改正が必要なため、迅速にはできません。「指定感染症」にするとは、感染症法に組み込んだ感染症に準じて、国で対策を可能とする措置です。

SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)と同じ2類感染症「相当」となります。

2類感染症になるとどうなる?

2類感染症は、急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、SARS、MERS、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザがあります。

この2類感染症に準じた対応が可能な「指定感染症」となることで、法にもとづいた隔離などが可能となります。

現在は入院や隔離を本人にお願いしている状況なので、本人が拒否すれば拘束することはできません。

指定感染症となれば、法律による強制力をもって、他の人に感染しないように隔離することができるようになります。

具体的には、都道府県知事が、感染症の対策が整った指定医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるということになります。


また、「検疫感染症」は、空港や港などの検疫所で検査を指示できるようになり、従わない場合は罰則を科すこともできます。

さらに、医療費が公費負担となり、感染症の届出や調査が行いやすくなるなどの利点があります。実際の政令の施行は来月7日となります。

医療対応は限られた施設に集中する

その一方で、限られた感染症関連病院に診療が集約されてしまい、医療が限定的施設に集中していきます。

それらの医療機関では、24時間いつでも呼び出しがある「オンコール体制」の長期化でスタッフが疲弊していきます。

感染が拡大して長期化すると、接触者調査を現場で行っている保健所担当の負担増大も心配です。

患者の人権にも配慮した対応を

私は、ずっと感染症指定医療機関の病院で診療を行ってきて、多くの感染症で「隔離」の対応をしてきました。

「隔離」というのは、感染症の流行をコントロールするためには重要な対策のひとつです。

一方で、感染者の人権を制限する対応でもあります。

感染者は、感染したくて感染したのではありません。そこには1人の人間がいるということも忘れてはいけません。現場では、このような部分にも十分に配慮して診療を行うことが大切だと考えています。

一般の人は引き続き、通常の感染症対策を

大変なことになってきたように感じるかもしれませんが、個人のレベルで行えることは限られます。それを日常的にしっかりと行うことが最善の予防策となります。引き続き、通常の感染症対策が有効です。

コロナウイルスはアルコールや界面活性剤に弱い特徴を持ちますから、手洗いをこまめにして、アルコール消毒なども利用しましょう。風邪のような症状が出たら、咳エチケットやマスクを徹底してください。

厚生労働省も一般向けの「Q&A」を公表しました。その都度更新される正確な情報をもとに、冷静に乗り切りたいものです。

【今村顕史(いまむら・あきふみ)】がん・感染症センター 都立駒込病院 感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。駒込病院感染症科のウェブサイトはこちら