広大なアフリカで女性の心をわしづかみにしている日本製品がある。

    アフリカでシェア50%を占める日本製品があることを、ご存じですか?

    経済成長が本格化し、各国の注目が集まるアフリカは「世界最後のフロンティア市場」と呼ばれる。日本から遠く離れたこの地で、女性から高い支持を集め、大陸全体でシェア50%を独走する日本製品がある。

    女性向けのヘアエクステンション(付け毛)だ。

    化学製品メーカーのカネカが開発した合成繊維カネカロンをつかったヘアエクステンションやウイッグが、アフリカ20ヵ国でトップシェアを獲得している。

    きっかけはニューヨークで見た「爆買い」

    カネカがアフリカ進出を始めたのは1980年代のことだ。

    ガーナ・アクラのオフィスで同社のアフリカ事業を担うアフリカ駐在員事務所の瀬古裕所長によると、そのきっかけは、同社の営業担当者が1983年、米国に出張したときのことだった。

    カネカは米国に、アフリカ系米国人向けのエクステやウイッグ用にカネカロンを輸出していた。その営業を担当する社員がニューヨークに出張した時、ヘアケア用品店でカネカの製品を大量に買い込んでいるアフリカ人を見かけた。

    そのアフリカ人に話しかけてみると、質の高い製品を仕入れるため、セネガルから買い付けに来たという。

    この営業担当者はすぐ、日本のカネカ本社に連絡を取った。状況を調べるため、このセネガル人に同行して、そのままセネガルに向かえという指示が出た。現地でアフリカ市場の大きさに気づき、進出を決めたという。

    日本や東南アジアなどのカネカの拠点で製造した繊維を輸出し、アフリカのパートナー企業が販売している。各国の美容室にカネカロンを使ったエクステが飾られている。

    アフリカ人女性の多くは縮毛で、地毛を伸ばしてもケアが大変だ。しかしエクステを編み込むようにすれば手入れが簡単で、トレンドが変わればすぐに新しいスタイルを取り入れることもできる。

    カネカの製品は人毛のような柔らかさと、耐久性と耐熱性、難燃性を両立させているところがセールスポイントだ。エクステをつけたまま料理をすることもできる。

    アフリカ各国の経済成長で女性がヘアスタイルにお金を使えるようになってきたこともあり、売り上げは順調に成長を続けているという。

    アフリカには54の国があり、民族や言語、文化も多様だ。だから、エクステやウイッグも、国ごとに好みが違う。

    例えばセネガルでは、細かく編み込んだブレイドヘアが人気で、色も落ち着いたトーンのものが多い。一方、コンゴ民主共和国では、ピンクなどカラフルなものが好まれるという。「それが褐色の肌に映えて、本当にかっこいいんです」(カネカ・瀬古さん)。

    カネカはアフリカ市場の開拓を評価され、独自性のある製品や戦略でイノベーションを起こし高い収益性を達成した企業を表彰する、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の2015年度ポーター賞を受賞している。

    アフリカは2000年代に入ると石油など資源開発を中心に経済成長が本格化し、各国の注目が集まるようになった。日本政府は8月28日から横浜市にアフリカ各国の首脳を集め、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を開いた。

    TICAD7のサイドイベントして開かれた日本・アフリカビジネスEXPOでも、カラフルな製品が並ぶカネカのブースは高い注目を集めた。

    同社はアフリカ進出を決めて以降、営業担当者が出張ベースで売り込みを続けてきたが、2016年にガーナ・アクラに事務所を開設し、アフリカでのビジネスをさらに加速させることにした。

    それまでもアフリカ市場を担当してきた瀬古さんが、初代の事務所長となった。ガーナを選んだのは、アフリカ最大の人口を抱える大市場ナイジェリアに近く、一方でナイジェリアよりも政情が安定し、治安面でも安全性が高いからだという。

    瀬古さんは「ニーズをつかんで新製品に反映し、スタイリング、トレンドの提案までいけるところが、私たちの強み」と語る。