現在放送中のドラマ「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」。日本を代表する“名脇役”6人が、理由あって同居することになる「おじさんたちのテラスハウス」です。
奇跡の共演! といえる名だたる名俳優たちが本人役で出演。
「もしかして、素なの?」と思ってしまうドキドキ感、テレ東ならでは(?)のパロディやキレあるツッコミ、役所広司さん、荒川良々さんなど毎話豪華なゲストの数々……。
そして何より、ドタバタな毎日を過ごす6人のおじさんたちがすごくかわいい!!
超豪華なメンバーが全力でふざけるこのドラマ、一体どうやって生まれたんですか?
企画を立ち上げた、ドリマックス・テレビジョンの浅野敦也プロデューサーに、アイデアが生まれた経緯、撮影現場での裏話を聞きました。
6人の絆はドラマ以前から
――「6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら」。サブタイトルになっているこのアイデアはどう生まれたのでしょうか。
実は、6人はこのドラマが始まるずっと前から、縁と絆があったんですよ。
直接的なきっかけは、数年前に読んだある座談会です。2002年秋に下北沢で開催された映画祭「6人の男たちフィルムズ」の壇上で、この6人が「10年後にまた会おう」と話したことを受け、実際に集まった――という内容だったんですね。
その記事を読んで本当に感動して……。10年変わらず第一線で、どころか、さらにパワーアップして進化し続けているのはめちゃくちゃかっこいいな、と心から思ったんです。
たまたまそのその直後に、松重豊さんのマネージャーさんにお会いする機会があって「記事読みました、6人で映画撮ったらどうですか」と熱く話しかけてしまって。
「本人たちにはその気はあるんだけどなかなかそんな機会がないんです」という話から「じゃあ僕がやりますよ!」と冗談半分で返しました。
そこからですね、6人のドラマや映画を作るなら? を本気で考え始めました。
――構想から数年かかったのは、スケジューリングの難しさから?
いや、企画ですね。芸達者な6人をどう生かせるか、頭を捻りました。何せ、全員なんでもできちゃうんですよ。6人が集まるからこそできることってなんだろう? と。
いろいろ考えて、結局、この企画の魅力は「このメンバーがそろう」それ自体だなと行き着きました。
これまでたくさんの役を演じてきた人たち、と誰もが知っている。その上で、あえて「本人役」として素の姿を“演じて”もらう。どこまで演技なのかわからない面白さを視聴者とも共有できると思ったんです。
山田孝之さんの「東京都北区赤羽」はじめ、フェイク・ドキュメンタリーの手法もこの数年でだいぶ一般的になってきた。公式Twitterでも「おじさんのテラスハウス」と銘打ってますが、テラスハウスも参考にしてますし、絶対に言わせたかったので、1話のセリフとして入れました(笑)。
とはいえ、完全にフィクションであることがわかるように、とは思ってますね。「ウソだろ〜ドラマだろ〜!」と視聴者が思ってくれる信頼関係があるからできるドラマです。アドリブもありますが、基本ベースの脚本はかなりしっかりしています。
――本人役ではあっても、あれが素ではない……という。
そう、違います! 誤解しないでくださいね、光石研さんが不倫するわけないし、田口トモロヲさんはゲルゲドリンクを飲んでいません!(笑)
みなさんお上手なので自然ですが、ずっと全部、演じているんですよ。本当はもっとちゃんとした、かっこいい大人です。かっこいい大人たちがバカなおふざけに付き合ってくれているという……贅沢ですよね。
毎日6人で晩酌「合宿みたい」
――それぞれにお忙しい6人、予定を合わせるだけで大変だと思います。具体的に企画が動き始めたのはいつ頃だったのでしょう。
1年くらい前ですね。テレ東さんにこの企画を持ち込んだ時も「すっごい面白いけど、絶対6人集まらないでしょ?」と言われました。
でも僕はすでに6人に絆があること、いつか映画を作りたいと現実に思っていることを知っていたので、それを踏まえてオファーしたんです。
そしたら、各事務所のマネージャーさんが本当に喜んでくださってですね……。「そういう機会をずっと待っていたんです、作ってもらえてありがたい」とすら。多忙な中、年末年始を含めて無理くり1カ月半の撮影期間をこじあけてもらって、なんとか実現にこぎつけた次第です。
あるゲストの方は、現場で6人と対面して「うわ、本当にそろってる!」と笑っていました。テレビに出演する側の人がそう思うくらいですから。
――本編終了後に「本人」として晩酌しているトークコーナー、すごく楽しいです。……ガチ飲みなんですよね?
