WHOは「中国の手先」か 米脱退の影響は 米中対立は 国際政治学者に聞いた

    新型コロナウイルスの蔓延にトランプ政権は中国とWHOへの攻撃を強めている。何を意味するのか。米中間の危機となっていくのか。気鋭の国際政治学者に聞いた。

    中国・武漢で最初にアウトブレイクが起きた新型コロナウイルス。その責任と対応を巡り、アメリカと中国が激しく対立している。

    トランプ米大統領は4月末、中国・武漢のウイルス研究所が新型コロナの発生源となった可能性を確信していると発言。さらに、世界保健機関(WHO)を「中国の言いなり」と批判し、WHOからの脱退を表明。中国とWHOを激しく攻撃している。

    中国はこれに猛反発する一方、各国へのマスク輸出などを通じた「マスク外交」や、中国から各国への協力網を作る「健康シルクロード」の提唱などを通じ、新型コロナを機に影響力の拡大を図っているようにも見える。

    米中はなぜ対立するか。深刻な危機に発展する可能性はあるのか。米のWHO脱退の影響は。コロナ危機は世界秩序にどんな影響を与えるのか。北海道大学公共政策大学院の鈴木一人教授(国際政治学)に聞いた。

    (インタビューは5月27日にオンラインで行い、30日にメールで補足取材を行った)

    対中強硬論が強まるアメリカ

    なぜ、トランプ政権は中国批判を強めているのでしょうか。

    基本的にアメリカでは今、共和党・民主党を問わず、対中強硬論が強まっています。一言で言えば、トランプ氏の意図は、その尻馬に乗ることだと思います。

    11月には大統領選挙を控えています。トランプ氏の最大の焦点は自らの再選です。中国を攻撃することで失うものはなく、しないと逆に失うものがある。攻撃が自分にとってプラスになると判断して、そういう対応になっていると思います。

    一方でトランプ氏は、北朝鮮の金正恩委員長にしても、中国の習近平主席にしても、「オバマにはできなかったが、俺はその国のリーダーとサシで話ができる」というのを、ひとつの売りにしています。

    だから、「中国はダメだが、習近平は良い男だ」という、非常に矛盾したメッセージを出し続けています。それで結局、トランプ大統領が何を目指しているのかが分かりにくくなっています。

    基本的に選挙での再選が一番重要な課題であり、国民的な支持を集めやすい方法として、中国批判があります。

    ポンペオ国務長官も武漢ウイルス研究所からの流出説を打ち出しました。しかし5月16日、米国の右派サイト・ブライトバートのインタビューで、「どこから流出したのかは分からない」とトーンダウンしました。

    ポンペオ国務長官は基本的にイエスマンです。トランプ大統領の言う事を聞いて国務長官の地位を維持したい。一方で、カンザス州の上院選に出馬するという説や、最終的には大統領を目指すという話もあります。そういう政治的な野心もあり、トランプ支持者を自分が引き継ぐことを想定していると思います。

    民主党の大統領候補となるジョー・バイデン前副大統領はどういう態度なのでしょうか。

    バイデン氏には「中国に弱腰」という批判が出ているため、それに反発するかたちを示すうえでも、中国への批判はするでしょう。

    また、これは、米中対立という基本構造がある中での話です。トランプ政権がアンプの役割を果たし、バイデン氏も巻き込んで対立を増幅しています。

    米の衰退への恐怖心ー米中対立の構造とは

    中国と米国との対立には、いくつかの階層が重なっています。

    一番の根っこには、アメリカの覇権の衰退と、中国の台頭に対する、過剰なまでの恐れが存在します。

    中国が台頭することでアメリカの優位性が相対的に失われていくことが、色んな分野で起きています。

    米中間には、巨大なアメリカ市場の消費を中国の商品が埋めるという経済的な非対称性があり、アメリカには中国製品があふれかえっています。中国の台頭とアメリカの製造業の衰退はワンセットになって考えられているので、「中国がアメリカ人の仕事を奪った」という風になっている。1980年代の日米貿易摩擦に似た構図です。中国がアメリカ経済に挑戦しているという見立てでアメリカ側が動いている部分があると思います。

