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「異常なことが起こっている」ブラック企業大賞に「三菱電機」新入社員ら自死で2年連続

KDDI、セブン-イレブン・ジャパン、電通、ロピア、長崎市、トヨタ自動車、三菱電機、吉本興業、楽天がノミネートされた。

過労死や長時間労働、パワハラなどが問題視されている企業を集めた「ブラック企業大賞2019」の授賞式が12月23日、開催された。

大賞にはグループで複数の過労自死など、労災事案が相次いでいる三菱電機が2年連続で選ばれた。委員会側は「あまりに異常なことが起こっていると言わざるをえない」としている。

また、ウェブ投票賞にはパワハラによる労災認定があった楽天(計1万304票)が、特別賞には過去に大賞を受賞した電通とセブン-イレブン・ジャパンが、また新設された「#MeToo賞」には市幹部による女性記者への性暴力があったとされる長崎市が選ばれた。

「誰もが安心して働ける環境をつくることをめざして」開催しており、今年で8回目。

実行委員会には、労働問題に関わるNPOや弁護士、ジャーナリストらが参加している。ブラック企業の基準は、この2点だ。

  1. 労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業
  2. パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)


見極める指標には「長時間労働」や「セクハラ・パワハラ」「いじめ」「低賃金」「育休・産休制度の不備」などが挙げられている。過去の大賞には引越社、ヤマダ電機、ワタミ、東京電力などが選ばれている。

「日本の状況は変わっていない」

今年は計9社がノミネートされており、過去にも大賞を受賞した経験のあるセブン-イレブン・ジャパンと電通、そして三菱電機の名前があった。

佐々木亮弁護士は「社会的な責任からするといかがなものだろうか、と思います。特に電通は刑事罰も受けている。しっかりと反省して2度とノミネートされないようになってほしい」と指摘。こうも強調した。

「こうして私たちの目に触れて選定される企業はごく一部。実際には何倍にもあたる過労事件、過労自死があると考えています。日本の状況はまだまだ変わっていない」

なお、ノミネート企業は授賞式の招待状を出していたというが、各社の関係者の姿はなかった。実行委員会が発表している各社のノミネート理由は、以下の通り。

大賞:三菱電機株式会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社、MSEC 社)

2017年末、MSEC 社では当時40代の技術者が自死し、2019年10月に長時間労働による労災であると認定された。

三菱電機グループで2014年以降、社員が自死したり精神障害を発症したりしたケースが判明したのは、これで3人目。また、三菱電機では、2014〜17年にシステム開発の技術者や研究職の男性社員5人が長時間労働が原因で労災認定され、うち2人が過労自死だった。

また、2019年8月には20代の男性新入社員が自死。教育主任だった30代の男性社員が自殺教唆の疑いで書類送検されている。三菱電機は昨年「ブラック企業大賞」を受賞している。

ウェブ投票賞:楽天株式会社

2016年6月、当時社員だった男性が、会議で激高した上司から首付近をつかまれ、壁際に押しつけられた。その際、頸髄を損傷して手足にまひが残り、うつ病を発症して現在も療養している。翌年8月に、労災認定された。

男性によれば、社内のパワハラ相談部署に掛け合ったが調査されず、配置転換の希望も受け入れられなかったため、暴 行の1か月後に退職せざるを得なかった。

男性は、楽天株式会社に対して「会社として責任を認めてほしい」と求めている。

特別賞:株式会社電通

2019年9月、同社は前年の社員の違法残業や、残業時間の違法な延長などを指摘され、労働基準法と労働安全衛生法に違反したとして是正勧告を受けた。

同社は2017年10月に労基法違反の有罪判決が確定しているが、その後の状態について是正勧告が出されたことになる。

同社では2015年12月に新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が自死。16年前には入社2年目の男性社員の自死が、6年前には30歳の男性社員の病死が過労死として認定され、2016年の「ブラック企業大賞」を受賞している。

