小児性愛者を「合法的に手助け」する人形に問題は? 海外から批判

    社会は小児性愛者にどう向き合うのか。

    小さな子供に対して性欲を抱く小児性愛者のための人形を作る工場が、東京都八王子市にある。少女に似せた身長や外見を持つ人形は、1体約70万円。この人形が海外に輸出され、大きな議論を呼んでいる。BuzzFeed Newsは代表者に話を聞いた。

    小児性愛者のための人形を販売することは、是か否か。世界的な議論を巻き起こすきっかけとなったのが、2016年1月の米誌The Atlanticのインタビュー記事だ。

    この記事の中で、工場「TROTTLA」の代表、高木伸氏は小児性愛者の「欲望を、合法的に、そして倫理的に表現できるように手助けしている」と述べている(The Atlanticの記事では、高木氏が自身が小児性愛者だと告白したかのような表現がなされている。しかし、高木氏は「ここは誤訳で、自分は小児性愛者ではない」とBuzzFeed Newsの取材に答えた)。

    この記事をきっかけに、海外では、高木氏が作り出す人形が「病だ」「小児性愛を正当化してしまう」などと、批判が殺到した。

    オンライン署名サイトChange.orgでは、「CHILD SEX DOLLS ARE NOT A GAME(児童セックスドールは遊びではない)」と、オーストラリアへのTROTTLAの人形の輸送を禁止するよう呼びかける運動が起こっている。

    BuzzFeed Newsは高木氏に取材を申し込み、メールで返答を得た。


    高木氏は「人体の正確な再現」を目指して人形を作り始めたという。小児性愛者向けの人形を作り始めたのは、顧客との交流を通じてであり、「小児性愛者の救済や社会貢献の可能性に気づいた」と表現する。

    もともと、大人ではなく子供の人形を作っていたのは、体積の少ない子供の方が安価で制作できるからであり、男児ではなく女児をモデルにしたのは「女児の方がヘアスタイルや服飾のバリエーションがより多く、一つの開発モデルで多様な表現展開をしやすい」からだと説明する。

    高木氏は、顧客との交流の中で「小児性愛を理由に人形を買う人が7割以上だと知った」と語る。そして、新規開発のために顧客とやりとりをする中で、ある事実に気づいた、という。

    「彼らは近代において自身の性癖を反社会的なものであることを自ら理解し、深く悩み、傷付き苦しんでいるという事実です」

    「彼らは社会に害をなすモンスターでしょうか?それとも良心の欠落した異常者でしょうか?答えはどちらも当てはまりません」

    高木氏は、彼らが一般的な社会生活を営んでいる、と指摘する。「きちんと働き納税し、社会生活を営み国家や社会に貢献している」のだと。

    「人権団体が主張するような底辺の犯罪者ではなく、法律を護り模範的な社会生活を送る良き市民であるということを理解しなければなりません」

    「近代のキャンペーンは、小児性愛者をまるで怪物かテロリストの如く叫断しますが、事実は異なります。もちろんそのような凶悪な人間も、世界にはまったくいないわけではありません。しかしそれはごく一部であり、それをもって小児性愛者のイメージを固定するのは差別的意識が働いていると言わざるを得ません」

    「創作の世界での欲望の解消を求めている」

    人形を購入することにより小児性愛を正当化してしまう、という批判を高木氏はどう受け止めているのか。

    「子を持つ親の気持ちは、私も大変良く理解できます。しかし、人間というものは、自己と愛するもの、大切なものを護るためには他人に対していくらでも残酷になれるものです」

    「その人たちが作り出したイメージ、つまり小児性愛者はこうであって欲しい、という印象が独り歩きし、その延長でできあがった怪物が、今の社会における小児性愛者のイメージに他なりません。これは、実態とはかけ離れた間違った考えであり、単なる差別、集団ヒステリー以外の何でもありません」

    「多くの小児性愛者と呼ばれる人達は、怪物などではなく、良き市民であり遵奉精神を持っています。だからこそ、彼らは現実世界では法を守り、自己を抑制しコントロールしています。そして自己の欲望の制御の一環として、私の造る人形を始め、創作の世界での欲望の解消を求めているのです」

    大人は、子供と同様に護られるべきであると高木氏は主張する。

    「子供たちを護るのは社会の努めであり、それは全世界どこでも変わらないことでしょう。それは当たり前のことです。しかし私は言いたい。大人は護らずとも良いのでしょうか?少なくとも、その様な性癖を持っていたとしても、それを抑制し、制御できる精神を持つ者を異常者扱いすることは大きな間違いです」

    「人間の欲望は絶対に消し去ることはできません」

    人形で小児性愛者が欲望を満たす。これは、性的衝動をより高めてしまうのではないか。

    「人間の欲望は絶対に消し去ることはできませんし、他者がそれを変えることも不可能です。ましてや、生物としての根源的な欲望である性欲に関しては、いかなる方法を持っても変えることはできません。しかし、変えることが不可能でも、それをコントロールすることは可能であると考えます」

    「現代は欲望を禁止、抑制することからコントロールすることにシフトしていくべきだと私は考えます」

    高木氏は、それこそが自らが目指していることなのだと主張する。

    「彼らの欲望を解消するためには、中途半端な造型では足りません。それは逆に良くない方向、さらなるリアリティを求めて本物の人間に欲望の対象を移しかねない危険を誘発し得ます。大切なのは、本物と誤認させ得るくらいの圧倒的なリアリティです」

    高木氏の論点を裏付ける科学的根拠や心理学理論はない。だが、高木氏はどの専門家よりも多くの小児性愛者だと自認している人々と接し、事実を知ることができていると述べる。

    「完成度を持った人形だけが、彼らの欲望を完全に解消させることができる力を持ちます。私の造る人形は世界でただ一つ、その領域に到達していると自負しています」

    社会と小児性愛者

    欲望の誘惑に苦しみながらも、自己を抑制している小児性愛者たちに手を差し伸べたいと高木氏は語る。

    「『不足を知る者は足るものである』。自らの性癖を認め、制御し実社会に対して迷惑を掛けないで生きていける者は、危険な存在ではありません。だからこそ、社会は偏見を無くし、彼らを助けなければなりません」

    児童に対する性的犯罪が後を絶たない中で、小児性愛者への世間の視線は非常に厳しい。

    高木氏自身が「彼らの欲望を解消するためには、中途半端な造型では足りません。それは逆に良くない方向、更なるリアリティを求めて本物の人間に欲望の対象を移しかねない危険を誘発し得ます」と語っているように、小児性愛を想起させる人形への社会的な反応も当然、厳しくなる。

    Change.orgでこれらの人形に反対する署名を集めているオーストラリア人のMelissa Evansは「子供たちへの性的虐待に対する抑止力として、本物そっくりの人形が決して適切であるとは信じません」と記している。このページには4月11日現在、5万5千件を超える署名が寄せられている。

    訂正

    当初の記事では、The Atlanticの中で、高木氏は自身を小児性愛者だと告白したと記していましたが、BuzzFeedの記事公開後、高木氏からBuzzFeedに「この部分はThe Atlanticの誤訳で、自分自身は小児性愛者ではない」と申し出があり、本文を修正しました。