    同時に中国製品はアメリカにとっても必要で、農作物の輸出を含め、米国企業が中国市場に入っていく必要もあります。経済分野の対立はどこかで折り合いを付ける必要があるのですが、今や対中脅威論が強まっているので、トランプ大統領が打ち出す報復関税が一定の支持を集める面があると思います。

    中国の軍備増強への反発

    三つ目の階層としてあるのは軍事面です。中国脅威論が一番現れるのはここです。中国は実際に軍事支出が非常に大きく、空母を持ち、戦闘機などの開発を進め、軍備をどんどん増強しています。これに対する脅威というものがあります。

    実際に台湾の問題、南シナ海、尖閣諸島を巡る問題などで、中国の有り余る軍事力が外に向かって使われているという認識も米側にはあるでしょう。サイバー攻撃の問題もあります。

    中国の軍事力の台頭は覇権の問題も密接につながる話ですが、純粋にアメリカと中国の間で軍事的な緊張が高まっているという事態は、目に見えて存在します。これも、中国に屈する事は認められないということで、アメリカは強く出ている。

    こういった構造的な問題があり、WHOのような場でも、対中強硬策が出ているのだと思います。

    主観的には「グレートアゲイン」のトランプ氏

    トランプ政権は国際協調に背を向けるといった行動を取り、米国の覇権の衰退をむしろ早めているように見えます。

    客観的にみると、そうなんです。しかし、彼らは主観的にはそう考えていないと思います。トランプ大統領のモットーである「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」は、まさに衰退するアメリカを復活させるというメッセージなので、主観的には覇権の復活をしているつもりなんですよ。ただ、やり方がめちゃくちゃなだけです。


    本当に客観的に見て衰退していく覇権や影響力をなんとかするのであれば、国際協調もあるはずです。

    例えば1970年代、石油ショックでアメリカの覇権の衰退論が出ました。その時は先進7ヵ国のG7をつくり、国際協調というか西側諸国の結束を固めるかたちで覇権を維持するという戦略を採りました。

    トランプ氏はそうではなく、「同盟国と共にグレートアゲイン」ではなく「アメリカのグレートアゲイン」だ、と。自分たちの力がどれだけの力を持っているのかを示して突っ張るのが、覇権衰退に対抗する手段だと考えているわけです。客観的には、それは衰退への道だと見えるのですが、本人にはその自覚はないということです。

    トランプ大統領が新型コロナの武漢ウイルス研究所からの流出説を唱えた4月30日、大統領に情報を上げることを任務とする米国家情報長官室(ODNI)が「ウイルスが人為的なものとは考えられない」という声明を出しました。この食い違いをどう考えれば良いのでしょうか。

    トランプ大統領はインテリジェンス(情報機関)から上がってくる情報よりも、ブライトバートなど「オルタナ右翼」と言われるようなサイトからの情報を、全く抵抗感無く受け入れています。

    トランプ大統領の世界観を簡単に言うと、伝統的なメディアやエスタブリッシュメントはトランプ政権に対して批判的で、「ディープステート」という陰謀をめぐらせる共同体の一部であり、自分はそれと闘っていると考えている。情報機関にもディープステートの「魔の手」が伸びていると思っているので、国家情報長官が何を言っても気にしないということになります。

    言ってしまえば自分の都合のいい情報だけあげてくれればいいという風に見ているわけです。トランプ政権は基本的にインテリジェンス情報に重きを置かない。にも関わらずファクトらしきものを継ぎ接ぎする。

    トランプ支持の米国人の世界観は

    我々が認識しないといけないのは、トランプ政権を支持しているアメリカ人は、そういう風に世界を見ている、ということです。そこから考え始めないと、絶対に間違います。「彼らは現実をちゃんと理解している」という前提で考えると、間違います。

    いまアメリカで反ロックダウン運動をしている人たちは、現実がどうであるか、事実がどうであるか、科学がどうであるかというよりも、自分がどう考えるかを軸に動いていると考えています。科学へのリスペクトは無い状態です。

