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拡散した「政府が日の丸マスクを生産」との誤情報 メーカー“法的措置”検討も視野

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が「マスク不足に対応し日の丸を冠したマスクを生産」との情報が、Twitterを中心に拡散した。しかし、これは誤りだ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が「マスク不足に対応し日の丸を冠したマスクを生産」との情報が、Twitterを中心に拡散した。

毎日新聞が、厚労省による医療用マスクに関する取り組みを紹介したネット配信記事の中で、日の丸があしらわれたマスク写真を使用したことが発端となった。

ただし、政府が「マスク不足に対応し日の丸を冠したマスクを生産」との情報は誤りだ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

毎日新聞は2月23日、記事「新型肺炎 医療用マスク、自治体・病院に優先供給 厚労省」を配信した。

厚労省が、2月下旬から医療用マスクについて、都道府県や医療機関に優先的に供給されるよう対策に乗り出す方針だと伝えた記事だった。この中で、毎日新聞は日の丸があしらわれたマスクの写真を使用した。

写真説明には「新型コロナウイルスの感染拡大で国内外から注文が殺到している高機能マスク=愛知県豊橋市で2020年1月30日午後1時19分」とあった。

すると、Twitterなどで、この写真や記事を根拠とする形で「厚労省がマスク不足に対応し日の丸を冠したマスクを生産」といった、次のような投稿が相次いだ。

「これを作るのに、コストどのくらいあがったんだろう。こんなことより、枚数だろうに」「なぜかマスクに日の丸。一刻も早く、多く必要という中、作業増やして意味わからない」「危機管理能力が無い、官僚達だもんなぁ!効率的な作業が出来ない人達の集まり!」

Twitterでは他のユーザーから誤りを指摘され、すでに削除された投稿もあるが、いくつかのツイートは残り、今も憶測を投稿するユーザーもいる。

毎日新聞「誤解される可能性もあると判断」、厚労省も否定

先述の通り、政府が「マスク不足に対応し日の丸を冠したマスクを生産」との情報は「誤り」だ。

このマスクは2015年に発売された商品であり、そもそも記事には、そのように示す表記は一切ない。

そして、毎日新聞は当該マスク写真を「イメージ画像として使用した」とし、厚労省もメーカーに特定のマスクの生産を依頼するといった事実は「ありません」とBuzzFeed Newsの取材に答えた。

メーカー自身も「そのような事実は一切ない」と全面的に否定している。

毎日新聞は、記事配信後に「透過型電子顕微鏡でとらえた新型コロナウイルス」との写真に差し替えている。

毎日新聞社長室の広報担当者は2月27日、マスクの写真について「当初の写真は国内のマスク製造メーカーで撮影したもので、あくまでもイメージ画像として使用しました」と説明したうえで、画像の差し替え理由をこう述べた。

「ただ、記事の内容から、厚生労働省が自治体・病院に優先供給することにしたマスクそのものの写真と誤解される可能性もあると判断し、差し替えました」

一方、厚労省経済課の担当者は3月2日、マスク不足に伴い、各メーカーに特定のマスクを発注した事実は「ありません」とBuzzFeed Newsに回答。

「厚労省と経産省から、マスク製造メーカーにマスクを増産してください、とお願いはしています。しかし、その際に『どのメーカーに』『どのタイプのマスク』などの指定はしておりません」とネット上で広まった情報を否定した。

つまり、これまで各メーカーが生産していたマスクの増産依頼をしたのみで、新たにマスクを特注した事実はないとのことだ。

マスクメーカーは法的措置検討も視野

なお、毎日新聞が「イメージ画像」として使用したマスクは、愛知県のメーカーが2015年に発売した商品だ。

メーカーは2月25日、HP上で見解を発表し、憶測に対して「そのような事実は一切ございません」とし、「日本代表を応援しようという想いをこめて」発売し、「政府からの要請で日の丸ロゴを付けているわけではない」と否定した。

自治体や病院などに優先的にマスクを送っている事実はなく、注文を受けてから順次発送しているとの現状を示し、こうコメントしている。

「今後、事実とは全く異なる内容で悪質ととれる記事や投稿が続くようであれば、法的な措置をとることも検討いたします」


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

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  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
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