特別賞:株式会社セブン-イレブン・ジャパン

2019年12月、全国のフランチャイズ加盟店から「代行」して支払っていたアルバイト・パートらの残業代の一部が1970年代から未払いだったと発表した。

本部にデータが残る2012年3月以降だけで8129店の計3万405人、未払い額は遅延損害金を含めて4億9000万円に上るとされる

また同社をめぐっては今年、加盟店オーナーが契約内容を立て続けに告発。公正取引委員会がコンビニ業界の24時間営業などの実態調査を行う方針を明かしたほか、11月には本部社員が加盟店に無断で商品発注していたことも発覚した。

同社は2015年、主に加盟店に対する不公正な扱いを理由に「ブラック企業大賞」を受賞している。

#MeToo賞:長崎市

同市では2007年7月、原爆祈念式典に向けての取材にあたる女性記者に、同市の原爆被爆対策部長(当時)が性暴力をふるうという事件が発生した。

同年10月ごろ、市は内部調査を開始したが、その直後に当該部長は自殺。調査は加害者の主張のみを聴取するにとどまった。被害者への謝罪はなかった。

2014年、日本弁護士連合会が女性の名誉回復に向けた謝罪文とさらなる性暴力の防止策を徹底するよう勧告したが、同市は勧告を受け入れなかった。2019年4月、女性は損害賠償を求めて同市を提訴した。

そのほか、ノミネートされていた企業は…

KDDI株式会社

2015年9月に入社2年目の20代社員が、過労死ライン以上となる月90時間を超える残業をし、自死。労働時間や仕事量、勤務内容の変更、指導をした上司とのトラブルが心理的な負担になったと判断され、2018年5月に労災認定された。

また、同年6月には労基署からサービス残業についての是正勧告とメンタルヘルス対策の改善などについての行政指導も受け、2017年9月には、長時間労働やサービス残業についての是正勧告を受けたことから調査を実施。従業員4613人に約6億7千万円(2年分)の残業代が未払いとなっていた事実が判明した。

一連の事実の公表は、遺族との話し合いを経た今年3月だった。

株式会社ロピア

同社は、神奈川県藤沢市に本社を置くスーパーマーケットチェーン。

2018年6月、店舗の食肉部門に勤務する男性が商品をレジで精算することなく持ち帰ったところ、会社が警察に通報して懲戒解雇処分とした。この男性の自宅付近の店も含む全店舗において、男性を名指しの上で「窃盗を理由に懲戒解雇した」という掲示を行った。

男性は会計せずに持ち帰ったのは単なる過失であったと主張し、同社を提訴。2019年10月には横浜地裁が判決で訴えを認め、解雇の無効と解雇日から判決までの給料支払いや、掲示による名誉毀損の慰謝料として77万円の支払いを命じた。

この裁判を通じては、男性が「名ばかり管理職」であったことが確認され、横浜地裁は未払い残業代約100 万円の支払いも命じている。

トヨタ自動車株式会社

2015年4月に入社した男性社員(当時28)が、翌年10月に社員寮の自室で自死した。

男性は同年3月に本社配属されたのち、日常的に上司から 「バカ、アホ」と言われ、「死んだ方がいい」とも言われたという。

2019年9月、男性がパワハラが原因で適応障害を発症し、職場復帰後も治癒していなかったとして、自死を労災認定。なお、同社では、2002年にも過労死事件が発生している。

吉本興業株式会社

同社および同社の子会社は、従業員に過労死ラインを超える月100時間を超える残業をさせていたことから2012年3月に新宿労基署から是正勧告を受けた。

また 2018年8〜9月には、就業規則を変更したのに労基署に届け出ていなかったり、休日勤務の割増賃金を十分に払っていなかったことなどから再度是正勧告を受けた。

さらに今年6月以降にはいわゆる「闇営業」問題が発覚。この騒動が報じられる過程では同社と所属タレント間でのギャラの不公平さや、正式な所属契約書をかわしていないことなどが指摘され、問題になった。同社社長の所属タレントに対する言動がパワハラであるという指摘もあり、議論を呼んだ。


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