    アメリカ人やアメリカ社会がおかしいと言いたいわけではないのですが、日本ではアメリカは詰め込み教育ではなく、自由に見てものを考えることができる、 ホームスクーリング等いろんな多様性があると言われます。それが裏目に出てる部分もあり、ディープステートのような陰謀論的な世界観が結果として多くの人に共有されるようになってしまった現状があると思います。

    中国は超大国を目指すのか


    中国はこのところ、マスクなどの輸出を強化して「マスク外交」とも呼ばれています。「健康シルクロード」という構想も打ち出しています、何をしようとしているのでしょうか。オバマ政権時代、習近平主席は「新しい大国間関係」の構築を求めました。アメリカと並ぶ世界の軸の一つである「G2」になろうとしているのでしょうか。


    最終的に中国が目指すのはG2の世界かというと、私は違うと思っています。

    私が見ている中国というのは、「リスペクトに飢えている国」なんです。古くはアヘン戦争、近くは天安門事件。中国は大国にも関わらず、それに見合う地位を得られてこなかった。それに対するある種の反発があり、自分たちをもっと認めてほしいと言う願望があるのかな、と。習近平政権になってから「大国」「強国」という言葉が使われますが、中国がこれまで置かれていた国際秩序へのある種の反発と言うか、「俺たちはもっとすごいんだ」と認めてもらいたいという願望があるのだろうと思います。

    これと似たような感覚は、日本にもありました。日本は戦後、敗戦国として国際社会に復帰し、日本国憲法前文にあるように「国際社会において名誉ある地位を得たい」と願いました。

    中国は、そのより強烈なバージョンだと思っています。だから中国は、勝つための戦略というよりは、負けない闘い方をしている。ネガティブな印象を、できるだけポジティブにしたいということです。

    新型コロナウイルスにしても、その発生源は別として、最初の大規模感染が起きたのは、中国だった。それが世界に広がってしまった。習近平政権は「自分たちの責任じゃない」と思っている部分もあるかもしれません。それでも中国の印象が悪くなったのは事実なので、それをなんとかしなければいけないという意識がある。

    中国は国際的な非難を受けるということに対して、元々ものすごく敏感です。そのためには情報も隠すでしょうし、批判には嘘をついてでも強く反論する。こうした中国の行動パターンが、武漢でのウイルス発生を隠していたんじゃないかという話につながってくるわけです。

    新型コロナに関しては中国もある種の後ろめたさを感じています。その挽回をしなければならないので、「マスク外交」などが出てくる。友好国に対して恩を売るチャンスでもありますから。アメリカに対しても、アリババのジャック・マー氏が人工呼吸器を送ったりしている。マー氏も中国共産党員です。

    マスク外交は、ご都合主義的に、この際だから色んなところに恩を売っておこうということだと思います。

    WHOは「中国の手先」なのか

    中国は、WHO総会への台湾のオブザーバー参加に強く反対しました。また、WHOとテドロス事務局長を「中国の手先」と非難する声も出ています。

    中国は台湾、チベット、ウイグルの話に関しては、国際的な会合で別の国が持ち出した瞬間に反発するということを繰り返しています。

    「一つの中国」というのは、国家の正統性と統一性の根幹に関わる話だと、中国人は認識してます。日本にとっての「北方領土」よりも、何十倍も思い入れがあると言っていいかもしれません。立場上、譲れないんです。

    私も国連にいたことがあるので何となく雰囲気は分かるのですが、台湾の「た」の字でも出そうものなら、中国代表部が血相を変えてきます。台湾を単独の主体して扱うと、中国は立場上、ゆずれない。これはもう「自動回路」と言っても良いかもしれません。だから、国際機関は本当に神経を使います。

    「傀儡論はナンセンス」

    WHOとテドロス氏が中国の傀儡だという考え方は、私はナンセンスだと思っています。

    そもそも国際機関は、どの加盟国に対しても文句を言える立場にはありません。それに、これはトランプ氏も言っていますが、アメリカの方が中国よりもはるかに大きな額をWHOに拠出してきました。「傀儡論」の理屈からいえば、WHOは最大のスポンサーであるアメリカの言うことを聞く、ということになる。しかしWHOは、アメリカの言うことを聞いている訳でもない。中国の言う事を聞いているわけでもない。

