女性向けキュレーションサイト「MERY」が3月25日に、リアルの紙のファッション誌を発売しました。表紙は有村架純さん。
雑誌がウェブ展開するのではなく、ウェブメディアが雑誌を発行するという珍しい流れが話題となりました。発売後はかなりの人気だったようで、都内の書店やコンビニではなかなか見かけることがありませんでした。Amazonでも予約段階で女性誌カテゴリの1位を獲得。
BuzzFeedでは練馬区のファミリーマートで現物を入手したので、女性誌が大好きなPRパーソンの砂流恵介氏とともに、その中身をざっくりレビューしてみたいと思います。
Instagramっぽいフィルターかかった写真
鳴海:この雑誌の特徴はどのへんにあるんでしょうか。
砂流:全体のトーンを見ると、色使いはMERYらしいピンク基調ですね。あと写真が、全部じゃないんですけれど、若干ぼやけてる感じなんですよ。ピントをあえて外している。例えばこれとかもまさにそう。
鳴海:そうですね。ぼやっとしてるかも。
砂流:ほぼそうなんですよ。パキッとした写真が少ない。他の雑誌との大きな違いは、そこかもしれません。これを見たときに、Instagramで人気のフィルターってあるじゃないですか。あれに似てるなと思いました。
MERYらしい世界観の表現なんだと思います。捉えにくいところをあえて作っているというか。
鳴海:雑誌って明確なターゲットと目的があるじゃないですか。
砂流:そうなんですよね。CLASSY.とかVERYは非常にわかりやすくて、読者モデルや路上スナップに出てくる人を見れば、雑誌のターゲットが見えてきます。あとは連載陣でも、例えばVERYだったら小島慶子さんががっつり書いています。
そういう意味ではMERYは連載もないです。初刊だからかもしれないですけれど、文字だけの連載がないのはすごく珍しいです。捉えどころがない部分が多いんですけど、でも全体で見ると、これがMERYの世界観なんだろうなとわかる。
アプリとの連動が半端ない
鳴海:すべてがアプリにちゃんと繋がっているところも興味深いですね。投票で付録を決めたり、ネットとの連動をがんばっていますね。
砂流:「こういう投稿をしてくれるとMERY側でも拾っていくよ」って告知してますね。MERYのアプリのほうで雑誌のオフショットを公開してたりもします。雑誌とアプリがちゃんと連動していて、雑誌のおまけも、こういう「Instagramに投稿してね」っていうアイテム。ちゃんとハッシュタグも用意している。
鳴海:ウェブとの連動が半端ない。
砂流:半端ない。
目次がハッシュタグっぽい
砂流:1冊目だからかもしれないですけど、全体的にすごく世界観推しなところがありますね。めちゃくちゃ便利なテクニックが載っていて、実践に役立つみたいな感じでは、決してないです。それを求めてないんだろうなと。
鳴海:これって年齢区切りとかじゃなくて、こういうテイストが好きな人が読むんですかね。
砂流:そんな雰囲気ですね。目次がもうすごいんですよ。これですよ。
鳴海:ハッシュタグっぽい? 説明的じゃないせいか、よく意味がわからない。
砂流:そうそう。女性誌の目次って、例えば電車の中吊り広告とかで見かけると思いますけど、まったく違いますよね。
鳴海:なんですか、この「#賢く高見せ」とか「#頭ポンポンされたくて」とか。
砂流:「#ピンクの力を信じてる」みたいな。「◯◯になりたい!」とかじゃなくて、「こういう気分だよね」っていうことなんだと思います。想いをポンって載せているだけ。あまり雑誌発信な感じではないですね。
鳴海:論理的というよりも、感覚的というか、まさにハッシュタグですね。「#朝は弱いの」とか何が書かれているのか想像できないですもんね。
砂流:それはたしか、朝の髪型セットのページですね。
鳴海:そう。見てみると「3分でできちゃう 超簡単ヘアアレンジ」っていうサブタイトルがついてました。目次にとるなら普通はこっちを選びそうですが。
砂流:わかりやすさよりも、ハッシュタグになりそうな曖昧な感覚を大事にしてるんでしょうね。
僕たちの好きな有村架純はほかにいる!
鳴海:この雑誌が目指してるのって、男性へのモテではない気がしました。
砂流:一応その要素も入ってはいるんですけれど、ほぼ入ってないです。実際問題、男性ウケはよくなさそう。だって、この有村架純より、僕たちが好きな有村架純が絶対いるじゃないですか!
鳴海:ああ、なんとなくわかります。このかわいさは女の子目線の。
砂流:たぶん、ぱるるもそうなんですよ。
砂流:きっと男性ファンはこれじゃないほうが好きだと思うんですよ。やっぱり女の子のフィルターが掛かった世界観におけるかわいさです。
男性へのモテという意味では一応、「#ときにはあざとく」っていう特集があって、そこでは「好きな人を虜にするのに試したい12のこと」っていうのが書かれているんですけれど。
鳴海:でも、これってパッと読んでみると、あまり男性に響かなそう。
砂流:女の子のたしなみとして、こっちのほうがいいんじゃないの?っていう主観ですかね。「男性のニーズがこうだから」っていうのはあまりない。
だから、僕たちからすると、「好きな人を虜にするのに試したい12のこと」っていうよりは、「好きな人を虜にするために勇気が出る12のこと」みたいな感じですかね。
鳴海:これは、こういうことをがんばってる自分が好き、みたいな気持ちが入ってるんでしょうね。
砂流:そうなんですよ。どうでもいいじゃないですか(笑)。「ポケットにはイヤホン」とか「アンクレットはお守り代わり」とか、男からしたら「知らんがな」ですよね。
鳴海:あ、待ってください。アンクレット、僕は好きです。特にストッキングの下で窮屈そうにちぢこまっているアンクレットが好き。
砂流:いや、知らん(笑)
で、まとめると。
砂流:文字が少なくて、具体性がない。けれど、全部読むと世界観がすごくわかるというところでしょうか。雑誌MERYはそこがすごくおもしろい。僕は大好きです。
鳴海:ウェブ版MERYがあたかもすごくリアルな世界観を作り出したサービスに見えてくるっていう効果があるかもしれないですね。
MERYってそもそもキュレーションメディアじゃないですか。あえて乱暴に言えばネットの切り貼りと思われがち。そこからクリエイティブな方向に、雑誌1つでイメージが変わっていく可能性もありますね。
発行部数は5万部ですが、よく売れているようで、渋谷、恵比寿あたりだと書店やコンビニで見つけられなかったです。
砂流:やっぱり500円という価格設定もよかったんじゃないかと思います。月間2000万人のユニークユーザーがいるというMERYの利用者のニーズに、しっかり噛み合った雑誌なんでしょうね。
あらためて思ったんですけれど、雑誌ってお金を払って1ヶ月くらい楽しめるエンターテイメントじゃないですか。だから、それで考えるとMERYはすごく費用対効果が高いと思いました。
こちらが付録。
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