「続編を作るなら条件がある」大杉漣が「バイプレイヤーズ」若き監督にかけた言葉

    いよいよ物語も終盤のおじさんテラスハウス「バイプレイヤーズ」。撮影裏話や続編の可能性、松居監督に聞きました。

    遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研――日本を代表する名脇役6人がシェアハウスで暮らすドラマ「バイプレイヤーズ」。

    行方不明になった過去の映画のフィルムを見つけ出し、物語はついに終盤。一体このあとどうなるの……?

    松居大悟監督は、1985年生まれの31歳。6人全員と、今回が初仕事です。「顔合わせするまでこの6人がそろうなんて信じていませんでした」。

    最終回に向けての見どころは? 続編の可能性は? 松居監督に直撃しました。


    このキャスト、本当に集まる?

    ――監督はいつ頃からこの企画に関わっていたのでしょうか。

    去年の春ですね。ドリマックス・テレビジョンの浅野さん(プロデューサー)から「この6人を集めるドラマの企画があるんだけど、どう?」とお声掛けいただきました。

    いただいたんですが、「いやいや、こんなメンツ、嘘だろ!」と思いました。率直に。

    ――あまりの豪華さにそんな反応に……。

    そう! 夢で入れたキャスティングですよね? さすがに実現しないでしょ、と思っていました。「できるならやりたいっすよ!」と答えながら、正直信じてなかったですね。この頃はまだシェアハウスと決まっていたわけではなくて、恋愛ものになる可能性もありました。

    ――いつまで半信半疑でした?

    もう本当に直前、顔合わせまで信じきれてませんでしたよ。12月頭ですね。その日も「脚本刷ったはいいけど……本当に集まるのかな?」と言っていた気がします。

    数時間後、いざ目の前にズラッとそろった6人を見て、存在感に圧倒されました。あらためて「えっ、この人たちの監督するのか」と気付いて、すごいことになったぞ、と……。

    ――6人全員と初めてのお仕事です。どんな気持ちで臨まれたのでしょうか。

    浅野さんからは「誰か一人に重心を置かずに、全員を主役に」「今までみなさんがやってきた役の延長ではなく、違った角度から『こういう6人を見てみたい』という目線がほしい」とオーダーがありました。

    世代が一回り以上離れているのも、その意味ではよかったと思います。例えば、LINEやスマホは自分にとっては当たり前だし日常を描くには絶対に必要なものですよね。そんな身近なことでも、自分にとっては父親世代のみなさんがやると、どこか温かみがある。

    リアリティを持って「こんな○○さんが見たい」を探っていけるのが僕が監督をした意味かなと思っています。1話だと誕生日のサプライズパーティーなんかそうですね。大杉さん、サプライズなのに隠れきれてないよ! って下りも「こんな大杉漣が見たい」に近いです。

    確かに、最初にお声かけいただいた時は「何の関係もない僕でいいのかな」と頭によぎりましたが、何より単純にわくわくしましたね。間違いなく面白くなる確信がありました。

    予想を超える演技、どう撮るか

    ――撮影は12月末にスタート。ギリギリの撮影スケジュールも大変だったのでは?

    1月13日の第1話放送に向けて、館山で撮影して、東京で編集して、夜には後半の脚本の会議をして……いやー、この年末年始は記憶があんまりありません。正月だってことを思い出して「福岡(実家)に帰りたい……」ってなってました。

    ――監督として、役者としてのみなさんにはどんな印象を抱きましたか。

    ……すごい俳優です、みなさん、本当に。

    なんだろう、脚本を、楽々超えてくるんですよ。こういう感じになるのかな? とこちらが準備している想像をはるかに超えてくる。見せ場になりそうな場面をあえてさらっと流したり、なんでもないシーンを面白くしたり。

    自分の器量では追いつけないキャリアと実力と経験を感じて、毎日「どう撮ればいいんだろう?」の連続でした。

    向こうからの提案の方がずっとよいことも多いので、みなさんのお芝居を見ながら常に考え続けていましたね。全然、用意した通りにいきませんでした。

    ストーリー的にも、当初はさらにミステリーやサスペンスの要素が強くてもっとギチギチの内容だったんです。僕らスタッフが欲張って詰め込みすぎた分を、6人にうまく引き算してもらった感じですね。そのバランスが結果的にテンポのよいドラマになったかなと思います。

    「バイプレトーク」の秘密

    ――撮影が始まってから変更になった点もあったのでしょうか。

    本編の後に数分入る、役を離れたトークコーナー「バイプレトーク」は現場に入った後、6人からの提案があって追加した部分です。

    この6人がそろっていること自体に意味があるので生かしたかったのが第一の理由。加えて、「本人役」ならではの演じる難しさを減らせればという部分もありました。

    フィクションとノンフィクションの境があいまいなので、テレビの向こうに誤解されないか、演じててストレスになる部分もあるんですよね。素の姿で「共演NGなんてないよね〜」なんて話せれば、見てる方にも伝わりますし、息苦しさもなくなる――と、ご提案いただいたのでした。

    ――みなさん本当に楽しそうで、もっと見たい! と毎週思っています。

    演出されていないことに意味があるので、カメラもさりげなく回しているだけで、本当にお酒を飲みながら自由に話していただいています。1時間くらい回すのを4回撮ったかな?

