【意外な過去】ツインテールの野獣、退屈な青春時代を超えた今

    レディビアードが「暴挙」に走った理由

    「永遠の5歳」、レディビアード。

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    LADYBABY / Via youtube.com

    鋼の肉体、鋭い眼光、かと思えばワンピースを着て甘い笑顔を向けるツインテールのプロレスラー。こんな存在他にいるだろうか? 暴れ回る姿には、豪快奔放――そんな印象を抱く。

    しかし、彼の過去は意外なものだった。ファッションカルチャーマガジン「This!」で自身の青春時代についてこう語っていたのだ。

    「家族は弁護士や医者で、自分も理学療法士にならなくちゃいけないと思っていた。でも15歳の時に、全然理科がわからなくなって、興味のあった俳優になろうと思い、お父さんに俳優になりたいって行ったら、OKで。進学校の生活は楽しくなかったから、夢が見つかった事が嬉しかった」

    親のメンツと友人たちの目を気にしながら、抑圧された日々を過ごした10代が蘇った人もいるだろう。では、彼に何が起こったのか? レディビアードは、自身の軌跡をBuzzFeedに語った。

    ドレスを着ている時だけ、スクールカーストから抜け出せた

    ――どうして女装を?

    友だちが主催の制服パーティーがあって、その時に目立ちたかったんだ(笑)。14歳の時だね。僕は格闘技をやってたから、ガタイがよくて。そんな男子がドレスを着てるのってヘンでしょ? しかもみんなが制服を着てる中で。

    会場は「うわー! あいつ超ヤバい!」って盛り上がった。普段は地味な僕がみんなを楽しませている。最高! こんな興奮した時間、過ごしたことなかった。

    それから、イベントに行くときはドレスを着ていくようになったんだ。だから、単にみんなを楽しませたかったのがはじまり。

    ――地味な存在?

    そう。オーストラリアにもスクールカーストがあって、僕は底辺でもないけど、目立つわけじゃない。リーダー格から、からかわれる層だった。正直言って、そいつらがいる前で変な行動はできなかったね。

    加えて、格闘技のトレーニングが本当にきつかった。その時、いろんなことを悟ってね。先生の言うことをちゃんと聞いて一生懸命タスクをこなさないと、罰せられる。大人社会でも同じだよね。言われたとおりに働かないと給料は出ない。「真面目に生きなくてはいけない」そう思った。

    思春期って学校がすべて。しかも、僕は男子校に通っていたから、マッチョイズムの観念が強くて、「男らしくいなければ」という雰囲気があった。学校的には「タブー」なんだよ、女装って。

    ――それなのに、なぜドレスを着続けたのでしょう?

    反動……かな。仲の良い友だちのパーティーでドレスを着た時だけ人気者になれる。みんなも楽しい、自分も嬉しい。最高だよ。一方でリーダー層にそんな姿を見られたら、潰されるかもしれない。この禁忌感が、僕を「10代の暴挙」に走らせたんだろうね(笑)。

    でも、転機があった。学芸会で女装をすることになったんだ。それまでは、友だちの前でしかはっちゃけてこなかったけど、リーダー格の前でもその姿を見せる。正直、いじめられるかと思ったけど、めちゃくちゃウケた。

    ――不安は現実にならなかった。

    そうそう。むしろ受け入れてもらった感じ。ぶっ飛んでしまえば逆に楽しんでもらえる。縮こまっていても何も変わらない。そう思ったよ。

    「出る杭は打たれる」文化

    ――そんな学生生活の後、オーストラリアを出て?

    メルボルンの演劇学校に通っていた時に、ジャッキー・チェンのスタントチームの人に出会って香港に行ったんだ。外国人枠っていうのかな、地元で活躍するより目立てるでしょ。

    香港では、スタントマンの他にプロレスラーとしても活動していて。ある時、リング上でドレスを着てみたんだ。そんな奴いないから、みんな度肝を抜かれてた。「あいつ何者? ヤバくない?」って(笑)。制服パーティーと同じものを感じた。これはイケるって。それから人前に出るときはドレスを着ることに決めたんだ。

    香港で話題になったのを見て、日本に来ないかと誘われた。日本語はできなかったけど、中学生の時に見た可能性だけを信じてね。

    ――順風満帆。

    そう言えるかもしれない。でもオーストラリアに帰った時に難しさを感じた。地元の人に仕事の話をすると、驚かれたり、引かれることもあったからね。出る杭は打たれる。これはオーストラリアにもあるんだ。

    異国の地でそれなりに活躍していたんだけど、身近な人たちの全員が喜んでくれるわけじゃなかった。でも、自分がやってきたことに誇りを持っている。だから思うよ、賛同してくれる人に感謝しようって。

    ――日本はどうですか?

    日本のファンは、本当に最高。僕は、プロレスラーであるのと同時にベジタリアンなんだ。だからタンパク質をたくさん摂らなくちゃいけない。そんな僕を気遣って、ファンが事務所にひよこ豆を60缶贈ってくれたこともあった。信じられないよ。本当にありがたい。

    香港や日本で話題になったのは、自分がオーストラリア人だからだと思っていたんだ。外国人だからみんな優しいんだって。でもそれも違ったんだ(笑)。

    ――どういうこと?

    欧米でパフォーマンスすることもあって。そこでは、僕は外国人枠じゃないから不安もあった。道徳的に批判されるかもしれない。そんなことも思った。でも、思いのほか好意的に受け取られたんだ。

    中途半端なキャラクターだったらバッシングされていたかもしれない。多分、ぶっ飛び過ぎてて、反感の枠を超えたんだとお思う(笑)。純粋に面白がってもらえる。いずれは世界にも出たい。こんなこと、中学生の時には考えられなかったけど。

    ――スクールカーストを超えた先に、今が?

    枠を越えてしまえば人は案外受け入れてくれるんだって、そう思うよ。

    ――心強い言葉。

    あはは。そうだね。だってさ、「かわいらしさ」って強さがないと得難いものでしょ? かわいい人はみんな強い。枠から飛び出るくらいにね。