世間のニーズは考えない。「つくりたいものをつくる 」雑貨ブランドがSNSで大反響を生むわけ

    ユーモアのある見た目で人気の雑貨ブランド「YOU+MORE!(ユーモア)」。アイデアを生み出す上で大事にしていることを、ブランドマネージャーの豊川さん、プランナーの楢崎さんに聞きました。

    ひと目見たら忘れられない、ユニークな商品を展開するフェリシモの雑貨ブランド「YOU+MORE!(ユーモア)」。

    丸すぎるアザラシが、 丸すぎるクッションに。 海遊館の丸すぎるアザラシユキちゃんと、のほほん笑顔が魅力のアラレちゃんがクッションに。飼育員さん監修で生まれました。 ※2枚目は本物のアザラシの画像です。 ※それ以外は全てクッションの画像です。 ▼もっと見る https://t.co/9WOYOtffg0

    Twitter: @youmore_tw

    ブランド名の通り、ユーモアたっぷりなぬいぐるみや雑貨が人気を集めています。

    アイデアの斬新さから、新商品が登場するたびSNSで話題に。

    中でも「おまんじゅうアザラシユキちゃん もっちりビッグクッション」は、本物のようなリアルさが反響を呼び、Twitter上で9万3千以上の「いいね」を獲得しました。

    他にも、ポーズが面白すぎる「セクシー大根抱き枕」や

    雨の日が待ち遠しくなる美しさの「ステンドグラスの傘」なんて商品も。

    人を惹きつけて離さない特別なデザインは、どのように生み出されるのでしょうか。

    ブランドマネージャーの豊川さん、プランナーの楢崎さん(現在は株式会社2時代表)にお話を伺いました。

    お客様の「なるほど!」を引き出す

    ーーYOU+MORE!の商品は魅力たっぷりで、見ていると思わず口角が上がってしまいます。どれも「らしさ」に溢れていますが、企画を生み出す上で重要視していることはなんですか?

    楢崎さん(以下、楢崎):プランナーの間で大切にしているのは「既視感がないもの」「共感できるか」という感覚です。

    他のお店で買える商品はつくらないこと、また、お客様が「なるほど!」と思えるようなアイデアを大事にしています。

    ーー「共感できるか」とはどういうことでしょうか。

    楢崎:例えばこの「フローリングが氷上になる!? ペンギンスルスルー」は、フローリングをお掃除しながら、ペンギンが床の上を滑っている瞬間をつくり出したくて企画しました。

    楢崎:ペンギンがお腹滑りしている様子って、みなさんイメージしやすいじゃないですか。それとワイパーをかけている様子をリンクさせたことに「なるほど!」と納得していただけるのではないかと。

    一見シュールな商品だからこそ、アイデアの成り立ちをお客様に共感していただけるかは、YOU+MORE!にとって重要ですね。

    「ニーズ」よりも「『ほっとする』瞬間」を考える

    楢崎:あとは、「世間のニーズを考えすぎない」も大事なポイントです。

    ーー商品を企画する上では、どれくらいニーズがあるかがまず大事になってくるんじゃ?

    豊川さん(以下、豊川):YOU+MORE!が一番に実現したいのは「心が『ほっとする』瞬間」なんです。なので、ニーズやマーケティング的な目線だけで、商品をつくらないようにしています。

    ご紹介した「フローリングが氷上になる!? ペンギンスルスルー」なんかは、付けることで掃除がむしろやりにくくなるんですよ。小回りがきかなくなるし、角に当たるし。

    ーーええ?

    豊川:あらゆる商品に「使いやすさ」や「便利さ」が求められている中で、ペンギンが滑っている瞬間を作り出すことにフォーカスするのは価値があるんじゃないかと。

    実際この商品はすごく話題になり、再販の希望が出るほど人気になったんです。売れるかどうか度外視した発想がウケたのではないかと考えています。

    アイデアのポイントは「どんな体験を売るか」

    ーー重要視しているポイントを聞くとアイデアを生み出すのが難しそうに思えます。

    楢崎:そうですね。「既視感がないもの」を目指し、人がいない方へ持っていくのはすごくリスキーなことです。

    「ニーズを考えない」とは言っても、なんでもいいわけではない。表面的なデザインだけ考えると、奇抜なものにすればいいとなってしまいますから。

    なので、モチーフが決まったら「どんな体験を売るか」を軸に考えるようにしています。

    この「おまんじゅうアザラシユキちゃん もっちりビッグクッション」は、「あざらしのぬいぐるみ」というありふれたテーマの中で、お客様がどんな体験を求めているかを考えました。

    楢崎:「あざらしと一緒に暮らしたい」「抱きしめてみたい」「隣で寝てみたい」など…。

    じゃあ、見た目はリアルにしたり、寝ているような表情にしたり、抱きしめ心地のよい素材にしたり、商品のイメージが固まってきますよね。

    提供できる体験を考えると、アイデアが浮かんでくるんです。

    ーー豊川さんは企画のどんなところを見て採用・不採用を決めていますか?

    豊川:私自身、決定権はあるものの、あまりNGは出さないです。

    面白さのポイントはプランナーひとりひとりの視点で持っているものなので、自身からちゃんと湧き上がっているアイデアであれば、変なものは出でこないと思っています。

    不思議な案が出てきた際も、否定はしないと決めていて。「それのどこがいいの?」「どうしてそう思ったの?」など深堀りをして、アイデアの個性を引き出すようにしています。

    ジャストアイデアで出たものは他人に伝わりにくいですが、質問を重ねていくと 、面白いと感じるものが出てきます。

    ーーこれまでボツになった企画があれば教えてください。

    楢崎:大豆のトレーディングカードゲーム」を去年企画したんですが、不採用となりました。

    大豆って、いろんなものに化けるじゃないですか。みそも、枝豆も、豆腐も、油揚げも…。

    それがポケモンの「進化」に似ているなと。

    一番最初はみんな同じ大豆の豆で、そこから発芽させてもやし、 発酵させてみそ、など分岐していくのをカードゲームにして、戦わせたら面白いんじゃないかと思って企画したんですが…。

    さすがに「商品としては意味がわからない」となりました。

    ーー興味はものすごく湧くんですが…。ちなみに、その中で一番強いのはどのカードなんですか?

    楢崎:一番強いのは味噌汁です。とうふ、油揚げ、大豆が具材として入っていて。

    ーーすごい!大豆まみれですね。その企画会議、とても楽しそうです。

    これからも「YOU+MORE!」らしさを一番に

    ーーおうち時間が長くなり、YOU+MORE!商品に癒やされた人も多くいると思います。今の状況を受けて、今後つくっていきたい商品などはありますか。

    豊川:世の中が求めているものに合わせるというよりは、今までと変わらず「ほっとする」瞬間を大事に商品をつくっていきたいですね。

    去年の消費ニーズを一言で表すとしたら「お家の中でなにかできるもの」だったと思うんです。だけど、去年YOU+MORE!で売れたものは傘でした。

    豊川:山形県の加茂水族館とのコラボ商品である、クラゲをモチーフにした傘が、意外なことにダントツで人気だったんです。

    ニーズがあるところに合わせて商品をつくるのは今までもしていなかったことですが、この実績を見て、お客様がYOU+MORE!に求めているものがよく分かりました。クスッと笑えたり、他にない面白さを好きになっていただいているんだなと。

    なので、これからも「世の中で売れてるから」は考えず、自分たちがつくりたいものをつくっていくのが一番かなと思っています。