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新型コロナで拡散、マスクの「再利用」正しい方法は?リスクは?感染症対策の専門家に聞きました

ネット上では、使い捨てのサージカルマスク(不織布マスク)の使い回しに関する情報が広がっている。「水洗いをして太陽の下で干す」「普通に洗濯する」「アルコールや次亜塩素酸水で消毒する」「煮沸する」「電子レンジやアイロンで加熱する」などのパターンが多く、実際に実践している人もみられる。

新型コロナウイルスの感染拡大で続くマスク不足。そうしたなか、ネット上などでは様々な「マスクの再利用」法がシェアされている。

一部では「デマ」との指摘もあがるが、実際はどのような方法が正しいのか。感染症対策の専門家に話を聞いた。

ネット上で広がっているのは、使い捨てのサージカルマスク(不織布マスク)の使い回しに関する情報だ。

水洗いをして太陽の下で干す」「普通に洗濯する」「アルコールや次亜塩素酸水で消毒する」「煮沸する」「電子レンジやアイロンで加熱する」などのパターンが多く、実際に実践している人もみられる。

こうした再利用法はどれほど有効なのか? BuzzFeed Newsは感染症対策コンサルタントの堀成美さんに取材した。

そもそもこうしたサージカルマスクには、すでに咳やくしゃみなどの症状がある人がつけることで、飛沫感染を防ぐ効果がある。無症状の人に対する予防効果があるわけではない。堀さんもこの点に言及する。

「マスクはそもそも咳やくしゃみ、発熱などの症状がある人が着用するものであり、これは世界の専門機関、WHOや米国CDC(疾病予防管理センター)、また日本の専門家団体もそういっています」

「元気な症状もない人がつけたほうがいいか、どのマスクなら安全なのかという話にはなりません。わかりやすく言い切るとしたら『どれでもいい』です」

堀さんは、あくまでマスク不足の影響を大きく受けるのは、「病気・高齢者の世話の人をする医療者や介護スタッフ」であるとして、こうも述べた。

「ここでの不足は院内感染事故や、他の患者さんの安全を脅かす大きな問題となりえます。いまは必要なところにマスクが届く、ということが大切な状況にあります」

再利用の注意点は?

こうした前提があるとしたうえで、堀さんはマスクの「再利用」をする場合は以下の2点に注意するよう指摘した。

「繊維を傷つけないようにやさしく洗う」「よくかわかす」

そもそも新型コロナウイルスは界面活性剤で十分不活化する(そのため、石鹸での手洗いが有効なのだ)ため、洗剤で洗って干せばいいという。

「特別な洗剤である必要はありません。そもそも触る手も、つける顔も無菌ではありません。洗剤で洗って干せばいいでしょう」

一方で、消毒薬の使用はリスクもあるため、「あえて使わないのが安全」と指摘した。

「消毒薬は使い方によっては危険です。吸い込んだりするリスクもありますので、安全に使う知識や技術がないときには、あえて使わないのが安全です」

「本当に使った方がいいならば、専門家や専門家団体が必ず情報発信をしますので、そういった情報がないときに思いつきや見よう見まねでやらないほうがいいのが消毒薬の使用です。不安を利用した宣伝活動も増えているので、注意したいテーマですね」

「デマ」と一刀両断するのではなく

一方、予防のためのマスクは必要ないと、科学的根拠を理由に一刀両断する態度にも堀さんは疑問を投げかける。

実際、ネット上ではマスクの再利用について拡散した「消毒方法」に対して「デマ」という指摘が広がり、投稿が削除されるなどの事態も起きている。

「もともと健康で症状がない人たちが、安心や快適さのためにしている努力です。いいのではないでしょうか。病院など高度な対策をする専門家からみたら、『ウイルスをブロックする効果はない』『あちこち触ってかえってきたない』という厳密なエビデンスの話になってしまいがちです」

「やめた方がいいという根拠や目的は、安心のためにつけたいという人たちの思いのクリアさと比べるとぼんやりしています。高度な対策をする場ではなく、生活レベルの話ですから。『いつもよりワンランク上の対策をしたい』という気持ちは実はとても大切。感染症に関心を持って、生活を見直して、少し努力をしてみようかな、と思っている人たちも増えています」

「不足しているマスク問題に対処するために、オリジナルの布マスクを作ったり、再利用するというアイデアもあります。もともと健康で症状がない人たちが、安心や快適さのためにしている努力です。いいのではないでしょうか」

個人による感染症予防への意識が高まっていることは否定すべきものではない、としてこうも述べた。

「意味がないのか、無駄なのかというという話にするのもずれていると思います。ゼロか百か、まるかばつか、という思考はリスクを避けようと戦略を立てるときあまり役に立ちません。また、つけたい人にはそれなりに理由がある。花粉症などはわかりやすいですし、満員電車で人の息が顔にかかってヤダという人もいるでしょう」

「ここでは個人の生活環境や感じ方が異なるということも重要です。つけていないと不安。つけると安心できる。ならばつけることに大きな意味があります。不安を抱えたまま生活するのはとても苦痛です。あまり気にならない性格の人(私がそうです)は、不安で苦しい人もいる、ということはぜひ想像して理解して欲しいと思います」