海よ、割けよ!モーセの奇跡をポーチで再現 クリスチャンの反応は

    海外からも「売ってくれ!」の大反響。“生みの親”に聞きました。

    手のひらの中であの“奇跡”を再現――旧約聖書の「海を割る」伝説をモチーフにした、「モーセの奇跡ポーチ」が発売した。

    ファスナーチャームをひっぱると、海が割れてモーセが海を渡っていく……!

    文字通り方舟を模した「ノアの方舟ポーチ」と合わせ、7月1日に試作品がネットで発表されるやいなや「この発想はなかった」「アイデアの勝利」「クリスチャンです!ほしいです!」と話題に。

    「ウケるんじゃないかな? と自信はありましたが、予想以上の反響でしたね。みなさんの反応が気になっちゃって、その日は犬の散歩に集中できませんでした。海外からのコメントが多いのにもびっくりしました」

    と、発案者の乙幡啓子さんは振り返る。

    「うちの国でも売って!」海外からも反響

    Webサイトに公開したのは日本語の情報だけだったが、写真のインパクトゆえに拡散され、英語や韓国語のコメントも多数寄せられた。

    キリスト教圏の方が、モーセやノアの方舟の物語に親しみを感じていることもあるのだろうか。

    商品化も決まっていない段階にも関わらず「自分の国でも売りたい、ライセンス契約の相談を」という問い合わせもあったそう。

    宗教的な題材、否定的な声は?

    乙幡さん自身は、カトリックやプロテスタントの信者ではない。今回選んだ2つのエピソードを選んだ理由は「誰もが知っているお話をモチーフにしたかった」と話す。

    旧約聖書となると宗教的な題材でもあるが、その点で否定的な反応はなかったのだろうか?

    「海外も含め、私が見ている限りではクレームはゼロでした。むしろ『こんなの初めて見た! ほしい!』など好意的な反応ばかり」

    「むしろ、宗教をいじるのがタブーのように思えてしまうのは、普段なじみがないからこそ、かもですね。欧米を見ると、イエス・キリストやマリア様を使った『これ大丈夫なの!?』というへんてこグッズも多いですし」

    「へえ、舟型ポーチって言うのか」

    そもそもこのポーチは、フェリシモの「妄想商品化道場」の一案として発表したものだった。

    毎月提示するお題に沿ってクリエイターや一般からアイデアを募り、人気に応じて商品化する企画だ。

    乙幡さんは、これまでも“妄想工作家”として自分をパチンコ台にした「CR乙幡啓子」や某映画を思わせる「湖面から突き出た足製氷器」など数々の作品を作ってきた。この企画にはクリエイターの1人として参加している。

    2つのポーチの案も、実は1年ほど前からあたためていたそうだ。

    台形をさかさまにしたような形のポーチは、一般的に「舟型ポーチ」と呼ばれる。その名前から「何かできないか」と考え始めたのがきっかけだった。

    「へぇこれ舟型って言うのか、舟っていいよなぁ、何かいいネタないかなぁ、というところからスタートした気がします」

    「みんなが知ってる舟といえば『方舟』かな? 中の裏地に動物を描いたらいいかも。ファスナーチャームは鳩にして、オリーブをくわえさせて……と想像を広げていきました」

    旧約聖書「創世記」のエピソードからということで、他にも有名な神話や童話になぞらえたものがシリーズでできないか? と考えた。

    しばらくしてひらめいたのが、同じく旧約聖書の「出エジプト記」に登場するモーセの伝説だった。

    「ファスナーで海が“開く”、とひらめいた時は『これは絶対面白い!』と1人で興奮したのですが、その時はまぁ、いつか使おうというアイデアの1つとしてストックしただけでしたね」

    年が明け6月。「妄想商品化道場」のお題は「マニアックすぎるポーチ」だった。頭にあった2つの案はドンピシャ。かくして冒頭の反響につながった。

    面白いでしょ、は作って伝える

    アイデア段階で発表した時点で、乙幡さんはほぼ完成形に近い試作品を布とミシンで作って撮影していた。ファスナーが動く様がわかりやすかったことがここまで話題を呼んだ一因だったことは間違いない。

    「頭のなかにわりとはっきりイメージがあったので、あまり迷わずにすんなり作れました。立体化するのは、目に見える形にした方が説得力があるから」

    「私は絵が上手くないので、イラストだけだと伝えられないんですよ(笑)。ほしい! と思ってもらうためには、現実的に想像してもらうのが大事だと思うので」

    「妄想商品化道場」史上最多の2万票以上の商品化希望の声を得て、急ピッチで販売にこぎつけた。これまでの反響を踏まえ、海外向けのECサイトでも展開している。

    アイデアを生むコツは

    乙幡さんは以前にもポーチを製品化しており、その名も「魚の干物ケース」。ジッパーを開けると干物になる。「ホッケってペンケースに似てるな、と思ったのがきっかけ」。

    Haruna Yamazaki / BuzzFeed
    Haruna Yamazaki / BuzzFeed
    Haruna Yamazaki / BuzzFeed

    ユニークな商品を作り続ける乙幡さん。最後に、アイデアを生む秘けつを聞いた。

    「なんでしょうね〜、やっぱり、考え抜くことですね。まだ世の中でいじられていないものを、大きくしたり小さくしたり、逆から見たり、普段とは違う視点でこねくりまわしてみる。なんかないかな、って悶々と考えている時間が大事」

    「新しいバッグを考えようと思って、バッグのカタログを見てもダメなんですよ。すでに出ているものを参考にしてもそれ以上広がらない。まったく無関係に見えるもの……例えば昆虫図鑑とかをパラパラ見ます」

    「と言いつつ、考えたからと言ってすぐに浮かぶわけではないですけど(笑)。ある程度時間が経って、全然関係ない時にパッと降ってくることが多いです。お風呂に入ってる時に、あ、これだ! みたいな。何年もやってきて、最近やっとわかってきました」