    また、1月末の段階でテドロス氏が「中国はちゃんとやっている」と言ったから、中国の言いなりだというのもありますが、これもおかしいんです。

    中国は1月12日の段階でWHOに通告し、遺伝子サンプルを出している。これが遅いというのは、その通りなんです。

    2019年12月に武漢で感染者が認められ、内部告発者が出て、WHOへの通告まで間があった。その遅れは確かに問題なんですが、それは北京政府というより、むしろ武漢市当局や湖北省当局の問題だと私は思っています。北京政府は把握すると、これはまずいとすぐWHOに通告している。

    WHOはもちろん情報は収集していましたが、その国の政府(北京政府)が正式に通告してこないと動けません。

    WHOに通報した後から北京政府は、矢継ぎ早に仮設病院をつくったりロックダウンしたりと対策を打った。それを見てテドロス氏は「中国はよくやっている」と評価をしたわけです。

    WHOの行動規範である国際保健規則(IHR)でロックダウンは推奨されていないのに、賞賛したのはおかしい、という批判がありますが、これも間違っている。北京政府が事態を把握した頃には手に負えないほど状況が悪化していたので、ロックダウンなどの手しか残っておらず、現実に合わせて処置したということだと思います。

    国際機関一般は、加盟国には逆らえない存在です。だから、WHOが制約の中で対応せざるを得なかった事態を、トランプ政権は一部を増幅して大きな話にしようとしている。

    全く事実無根ではなく、一理はあるのですが、他の要素を全く無視して一部分だけを強調しすぎて、話が歪んでいくのだと思っています。

    利が見えないWHO脱退宣言

    トランプ大統領が5月29日、「WHOとの関係を終わらせる」と表明しました。この狙いは何でしょうか。今後はどうなるのでしょうか。

    関係を終わらせるということは「脱退」を意味しているとは思いますが、WHOを脱退するには、アメリカが未払いの拠出金を支払わなければならず、「事実上の脱退」ということなのだろうと思います。

    こうした表明をすることで、「中国に操られているWHO」とは関係を切り、「アメリカはWHOの言いなりにはならない」と有権者にアピールするのが狙いだと思います。

    しかし実際のところ、アメリカはWHOの言いなりになったことはありません。これまで、アメリカの意思決定がWHOに影響されることもありませんでした。

    要するに、アメリカにおける感染拡大を止められなかったのはトランプ政権の責任ではなく、「中国に操られたWHOの仕業」だと言いたいのだと思います。

    これからどうなるのかという点ですが、事実上の脱退という状況なので、トランプ政権が終わればーそれが2021年なのか、再選後の2025年なのかはわかりませんがー、アメリカがWHOに復帰することは、可能だとは思います。ただし、WHOの規定で拠出金を支払わない場合、除名されることもあり得ますので、そうなると「再加盟」ということになるかと思います。

    当面問題になるのは、中南米やアフリカで新型コロナウイルスがさらに蔓延した際、WHOが資金不足となり、感染症の拡大を食い止めるための支援ができなくなるという点です。WHOは現在、個人の寄付を受け付けることで資金不足を埋めようとしていますが、それがどの程度効果があるかはわかりません。

    中国とWHOへの責任転嫁でパンデミック長期化の懸念も

    新型コロナは、先進国ですら手を焼いたウイルスです。南米やアフリカの国々がWHOの支援を受けたとしても、対策がうまく行くとはかぎりません。人口が密集している途上国の貧困地域に蔓延すると手がつけられなくなり、効果的な治療薬やワクチンはまだないので治療や予防も難しく、グローバルなパンデミックが終わるまで非常に長い時間がかかる恐れもあります。

    これはトランプ政権だけに起因する問題とは言いませんが、WHOの機能が資金不足によって低下することで、さらに長引く怖れはあると思っています。

    トランプ大統領はブラジルからの入国は禁止しましたし、メキシコとの国境には壁を作ったとはいえ、そうした国、特に感染が拡大しているメキシコなどから人の動きとともにウイルスが流入してくれば、まだ感染が収まっていないアメリカで、さらに第二波が来る恐れもあります。