    なるべくラフな感じにしたいのでスタッフにも「ダイニングで普通に作業してて」「構わず後ろを通って」と言うのですが……やっぱり6人の後ろは通りにくいみたいで。無理矢理、自分が通ったりしました(笑)。

    #バイプレイヤーズ がまさかのアニメ化!? シェアハウスで暮らす6人のオジサマたちが、かわいいアニメになりました。なんと!全員の声をジャスミンが担当. ちょっと動く! #バイプレアニメ ww をぜひお楽しみください! #拡散希望… https://t.co/WCQOHW5mCs

    オンエアの反響を見て演出を変えた部分もありますよ。

    松重さんが大杉さんを招待するLINEグループは、1話にだけ登場して脚本の上では忘れられてたんですが「面白い」「かわいい」の声が多かったので「もっと使おう」となりました。

    なので、後半、かなり大活躍していると思います。LINEスタンプも作っちゃいましたし。

    #バイプレイヤーズ 公式LINEスタンプ発売! みなさんのありがたいお声のおかげで、劇中で使っていた"あれ”が発売されることになりました!個性豊かなバイプレイヤーズたちの様々な表情、メッセージが満載です。みなさんの日常をこのスタン… https://t.co/NaXa8IRI8r

    男子高校生ノリに「愛おしいなぁ」

    ――視聴者の方の反応はご覧になってますか?

    めちゃくちゃ見てます、ずっとTwitterでエゴサーチしてます、病気のように(笑)。

    「バイプレイヤーズ」絶対面白い! と放送前から確信していましたが、予想以上に反応がよくて本当に安心しました。「見てます」も今までで一番言われますね。こんなの初めて、というくらい言われます。

    これまでの作品も自信持ってやってきたわけですが、正直メジャーとは言いにくかったので。6人の胸を借りる以上、ちゃんと盛り上がってほしかったのでよかったです。

    Twitterでは、ハッシュタグ付きの投稿はすべて読んでます。ここが「かわいい」って言われるのか! と、びっくりすることも多いです。

    あと「#バイプレ絵」のハッシュタグで絵も描いてくださってるじゃないですか。それもうれしいですね。浅野さん、飲んでるとみなさんに見せたりしてるので6人もご存知だと思いますよ。

    ――「かわいい」の反応には監督はどう感じていますか? 浅野プロデューサーにお聞きした時は「全然そんなつもりなかったのに」と戸惑っていました……(笑)。

    うーん……いや僕も正直わからない、かわいいのか? と思ってしまいますが(笑)でもみなさん楽しんでいただけているならよかったです。ありがたいですね。

    「かわいい」ではないですが「愛おしいなぁ」と思うことは撮ってて何度もありました。カメラ回ってない時間も、ごはんの話してたりエロい話してたり、男子高校生の昼休みみたいな感じなんですよ。

    僕もモニタ見ながらにやにやしたり、げらげら笑ったり。男たちがバカやってる空気は好きだなぁと思いますね。楽しかったです。

    こんなところにも小ネタが

    ――ファンの方は本当に細かいところまで見てるなぁと思うのですが、逆に「ここにネタ仕込んだのにあんまり気付かれてない!」という箇所はありますか?

    ええと、サンダルです。テラスに出るサンダル。実は6人全員色が違うんです。メンバーカラーになってるんです。

    ――そ、そうなんですか! アイドルみたいですね?

    あまり映らないのですがぜひチェックしてほしいです。ポスターの歯ブラシの色とも同じです。ついでに言うと、イニシャルが入ってるマグカップも同じ色ですよ。

    ――遠藤さんがピンクなんですね。

    遠藤さんは乙女なので!(笑)というのもありますが、10年前の「バイプレイヤーズ」の役名とリンクしているんです。白田、桃井、緑川……とか。あれ、もしかしたらこの名前、最後まで出てこないかもしれません。裏設定ですね。

    続編、ありますか?

    ――いよいよ物語も佳境ですが、終盤は一体どうなるんでしょうか。

    ここから予想だにしない展開に、壮大な話になっていきます。世界最高峰のあの賞やあの大ヒット映画のパロディなんかが……。

    僕は最終回、12話の前半がぶっ飛んでて大好きです。ぜひ最後までよろしくお願いします。

    ――すでに続編を望む声もあがっていますが、その可能性は。

    それはもう、ぜひやりたいです。クランクアップのあと、キャストやスタッフのみなさんとそんな話をしました。

    大杉さんが打ち上げでかけてくださった言葉が本当に嬉しかったですね。

    「また6人で集まるとしたら、ひとつだけ条件がある。この同じスタッフでやってほしい」「若くて至らないところもたくさんあるけど、いいところもたくさんあるんだよ」――って。

    僕も泣きそうでしたが、そう言った大杉さんが「俺、こういうのダメなんだ」って涙ぐんでて。その様子を見てみなさんが集まってきて「漣さん!」と声をかけているのがドラマの続きのようでした。