ガチ飲みです! 衣装も基本自前ですね。そこまでが完全なフィクションであることが、よりくっきりわかってもらえるのではないでしょうか。
晩酌シーンの撮影中に松重さんの誕生日をお祝い
実はこのトークは撮影が始まってから追加したコーナーで、現場でみなさんから提案があったんです。一役者としてそれぞれ引き出しも多いですし、普段顔を合わせる機会が少ないからこそ面白い裏話もたくさん出てくる。ぜひテレビの向こうにもお届けしたい、と。
本当に仲がよくていい現場なんです! 伝わっていればいいのですが。
――伝わってます! 部活やサークルの部室みたいなノリですよね。
本当に合宿みたいだったなぁ。館山のシェアハウスで何日も撮影していたのですが、必ず毎夜6人で飲みに行っていました。晩酌シーンを撮った日も変わらず、プライベートでも飲んでたんじゃないでしょうか。
かなり過密なスケジュールでしたが、百戦錬磨の俳優さんですし、チームワークがいいので、予定より早く撮影が終わる日も多かったです。
現実の本人と役が一番近いのは?
――脚本を作る上で意識した部分はありますか?
ご本人の個性をデフォルメして、うまく「本人役」にすることですね。光石研さんはすごく愛される人なので「やたらとモテる」設定にしてみたり、エンケン(遠藤憲一)さんの心配性な部分をふくらませてみたり。マネージャーさんにいろいろヒアリングして作っていきました。
――最も現実のご本人とキャラクターが近いのはどなたですか?
誰でしょう……遠藤さんかもしれないですね。強面ですが、心配症で人懐っこくて、気さくなおしゃべり好き。
反対に、最も遠いのは、田口さんです。ご自身でも、自分と全然違うキャラクターで演じやすいとおっしゃってますね。マネージャーさんが「うちの田口は宇宙人で」とおっしゃっていたことも生かしているんですが……さすがにあそこまでではないと思います(笑)。
あとは、きゃっきゃとふざける、常にわちゃわちゃしている全体の空気は意識していました。渋くてかっこいい部分をそのものズバリ見せなくても、学生ノリの中で役者としての格好良さや貫禄が立ち上る方たちなので。
少しだけ自由にできる箇所も混ぜて、実際の関係を投影しています。お互いの名前の呼び方も、顔合わせのタイミングで普段と同じになるよう6人で修正しあっていましたね。(大杉)漣さんが松重さんを「まっちゃん」と呼ぶとか、そのあたりはリアルです。
――確かに、一体どこからアドリブ? と思っています。
例えば、2話で荒川良々さんと松重さんが出会うシーンで「重版以来だよね?」というシーンがあるんですが、あそこはアドリブです。
「局違うけどいいかな?」「うーん、いいんじゃないですか?」と決まりました(注:2人が共演したTVドラマ「重版出来」のこと)。
それから、1話では役所広司さんと光石さんが同郷ということで、方言で会話していますが、ここは役所さんからのご提案でした。
松居大悟監督も松重さんも九州出身なので、その後、光石さんと松重さんの会話も方言混じりになっています。「方言」は今後キーになってくるんですが……ネタバレなのでやめておきましょうか。
あとそうだそうだ、1話のラストの朝食のシーン。寺島進さんが松重さんに「松重〜! またパン〜?」て文句をつけるシーンは、あれアドリブです。ご本人が本当はどちらがお好みかはわからないですが、「寺島進役」としてのリクエストですね(笑)。
僕、あのシーン大好きで。そのセリフがあったので、2話以降では美術スタッフが和食のメニューも用意しています。
「かわいいって言われてますよ」
――そのシーンも含め、女性視聴者は「おじさんたち、かわいい!」と盛り上がっていますが、お耳には届いているでしょうか……?
