熊本地震で被災し、震度7を経験した私が、災害時に必要だと思ったものをまとめた。
震度7はとても怖い。
4月16日午前1時26分。2度目の大地震、「本震」の瞬間、私は新聞記者として、被害の大きかった益城町の役場駐車場にいた。
とてつもなく大きな破壊音があたりに響く。はいつくばらないと体が飛ばされるくらい激しく、地面が揺れた。
地響き以外の音は何も聞こえず、両横にあったトラックは大きく弾んでいた。地面をつかむように、抱きつくようにしながら地震が去るのをただ待った。
数十秒続いた揺れがようやく収まれば、あたりは真っ暗に。どこからかガスが噴き出す音が聞こえ、助けを求め泣き叫ぶ声も聞こえた。
役場庁舎からは砂埃が立ち上り、見たことのない地割れもできている。揺れの勢いで、パンクしたり、リアガラスが全壊したりした車もあった。
あれほど死を意識した瞬間は、これまでにない。
そのうえで、何が必要だと感じたか。
自宅マンションは被災し、暮らせる状況ではなくなった。直後の数日間は食べ物だってままならず、シャワーやトイレにすら困る日々が続いた。断水に至っては、2週間以上続いた。
①懐中電灯
ありきたりだけれども、本当に重要だ。被災地はとにかく、暗い。特に夜に大きな地震があり、停電したときの恐怖感は大きい。
どこに何があるかわからない。地震のあとは、あたりが埃まみれになって視界も悪くなるし、地割れや段差、崩落も増える。
スマホのライトを使うのも一つの手だ。ただ、バッテリーがなくなると使えない。小さな懐中電灯を持っていると、安心だ。
特にそれを思ったのは、避難所のトイレだ。仮設トイレには電気がないことが多い。スマホを持ちながら用を足すことは難しいし、口にくわえられるペンライトがあれば、と強く思った。
②携行食品、そして飲料水
やっぱり、お腹は減るし、喉も渇く。
特に腐ることもなく、カロリーのある食べ物は、重宝する。携行食品は甘いものが多いので、塩気のあるもの、例えば塩昆布なんかもあるといい。
私の場合、4月14日の「前震」直後にコンビニで慌てて買い込んだ食品が、数本のお茶と、キットカット。そしてなぜかレトルトカレーだった。
キットカットとお茶には救われたが、大量買いしてしまったカレーを食べようとした時に気がついた。お湯がないので温められないのだ。
数日すると、コンビニにも食料が入り、炊き出しも始まる。それまでをしのぐ携行食品は、常に手元にあると安心だ。
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③カッパや替えの下着
雨が降ったときのために、カッパがあると心強い。気温が下がる夜には、防寒着の役目も果たす。一石二鳥だ。
下着も、数日間も履き続けると、臭いや感触など、心地が悪くなる。洗濯できないのだから、どうしようもない。
震災直後のコンビニでは、真っ先に下着類が売り切れていた。常にいくつか常備しておけば、もしものときに役立つ。
車で1時間ほど先のコインランドリーをなんとか見つけ、ようやく洗濯ができたのは被災後、10日以上経ってからだった。
④毛布の代わりになる物
数日間車中泊を経験したが、やっぱり夜は寒い。眠る時に羽織るものは、絶対に必要だ。
私は防災バッグを車に積んでいたから、アルミホイルの保温シートを持っていた。これには、しばらく救われた。
避難所でも、中に入りきれず、外で寝るようなケースもある。特に夜が冷える季節はなおさらだ。大きなタオルの一枚でもあればどことなく、安心感も違う。
⑤電源
情報を調べたり、連絡を取ったり、スマホの電池は被災地で、すぐになくなる。
モバイルバッテリーはもちろん必要だ。もしあなたが車を持っているのなら、シガーソケットにつなぐ電源(インバーターやUSBタイプ)も役に立つ。
数日もすれば、避難所では携帯会社が設置した充電スペースも設けられる。でも、とても混雑するし、自分で充電できることに越したことはない。
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⑥ウェットティッシュや除菌アルコール
震災直後は、お風呂に入れない。手や顔も、なかなか洗えない。
ウェットティッシュや洗顔ペーパーなどは重宝した。被災地は土埃が舞うから余計必要だし、気分を少しだけリフレッシュする効果だってある。
感染症を防ぐために、「手ピカジェル」のような除菌アルコールも重要だ。食事前やトイレの後に毎回のように使用していた。
⑦FMラジオ
ラジオで聞く整理された情報は、役に立った。スマホでワンセグやネットラジオ、という手段もあるが、バッテリーが切れたらそこで終わりだ。
本震直後は、避難先の人たちと、一緒にラジオを聞いていた。
これが、震災直後の数日間を振り返って、私が必要だと思ったものたちだ。
被災した状況によっても、性別によっても、災害の種類によっても大きく差がある。
備えがあれば、憂いなし。いまは無駄だと思っていても、いつくるかわからない災害が来た時に、本当に役に立つはずだ。とりあえず、自分の防災バッグを用意しよう。
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