    加えて中西部のミネアポリスで白人警官が黒人男性を殺害したことに反発して、アメリカ各地で大規模なデモや暴動が起きていますが、ここでも感染が蔓延するおそれがあります。

    そうなると、トランプ氏がいかに中国やWHOに責任を転嫁しても、感染が収まらないという状況は残るので、はっきり言えば、トランプ氏のWHO脱退宣言は、害が多く、利はまるでない判断だと思います。

    コロナは国際秩序を変えるのか

    ヒト・モノ・カネが国境を超えて動くグローバリゼーションの流れと国際秩序に、コロナ危機はどう影響するのでしょうか。

    これから失業などが悪化するので、モノやカネの流れの量は減るでしょうが、構造的な変化はないと思います。

    米中の対立を見ても、アメリカが制裁関税をかけても、中国の輸出は続いています。これは保護主義的政策を採っても変わらない。そのくらい相互依存が浸透していて、大きな枠としてのグローバル化は止まらないと思っています。

    世界に拡がるサプライチェーンを再編するには、膨大なエネルギーが必要です。これはマスクだけでなく、あらゆる製品がそうです。以前から中国一国依存のリスクを避けるため、製造拠点を移転することや「チャイナ+1」というのも言われていますが、結果として動いていません。リスク分散は進んではいますが、中国から撤退するわけではない。

    HUAWEIの問題など個別の案件で中国製品を排除するといった保護主義的な措置もとられていますが、例えばマスクは戦略的物資だから自国で生産しようと言っても、非常時ならばいいけれど、平時には日本でつくったマスクは高くなるので売れないわけです。なので次の非常時までマスク産業を維持することは困難です。輸入に頼ることになるでしょう。

    このように、経済の分野でのグローバル化の流れは止まらないでしょう。ただし、ウイルスは人間について動くという問題があるので、ヒトの移動は以前のようには行かなくなると思います。気軽に旅行するということは当面難しく、観光産業は厳しい状態が続き、業界の構造は変わるかもしれません。

    「パワーバランスは変わらない」

    各国のパワーバランスが大きく変わると私は思っていません。コロナのことが取り沙汰されるようになって、まだ半年足らずです。まだ予測は難しいのですが、欧米でも遠からず正常化に向けた動きは出てくるでしょう。みんな、心の底では「いつかは終わる」と思っています。

    今起きているのは、生産や国家関係の変動ではありません。あくまで感染症の流行であり、時間が経てば終わります。国家のあり方を切り崩すような戦争とは、状況が違います。自然との闘いであり、終われば元に戻るというバネが働くと思います。

    例えば新型コロナは米国を攻撃するための生物兵器だなんていう説もありますが、まず中国で大きな犠牲が出たという点で、もはや説明が付きません。

    トランプは中国に手を出すのか

    トランプ政権は、実際には中国に手を出す気はない、ということでしょうか。

    ないと思います。国内向けに、中国をダシにしているということです。トランプ政権の世界観は国内が最重要な問題であり、他国がどう考えるかということは全く二の次です。

    次の大統領選で仮にバイデン氏が当選すれば、アメリカの外交姿勢はどうなるでしょうか。

    変わるところと、変わらないところがあると思います。トランプ氏より遙かに国際社会を見ながら行動するでしょうし、違いを出すと言う意味でも、気候変動に関するパリ協定や、イラン核合意など、トランプ政権が一方的に離脱して国際社会でかなり非難を受けてきた分野では、元に戻ろうという意識が働くと思います。

    ただ、対中関係がうまくいくようになるかというと、そんな風には感じていません。バイデン氏にとっても国内労働者の保護など利害が出てくる話なので、一方的に関税をかけるようなことはしないと思いますが、一定程度はトランプ氏が残す土台の上に立ち、有利に交渉を進めようとすると思います。

    いたずらに緊張を高めるようなことはしないと思いますが、では中国に甘くなるかといえば、そんな事はしないし、国内世論を考えると出来ないと思います。