Twitter、TikTok、Instagram…。SNSで火が付き、今まで知られていなかったアーティストが一瞬にして注目を浴びることが珍しくなくなった。

SNS発でテレビなどのメディアに取り上げられ、無名だったアーティストが異例のヒットを成し遂げる。
現在の日本の音楽シーンにおいて、「バズる」ことは売れるための近道とも言えるだろう。
新世代バンドとして人気を集めるTempalay(テンパレイ)も、SNSで話題になったアーティストの一つだ。

2014年に結成し、2020年にメジャーデビューを果たしたTempalayは、今までにいくつもの「バズ」を経験してきた。
中でも一番は2018年。世界的に有名なK-POPグループBTS(防弾少年団)のメンバー・RMがTempalayの曲をTwitterに投稿。80万以上の「いいね」を集め、22万回以上リツイートされた。
🌳🌳 #RM
当の本人たちはSNS上での「バズ」をどのように捉えているのか?Tempalayのメンバーに話を聞いた。

左からAAAMYYY(エイミー)、小原綾斗(おはらりょうと)、John Natsuki(ジョンナツキ)。
ーー今までたびたび「バズ」を経験してきて、どんな良いことがありましたか?
小原綾斗(以下、小原):ないですね、何も。「バズる」って全く意味のないことだと思います。
ーーかなり冷静に捉えているんですね。
小原:バズっている時って、あまりこちら側が望んだ状態でないことの方が多い気がして。
「そこじゃないんだけど」って部分が人に刺さっているような。
ーーでも、名前が広まるって、アーティストが売れる上ではいいことなのでは?
小原:好きなアーティストやインフルエンサーが聴いているから自分も聴く、話題になっているから聴くって、つくり手からしたら望んではいないことなんですよ。
一時的に聴く人がバッて増えるかもしれないけど、そのブームが去った時の残骸がエグそうって考えてしまう。

ーー世間的には「バズ」ってかなり好意的に捉えられていますが、当事者からするとあまり嬉しくない?
John Natsuki(以下、Natsuki):ビジネス的に捉えたら、メリットしかないとは思いますけどね。
音楽との出会い方って、今は多くの人が友人とかから勧められて聴き始めるじゃないですか。自分から積極的に探しに行くって人はあんまりいないですよね。
そういう意味で考えたら良いことだと思います。小銭を稼ぐとか、一時的でもいいから有名になりたいのであれば。

ーー先ほど「良いことはない」と言っていましたが、ある程度は影響があったのでは。
小原:ないですよ。身の回りは何も変化がないし、何も起こっていない。
ーー意外です。
小原:自分自身が、もしかしたら「バズる」ってことに期待しすぎていたのかもしれないですね。「バズったら売れるだろう」って。
でも、実際はそうじゃなかったから。
ーーその後に続いていかなかったと。
小原:正直、バズった時は「あ!」って思ったんですよ。ただ、自分たちはそこに乗っかることができなかった。
ーーそれはなぜでしょうか。
小原:ある種の拒否反応じゃないですかね。心から喜べなかったし、乗っかるのが恥ずかしいことだと思ったんです。
あと、BTSをよく知らなかったのもあります。
ーーええ!?
小原:「往年のパンクバンド?」とか思ってたんで。
Natsuki:もし、もともと知っていたら「BTSにツイートされた!」とか言って、自分たちでも拡散していたかもしれないですね。
バズった時、純粋に嬉しかったのであればめちゃくちゃ頑張れたと思うんです。
だけど、それ以上に自分たちにはそれをモノにできる覚悟や準備ができていないとわかっていた。
「バズる」ってことに関しては、ビジネスや流行にハマるものをつくったりとか、研究する人には勝てないんですよね。
小原:それでいうと、自分たちは話題になったものの、本当の意味ではバズってはいないですね。

小原:周りでも、バズを目的としたアーティストとか楽曲が増えてきた感じはしますけど…。
正直、そこに対してはクソくらえと思ってます。

《Tempalay》
小原綾斗(ギター・ボーカル)、John Natsuki(ドラムス)、AAAMYYY(コーラス・シンセサイザー)の3人で構成されるロックバンド。2020年12月9日、ワーナーミュージック内レーベル『unBORDE』よりメジャーデビューを果たす。3月24日には4枚目となるフルアルバム「ゴーストアルバム」をリリースする。