初めて囲碁のプロ棋士を破って話題を集めた人工知能「AlphaGo」。ついに3月9日、「世界最強」と恐れられる韓国のイ・セドル9段(33)との初戦に臨んだ。大方の予想を覆し、AlphaGoが初戦を制した。
AlphaGoはDeepMind社(ロンドン)が開発したコンピュータープログラム。Googleが2014年に同社を買収した。
AlphaGoは昨年10月、3度欧州チャンピオンに輝いた棋士と対戦して、5戦全勝。真価を試すために、世界最強と呼び声の高いイ・セドル9段と戦った。
対局はライブ配信され、YouTubeで約10万人が視聴した。中盤まではイ・セドル9段が有利だという見方が大勢を占めていたが、AlphaGoの勝利に終わった。
イ・セドル9段
公式配信番組で対局を解説したマイケル・レドモンド9段は、「大きな驚きだ。 最初はイ・セドルが勝つだろうと思った。中盤は(イに)有利にみえたが、どちらが勝つかわからない状況だった。終盤も複雑だった」と振り返った。
マイケル・レドモンド9段(右)
ニコニコ動画は、ユウ・ホウ6段や大橋拓文6段らのライブ解説を配信。ふたりは3時間余りの段階で、AlphaGoが勝ったと判断した。ふたりは「強いね」「ビックリですね」「われわれはプログラムを手に入れて、勉強しましょうかね」と笑いあった。
人間が完敗の予測も……
大橋6段は対局後、BuzzFeed Newsの取材に対して、「希望を込めて人間が全勝すると思っていた。だが(AlphaGoは)異常に強く、正直、人間が全敗してもおかしくない」と話した。
大橋6段に対局のポイントを解説してもらった。
・AlphaGoは意外な手が多かった。一見、イさんが勝ったとみえたが、10手、20手ぐらい進行すると、その不思議なAlphaGoの手が効いていた。人間の棋士ではみたことがない手で、人間の常識と違っていた。
・イさんは7手目で珍しい手を打った。AlphaGoが学習していることを外そうとしている意図がみえた。対してAlphaGoは10手目が珍しかった。振り返ると、この7手目と10手目の組み合わせがAlphaGoにとって悪くなかった。
・AlphaGoの手は人間っぽかった。今までのコンピューターにはないことだ。「Aですか、Bですか」というような相手の様子を聞くような手だった。これまでは結果を求め、直線的で短絡的だった。
・明日の対局が重要。人間とAlphaGoの先攻と後攻が入れ替わるので、両方のパターンで強さがわかる。人間が負けると厳しくなる。精神的にも追い込まれる。
大橋6段に、AlphaGoと対戦してみたいか聞いてみた。「やってみたいとは思いますけど、今日の碁を見せられると自信はないです」。また、イ・セドル9段に勝てるのは、中国の柯潔(かけつ)9段ぐらいで、彼も勝てなければ「人類はもうコンピューターに勝てないでしょう」と話す。
三村智保9段もこんな感想をツイートした。
右辺のフリカワリを見て黒の勝ちだと思い後を見ていなかったが、ヨセでは何と白の勝ちになっていた。元々私の判断が酷かったのか、セドルさんが楽観しすぎたのか。どちらにしてもAlphaGoは強さを見せつけた。
勝利にDeepMindのDemis CEOは大喜び。
#AlphaGo WINS!!!! We landed it on the moon. So proud of the team!! Respect to the amazing Lee Sedol too
AlphaGoが勝った! 月面着陸のような偉業だ。チームを誇りに思うよ! イ・セドルさんも素晴らしい。尊敬します。
実はGoogle。Alphabetのエリック・シュミット会長が現地入りする力の入れようだった。
対戦前、シュミット会長はこんなツイート。
Practicing Go with @demishassabis where #AlphaGo will play legendary Lee Sedol later today → https://t.co/Oy0pY3sayM
(DeepMind社CEOの)Demis Hassabisと碁の練習。この後ここで、AlphaGoが伝説のイ・セドルと対戦する。
あと4局
CORRECTION
ユウ6段と大橋6段がAlphaGoが勝ったと判断した段階を 2時間余りから3時間余りに訂正しました。