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そうなんですよねぇ、予想以上の反響でびっくりしました。おじさんたちのキュートな部分を見せたいなとは思っていたのですが、かわいく作ろうとは思ってないので「え、こんなに!?」って感じです。
松重さんをかわいく見せようとしてエプロンつけたわけじゃないんだけどな……とかは思いますが(笑)盛り上がっていただいてありがたい限りです。
――6人のみなさんの反応は。
エンケンさんは「強面キュート」と言われることも多いようで比較的慣れてるんじゃないですかね。……慣れてるってなんだろう。
松重さんに「なんか、かわいいって言われてるみたいですよ」ってお伝えしたら「やめてくださいよ〜!」ってすっごい照れられました。
――「かわいい」と言えば、5話でアイドル風のダンスを披露したのにはびっくりしました。
これはほんとに、ねえ!(笑)他の作品であんなにシリアスで重厚な演技をしている重鎮たちに、こんなに全力でふざけてもらうなんて……あらためて申し訳ない気持ちとやりきった気持ちが。
素晴らしい俳優さんたちにブレザー着せちゃったよ! っていう。
最初は「こんな年でダンスやるの?」「流行にのってる風なのもなんだかなぁ」という空気でしたし、きっと「俺たちそんなんじゃないよ〜!」と内心思っていたでしょうに、華麗にやりとげてくださいました。
振り付けの練習の時も「そろわなくてもいいです!ダンスしてること自体が面白いので!」と伝えていたんですが、いざ本番になると……さすがプロですね、みなさんしっかりそろってました。
撮影後、漣さんに「どうだった?」って聞かれて「すごいちゃんとやってて驚きました!」と答えたら「だろ? 俺たちやるときゃやるんだよ」って。かっこいいですよねえ。
――大杉さん、65歳なんですね。あらためて年齢を拝見しておどろきました。
漣さん、本当にお若いんですよ、空き時間があるとサッカーしてます。
――さ、サッカー!?
そうです、外でサッカー。寒いのに。
4話で首でフラフープまわすシーンがあるんですけど、あれ、漣さん自身の得意技なんですよ。空き時間にそうやって遊んでて、みんな真似してやってみたけどできなくて「すごいですね!」って盛り上がってたら、本番でちゃっかりやってました。
――ええ……! てっきり、大杉漣さんにここまでやらせてしまうバイプレイヤーズスタッフすごい、と思ってました。
違うんです、スタッフがやらせたわけじゃありません。漣さんのサービス精神の賜物です。
6人の中でも意外と年齢差があるんですよね。一番若い、寺島さん(53歳)や松重さん(54歳)とは一回り違うのかな?
2人も「僕ら若手なんで早く現場入ります」とか言って。若手って……(笑)。そういう雰囲気です。
――そろそろ放送も折り返しですが、今後の見どころは。
後半、さらにゲストがすごいです。ここまでも十分豪華なのですが、さらにすごい。「この人出るわけないでしょ?」という人が登場するのでぜひ楽しみにしていてください。
「出たいです!」と逆オファーしてくださる方も多くてありがたいですね。スケジュールが合わずにお断りした方も何人もいますし、もう一回出たい! という声をいただいて出番を再度作った人もいます。終わったかな? という人がおかわりで出てきたり……そのあたりも注目です。
ストーリーとしては、行方がわからなくなってしまった10年前の自主制作映画のフィルムを巡る物語が徐々に大きくなり、謎が少しずつ解けていきます。
が、全体のテンションとしてはシリアスにはならず、ずっとこんな感じ。むしろおふざけは加速しながら進んでいきます。肩肘張らず、「おじさんたちの青春ドラマ」を和気あいあいとゆるーく楽しんでもらえればと思います。