「抵抗は終わらない」 トランプ政権が覆したこと 炎につつまれ、人々は去った

    「ノースダコタの高江」と呼ぶ人もある「ノースダコタ・アクセス・パイプライン」建設反対運動。SNSも巻き込んで大きなうねりとなった。

    数ヶ月間続いたダコタ・パイプラインに反対する抗議運動。命令を受けて、2月23日に最後の抗議者が退去させられた。抗議を続けた人はこう言い残した。「抵抗は終わらない」

    ダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)

    ダコタ・アクセス・パイプラインは、ノースダコタ州からイリノイ州まで石油を運ぶ。1886キロの建設はほぼ終わっている。

    ノースダコタ州はシェールオイルなど石油開発が盛んな地域。政情不安な中東からの輸入に頼らずにエネルギーを賄うことはアメリカの安全保障政策上も大きな意味を持つ。

    ノースダコタ州の先住民スタンディング・ロック・スー族は、パイプラインが、歴史的・文化的に重要な土地や神聖な水源を横断するとして、一貫して計画に反対してきた。

    昨年4月、スー族の居留地近くにキャンプ(野営地)を設置して抗議。8月、これを支持する人たちがアメリカ国内外から集まり「オセチ・サコウィン・キャプ」(野営地)ができた。その数は数千人規模に膨れ上がった。

    アメリカには、先住民たちが土地を奪われ、居留地に押し込められてきた歴史的背景がある。

    歴史的勝利

    抗議運動は昨年12月、大きな転換を迎える。陸軍省が12月4日、ミズーリ川のダム湖「オアへ湖」の地下にパイプラインを通す計画を認可しないと発表した。先住民の水源を汚染する可能性があるという理由で、ルートの変更の必要性に言及した。

    「歴史を正し、正義をなしたオバマ大統領、陸軍、司法省、内務省に最大の感謝をする」。スー族のデーブ・アーチャムバウルト会長は声明を出した。

    歴史的な勝利だった。

    トランプ大統領

    だが、トランプ大統領がこの決定を覆す。1月24日、建設を推進する大統領令に署名した。雇用を生む効果を強調した。

    これを受けて陸軍省は2月7日、建設を許可すると発表。ノースダコタ州のバーガム知事は15日、野営する人々に退去させる命令に署名した。雪解けによる水害の恐れがあるという理由だった。陸軍工兵部隊は、退去期限を22日午後2時と命じた。

    ノースダコタ州警察のトム・イバーソン氏はCNNに対して、野営地に残っている人たちに無料で健康診断を提供し、移動のためのバスを用意すると話した。「警官だけではなく、集まってきた人たち、抗議してきた人たち、みなの安全を守る必要があります。人々の安全。これが大切なんです」

    苦渋の決断

    抗議を続けてきた人たちは苦渋の判断を迫られた。BuzzFeed Newsに逮捕のリスクは犯せないと話すひとたちもいた。

    Emotions are running high as some water protectors choose to leave. A hard decision to make, but some can not risk… https://t.co/utS7WweIYa

    「歴史的に、やつらがこれから何をするか分かっている。力づくで、残忍に、向かってくる」。コルビル・ネズ・パース族のダン・ナナムキン氏は21日夜、BuzzFeed Newsに話した。

    「今夜は生涯忘れない、大切な夜となろう」

    From last night at the Oceti Sakowin camp at #StandingRock. The Army Corps of Engineers ordered demonstrators to cl… https://t.co/kH5siYJ1Mk

    抗議をしてきた人たちは22日、建物に火を放った。伝統的な儀式で。

    シアトルタイムズによると、ロウワー・エルワ・クララム族のバネッサ・キャッスル氏は「最後の祈りを捧げ、神聖な炎にスギをくべ、儀式によって築いた建物を燃やした」と話した。

    「ブルドーザーによって壊されるわけにはいかない。悪意のこもる手に触らせるわけにはいかないのです」

    モーガン郡警察のマクシン・ハー広報担当官はBuzzFeed Newsに22日、業務妨害の疑いで10人の身柄を拘束したと話した。

    警察は5時半ごろまでにはキャンプエリアから撤収したようだった。

    数は少ないものの、まだ退去命令を拒んで残る抗議者たちもいた。火を起こして暖をとり、夜を徹して残ると話す人たちもいた。

    「明日朝に(陸軍工兵部隊)が現地に向かい、撤去作業をする予定です」「(抗議している人たちには)自主的に立ち去ってもらいたい」とハー広報官。

    最後の日

    警察は高速1806号線沿いに列をつくり、最後まで抵抗を続けた抗議者たちと向かい合わせになった。

    AP通信は、5人ほどの警察官が男性1人を地面に押さえつけている様子を伝える。

    「逮捕し始めるのなら、私たちを脅したいだけなんです」。ある抗議者はBuzzFeed Newsに話した。

    AP通信によると23日、オセチ・サコウィン・キャンプで46人が逮捕された。

    キャンプで抗議を続けてきた人たちは完全に退去させられた。

    建設反対へ新たな闘い

    抵抗を続けたノア・マイケル氏は立ち去る前、運動を支持した世界中の人たちに感謝を述べ、こう話している。「このキャンプ、土地にとっては、最後の日です。でも、パイプラインとの闘い、私たちが信じるものについては、今日は始まりでもあるのです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。