真剣な顔でランドセルを選ぶ子どもたちと、別室で見守る保護者。
子どもの選んだランドセルに「やっぱり!」「そうだと思った」などとコメントするお母さんお父さんたちに、途中で「ある驚きの事実」が告げられます。
実は子どもたちが選んでいたのは……?
「天使のはね」などを展開する大手ランドセルメーカー・セイバンが公開したドキュメンタリー動画がSNSで話題を呼んでいます。動画を見た人からは「泣いた」の声が続出。
一体なぜ? この動画を制作した意図も聞きました。
子どもたちが選んでいたランドセル、実は…
色とりどりのランドセルが並ぶ部屋にやってきた子どもたち。今日はお母さんお父さんから離れ、1人で選んでもらいます。
「ピンクが好きやから、多分ピンクを選ぶと思います」
「あんまり明るい色でなければ、本人の自由に」
「汚れが目立たなそうなベージュを選んでほしいな、私は…」
親御さんが「こんなのを選ぶんじゃないかな」と予想した通りのランドセルを、次々に手に取る子どもたち。
大人たちは「やっぱり!」という納得の表情ですが、ここである事実が告げられます。
「選んでもらったのは、自分が使いたいランドセルではありません」
「保護者の方が選んでほしそうだと思うランドセルを、選んでもらいました」
「ママはね、ピンクがね、かわいいっていつも言うし」
「パパが好きかと思う、だってかっこいいから」
「ここのキラキラのところがママが好きそうかなと思いました」
それぞれ選んだ理由を教えてくれます。パパやママのこと、みんなよく知ってるんですね!
次に「本当に自分が使いたいランドセル」を選んでもらうことに。先ほどまでとは違う笑顔で駆け寄ってきます。
先ほど「パパが好きそうだから」と選んだ黒とは真反対の、真っ白に決めた男の子。
「ピンクが好き」だとお母さんは思っていたけれど、「青にした!」とにっこりする女の子。
「ピンクのやつが好き」とまっすぐ指差す男の子。
「自分で選ぶこと。それは、6年間大切に使うための最初の一歩」
「キミが好きなの、キミが選ぼう。」
そんなメッセージで締めくくられています。
「涙でてくる」「実は親の好みに誘導させてしまっていたかも」
2月1日に公開されたこの動画は、SNSで多くの反響を集めています。
涙でてくるー。子供は親の望みを感じ取ってるんだなぁ…。息子、ゴールドがいいって言ってたけど結局黒にした。きっと親が「ゴールドはちょっと…」って思ってたのを知ってしまったんだろうな。反省…。
娘もこの子たちと同じで、たぶん私が「好きそう」と思うものを「これがかわいい!これにする!」って選んでくれたんだなぁと感じて涙
デザインは本人達に選ばせたつもりでいても、実は親の好みに誘導させてしまっていたかもと反省しました。
好きなものを選ばせてあげたい‼︎けど他のお友達に何か言われて嫌な思いしないかな…とか考えてしまうんだよね
好きなランドセルを選べなかった自分が少しだけ救われました。ありがとうございました。
子供のことを一番知ってるのは親である自分かなーと思ってるけど、親のことを一番知ってくれてるのも子どもなんだろな
ラン活の理想と現実「歩み寄ってるのは子どもたちなのでは」
この動画はどんな思いで作られたのでしょうか?セイバンに聞きました。
――「保護者が選んでほしそうなランドセルを子どもたちに選ばせる」というアイデアはどんな背景で生まれたのでしょうか?
時代の変化とともに、ライフスタイルや学習環境が変化している現代において、ランドセルの種類も増え、ランドセル選びの考え方は多様化しています。
本来、ご家族でコミュニケーションをとりながら楽しくあってほしいランドセル選びですが、昨今は「ラン活」と呼ばれ、親主導の仕事・課題のように考えられている傾向がございます。その「ラン活」をうまくやれるか、不安や焦りを感じているご家族が多くいらっしゃるようです。
セイバンがランドセル選びに関するアンケート調査を行ったところ、ランドセル購入時に親御様が最も重視するポイントは「子どもの意見や意思を尊重」でした。
ところが一方で、購入後のアンケート結果では、6月までにランドセルを購入した早期購入者層の6割以上、また、7月以降の購入者で見ても半数近くがランドセル選びの際に「親などの大人がブランド、デザイン、カラーを指定」していることがわかりました。
このような状況から、子どもの意見を尊重するという“理想のラン活”と親主導になっている“現実のラン活”にはギャップがあるのではないか、またそのギャップを埋めるために歩み寄っているのは子どもたちの方なのではないか――と仮説を立て、それを検証するドキュメンタリー動画を制作いたしました。
「自分で選んだ」自信と愛着を
――「キミが好きなの、キミが選ぼう。」という新ブランドメッセージにはどんなメッセージを込めましたか?
先述のアンケート調査の通り、ランドセル選びは親主導となっている傾向がございますが、ランドセル選びは、単なる通学カバンの準備を超えた役割を持っていると考えております。
自分が選んだという自信や愛着をつける、選んだものを使い続ける責任を育てる、そして何よりも1年生へのわくわくをふくらませる。小学生への心の準備にもなる大切な時間です。
その時間をよりよいものにしていただくため、また、6年間愛着を持って大事に使っていただくために、子ども自身が使うランドセルは子どもの意見を尊重しながら、ご家族で楽しく選んでいただきたいという思いを込めております。
ちなみに、実際にランドセルを使用している小学校5~6年生に向けて実施した調査では、ランドセルを「自分で選んだ」「家族とみんなで選んだ」体験をした子どもの方が、「自分以外の家族が選んだ」と回答した子どもよりもランドセルを気に入っていることも調査結果として出ています。
くすみカラーがトレンドに
――多様化するランドセルの色ですが、近年のトレンドや傾向はありますか?
当社のすべての商品は、特定の性別向けに販売しているわけではありません。その前提のうえで、結果として今年は、女の子にはシャーベットミントという淡い水色が人気でした。
男の子にはブラックが人気でしたが、単にブラックではなく、ふちに青色がワンポイントで入っているものが特に人気でした(ブラック×マリンブルー)。
全体としては、ニュアンスカラー(くすみカラー・淡めのカラー)の人気が高まっています。
ニュアンスカラーは大人のファッションでもトレンドになっており、ランドセルの定番カラーも時代と共に変化しています。