東京医科大の不正入試問題 知っておくべき5つのポイント

    7日の会見で明らかなになったことをまとめる。

    東京医科大学が医学部医学科の一般入試で、女子受験生らの合格者数を意図的に抑制したり、文科省前局長の息子を一般入試で不正合格させたりしたとされる問題。

    同大の内部調査委員会は8月7日、少なくとも2006年から、女子受験者と浪人回数の多い男子受験生が不利になるような得点操作が行われていた可能性があると指摘。

    同日会見した同大の行岡哲男常務理事は、調査委員会の指摘を受け、「重大な不正があり、社会の信頼を大いに裏切ることになりましたことを、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

    内部調査委員会と大学側の会見で明らかになった5つのポイントは、次の通り。

    1. 女子受験生と、浪人回数の多い男子が不利に扱われた

    内部調査委の報告書によると、東京医科大学は一般入試の二次試験において、女子受験者と浪人回数の多い男子受験者の合格者数が抑制されるよう、点数を操作していた。

    具体的には、二次試験の小論文(100点満点)で受験者全員の得点に0.8をかけた上で、現役〜2浪男子には20点を加点、3浪男子に10点を加点。女子と4浪以上の男子には、加点していなかった。

    その結果、全女子受験者と4浪男子は、100点満点をとっても最大80点しか得られない状況だった。また、2018年度の一般入試においては、小論文への配点が増えた結果、さらに女子受験者が不利になった。

    2. 卒業生などの子弟を個別に優遇していた

    今回の問題は、文部科学省前局長が、同省の「私立大学研究ブランディング事業」に東京医科大学が選定されるよう便宜を図る見返りに、息子の試験得点を不正に加点させ、「裏口入学」させたという汚職容疑事件の捜査から明るみに出た。

    報告書によると、同窓生の子弟らが合格しやすいよう、個別に得点調整が行われていた。2018年度は、前局長の息子以外の受験生5人に対して、10〜49点が加点。2017年度においては、一般入試一次試験で8〜45点加点されていた。

    前局長の息子については、2018年度一般入試・二次試験の定員が75人だったところ、301点で、87位だった。息子に対しては個別の加点はなされず、他の一浪男子と同様に10点が加算された結果、74位で合格した。

    3. 不合格になった受験生の「追加合格」を検討

    一般入試の二次試験において、女子受験生の得点を一律減点していたことについて大学側は、「断じてあってはならないことであり、根絶する」と発言。

    会見で記者から「不合格者を追加で合格とするのか」と問われた宮沢学長代理は「私自身はそういう方向(追加合格)でいる。現在の協議会で異論を唱える者はいないだろう」と答えた。

    しかし、特捜部に入試の関連資料がほとんど押収されたとして、「早急に対応したいところだが、時間がかかるかもしれない」とも話した。

    4. 得点操作は前理事長が指示し、10年以上続いていた

    内部調査委員会は、浪人生や女子受験生に不利な得点操作などは、少なくとも2006年から10年以上続けられていたとした。

    これらの不正は臼井正彦前理事長(贈賄罪で起訴、辞職)の指示だったと内部調査委員会は認定した。

    「女性差別に基づくと言わざるを得ず、強く非難されるべきもの」と厳しく指摘した。

    一方、行岡常務理事と宮沢学長職務代理は「(不正操作に)驚愕した。驚きという言葉では表現できないほどだ」「現場とズレがあったのではないか」などと現執行部は不正に関与していないことを主張した。

    5. 国の支援事業も「自主返還」を検討

    調査委員会の報告書によれば、同大学は2016年に創立100周年を迎えた。それに当たり、低侵襲のメタボローム解析に注力しようと考えた。

    多額の研究資金が必要になるため、文科省の「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象校に申請することした。

    そして、文科省前科学技術・学術政策局長の佐野太被告の息子の得点を不正に加算することでブランディング事情の補助金を得た。

    東京地検特捜部は7月24日、佐野太被告を受託収賄罪で起訴している。

    調査委員会は、大学が文部科学省の前局長から選定に便宜を図ってもらったとされる「ブランディング事業」について、「事業の補助金を速やかに自主返還することが相当だ」とした。大学側も自主返還するとした。


    東京医大は今後の対策として、「外部有識者の知見をあわせて、地に足のついた再生策・組織風土改革をしっかりと進めたい」とした。

    林芳正文部科学相は7日、全国の国公私立大の医学部医学科の入試でも同様の不正がないか緊急調査する考えを示した