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沖縄オスプレイ事故、なぜ墜落ではなく「不時着」と報道? 防衛省に聞いた

機体は大破していますが、NHKや全国紙は「不時着」。地元紙の沖縄タイムスや琉球新報は当初は「不時着」でしたが、その後は「墜落」との表現を使っています。

防衛省によると、2016年12月13日午後9時半ごろ、沖縄県名護市東海岸から約1キロの沖合で、米軍MV-22オスプレイ1機が「不時着水」した。5人が搭乗していたが、全員が救助されたが、2人が負傷しているという。

これを受け、稲田朋美防衛大臣は、マルチネス在日米軍司令官に、「事故に関する原因究明・情報提供、安全」が確認されるまで、オスプレイの飛行を停止するよう、電話で申し入れた。

墜落と不時着の違いは

NHKや全国紙などの各メディアはこの事故を「不時着」「着水」などと報じた。

機体は大きく損壊している。Twitterなどでは「これは墜落ではないか」「なぜ不時着という表現なのか」などの意見が出た。

実際、米保守系テレビ局「Fox News」なども「crashes」(墜落)という表現で事故を報じている。また、地元紙の沖縄タイムスや琉球新報は当初は「不時着」だったが、いまは「墜落」との表現を使っている。

BuzzFeed Newsは防衛省に取材をした。報道担当者は「アメリカ側から説明を受けた時に『不時着水』という表現を使っていたため、報道資料にもその言葉を用いた」と説明した。英語では「landing in shallow water」だという。

旺文社の国語辞典には、「不時着」の言葉の定義として「飛行中の故障などで、臨時に目的地以外の場所に着陸すること」とある。

防衛省の認識としては、そのような事態があった場合、「機体のコントロールを失った状況で着陸または着水する状況が墜落」であり、「パイロットの意思で着陸または着水した場合は、不時着、不時着陸」になるという。

機体の損壊具合は関係がないとのことだ。

防衛省は「おそらく不時着水」との認識

墜落だったのか、パイロットの意思があったかどうかを含め、詳細は米軍側に問い合わせ中だという。防衛省で独自の調査をしているわけではない。

状況によっては「墜落という表現に変わる可能性もある」というが、取材に応じた担当者はこうも語る。

「乗員5名が生存しており、意図せず墜落した場合はそういう風にならないという意見が防衛省内でもある。こちらも、おそらく不時着水であろうと認識しています」

国内での「不時着」は初めて

米海兵隊の普天間基地には現在、24機のオスプレイが配備されている。毎日新聞によると、2012年に配備が始まって以降、国内での「不時着」は初めてという。

2007年から運用が始まったオスプレイはこれまで、海外でも繰り返し事故があり、その安全性を不安視する声が相次いでいた。2015年にはハワイで着陸に失敗、2人が死亡している。

ただ、一概に事故率が高い機体であると言えるわけではない。

防衛省の資料によると、「10万飛行時間あたり」の「被害総額が200万ドルを超えるや死者を出した」事故率は、2012年4月現在で1.93と、海兵隊の平均2.45よりも低い。米軍が運用している航空機の中でも平均以下だという。

防衛省はその安全性について、こう指摘している。

様々な角度から安全性の検証を行った結果、機体の安全性には特段の問題はなく、MV-22オスプレイが他の航空機と比べて特に危険と考える根拠は見出し得ない

私も朝日新聞社の記者時代、オスプレイの体験搭乗に参加したことがある。独特の揺れはあるものの、飛行中、特段の危険性を感じることはなかった。

「不時着」したオスプレイと同型機のMV-22に関しては、陸上自衛隊が2018年度までに順次導入することが決まっている。17機アメリカから購入する予定だ。

更新

文中に事故率が「1.93」とありますが、この数値は現在、上昇していることがわかりました。防衛省はBuzzFeed Newsの取材に、「政府の把握している」最新の事故率が、2015年9月末時点の「2.64」であると説明しています。なお、米海軍安全センターによると、米海兵隊全体の平均値は2.63(02〜16年12月9日)となっています。


訂正

記事中、自衛隊が導入する予定の同型機を「MV-44」としておりましたが、正しくはMV-22でした。訂正します。